中倉山の「孤高のブナ」は足尾銅山鉱毒事件の生き証人



- GPS
- 05:20
- 距離
- 10.1km
- 登り
- 793m
- 下り
- 793m
コースタイム
天候 | 晴ときどき曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 自家用車
|
写真
感想
長かったスギ花粉の飛散もようやく収まり、今年度の歩き始めに足尾の中倉山に登ることにした。
ここは最近ネットで「孤高のブナ」が有名になっている山で、前から行ってみたかった場所だ。
足尾銅山の鉱毒(亜硫酸ガス)にやられず、なぜかブナが1本だけ残ったようだ。
車で来る友人とは宇都宮駅で待ち合わせた。
待つ間に久しぶりに餃子像を見る。
餃子の皮に包まれたビーナスとのことだが、なぜかムンクの「叫び」を彷彿とさせる顔をしている。
友人の車で日光宇都宮道路を進むと道路沿いはヤマザクラが満開だった。
桜並木のようになっているのだがソメイヨシノではなくヤマザクラなので、植栽したものではなく、もともと道路ができる前から生えていたものなのだろうか。
まだ雪の残る日光連山を正面に、今が花盛りのヤマザクラを楽しめ春爛漫な気分になる。
長い日足トンネルを抜けると足尾に到着。
足尾に初めて来たのは今から31年前の小学校の修学旅行だった。
修学旅行のメインは日光だったのだが、事前にきちんと足尾銅山鉱毒事件と田中正造のことを学び足尾銅山跡地にも来たのだ。
今から思うとなかなかきちんとした修学旅行だったと思う。
「修学」旅行なのだから単なる遊びではなく学習の一環でなければならないはずで、足尾銅山、日光東照宮、戦場ヶ原ハイキングという組み合わせを考えた当時の教師たちの力量はすごい。
足尾銅山から放出された亜硫酸ガスで禿山となった足尾の山々。
その後植林が進められているのにも関わらず、印象としては31年前とそんなに変わらない気がした。
土壌が流出してしまったことと、残った土壌も酸性になってしまっているからなのか、なかなか植生の回復は進まないのだろう。
過疎化は進んでいるようだがバス便は充実しているようで、バス停でバスを待つ地元の人もたくさん見かけたし、小型の路線バスを2台見かけた。
その路線バスから登山客も降りてきた。
中倉山も人気だが、備前楯山もあるし、庚申山経由で皇海山へもこの辺りから登る人もいるのだろう。
銅(あかがね)親水公園の駐車場は満車になっていて、道路に駐車の列ができていた。
中倉山、思っていた以上に人気なのかもしれない。
ただ進んでいくと「セブン-イレブン記念財団」による緑林活動のイベントの最中だったようで、もしかしたらこの人たちの車も含まれていたのかもしれない。
友人がスミレやタンポポ、オオイヌノフグリなどどこにでも生える草がないのはやはり土壌が汚染されているからかなと言う。
たしかに全然見かけなかったが、季節的なものでこれから生えてくる可能性もあるのかなと思う。
今日は最高気温が25℃まで上がる予報で初夏の陽気だったが、本来この辺りはまだまだ早春のはずだからだ。
仁田元川沿いに思っていた以上に立派な林道が奥まで続いていて、やっと登山道があったと思ったらそこからは一気に標高を稼いでいく。
この辺りは思いのほか土壌も多く、ミズナラの大木もあった。
中倉山周辺は亜硫酸ガスの影響を何らかの原因で逃れられたので、ブナも1本残ったのかもしれない。
途中岩場に出るとすぐ西側に庚申山や皇海山方面が見渡せた。
庚申山は大きなムシトリスミレであるコウシンソウで有名だが、公害前のこの辺りの山も同じようなブナ・ミズナラ帯の豊かな森林だったのだろう。
ただ公害で禿山となったので、この標高なのに見晴らしの良い稜線になっているのは皮肉なものである。
中倉山山頂へ近づくと北側の松木川方面へ展望が開けたが、乾燥地帯の山のような禿山になっていて、その向こうに男体山が見えていた。
男体山や女峰山などの日光連山と、この足尾銅山の禿山がこんなにも近いのだ。
もし銅を産出する山がもう少し北側だったら日光周辺の山々が禿山になってしまった可能性もある。
中倉山山頂からは「孤高のブナ」は見えなかったが、少し沢入山方面に進むと鞍部にそのブナはあった。
ブナが稜線に1本だけ生えているのは本当に不思議で、なぜこのブナだけが枯れずに生き残ったのだろうか。
思っていたよりは樹齢は若そうで、足尾銅山から亜硫酸ガスが放出されていた時期はまだ若木だったのかもしれない。
ブナが1本残ったことで、足尾銅山鉱毒事件を風化させないための生き証人となっている。
中倉山は今年度の登山開始の足慣らしハイキングとしてちょうど良い行程だった。
このまま日帰りもできるわけだが、せっかく久しぶりに会えた友人なのでこの晩は鬼怒川温泉に宿を取っていた。
鬼怒川温泉付近の山々は少し黄緑を帯びてきていて、その中にぽつぽつとヤマザクラの桃色が灯っていた。
そんな淡い春の色を見ながらの露天風呂で至福のひとときを味わった。
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