関ふれ(1)大磯の海〜鷹取山の照葉樹林〜土屋の山里の寺社史跡を結ぶ
神奈川県
翔亀
体力度について
- GPS
- 05:29
- 距離
- 16.3km
- 登り
- 329m
- 下り
- 276m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 4:11
- 休憩
- 1:18
- 合計
- 5:29
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2024年01月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
G 瓜生野入口BS(神奈川中央バス平塚−秦野線(下大槻団地経由)など) |
| コース状況／ 危険箇所等 |
〇鷹取山 南側はやや急傾斜だが、林道並みの広い道で木の階段がよく整備されている。北側は未舗装だが、車も通れる。 〇これ以外は、車道ないしは簡易舗装の里道。車の多い幹線道路歩きはあまりない。 |
| その他周辺情報 | 〇関東ふれあいの道 神奈川県コース https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4y/02yama/choukyori/kantou01.html |
写真
統監通りをいくと、、、(伊藤博文韓国統監に由来する。伊藤の別荘があったからね。島村藤村が晩年の約2年を過ごした旧宅もすぐ近くにあり見学できる)
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国道1号を横断する信号がなくて、行きすぎた。仕方ないので神社を写しておいた。宇賀神社?はて? (5時間後、宇賀神像と出会い奇遇に驚くことになる)
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工事現場に表示があった。そうだ、明治記念大磯邸園だった。ここは伊藤博文の別荘だった滄浪閣だ。さらにその隣には陸奥宗光と大隈重信の別荘も残っていて、ずっと古河電工所有で社用接待で使っていた。逆隣には、西園寺公望の別荘もある。それを国の明治100年記念事業で大整備中だったんだ。
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旧吉田茂邸だ。これは別荘というより本宅だ。ただし明治ではなく昭和ですね。しかし平成21年に火事で焼失。地元では大きく報じられた。
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下が、旧吉田茂邸とその庭園。そちらは行ったことがあるので、パスしたが、元々の大磯城山公園は入ったことがないので、寄ってみた。(ここからは関東ふれあいの道のコース外。最短距離を結んだらここを通っていた)
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こちらは、三井財閥当主の別荘だったのだ。まこと、別荘のまち大磯です。この南門は、別荘の中門（海會門）を復元したものという。
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県立都市公園は、もともとの植生をいかした公園も多いが、ここはどうだろうか。庭園だったわけなので怪しいものだ、と思いながら歩いていると、、、(トベラという海岸の樹はあった)
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四国でたくさん咲いていたシオギクそっくり。分布的にはイソギクだろう。海岸の花なので咲いていてもおかしくない(イソギクの総苞は三角)
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寒川神社、川匂（かわわ）神社(二宮)。神奈川県の有名な神社ばかりだ。平塚八幡神社と前鳥（さきとり）神社は平塚、そして大磯の六所神社。総出演ですね。いまだ答えの出ていない相模国の国府の所在地の一説、大磯説の論拠の一つになっている。
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ふれあいの道本道は銭洗い弁天に向かう。この道標を見てにわかに思い出した。霜降りの滝への道を苦労しながら歩いたことを。10年以上前のこと。なつかしいな。
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分岐。本道は直進だが、左が七国峠・遠藤原のみちで、10年以上前に中井まで歩いたのだった。こちらは車道歩きが多かった記憶がある。
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土屋の銭洗弁天こと和光山(わこうざん)醫王院(いおういん)妙圓寺(みょうえんじ)、天台宗のお寺である。さあーと写真だけ撮って戻ろうとしたら、扉が開いて中に入れと招かれ、お茶までいただいてしまった。
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しかし弁天様ではなく、不気味なお姿。初めて知ったが、ヘビの神様の宇賀神だという。調べてみると、宇賀神と弁天様が同一視され、同時に祀られているのが銭洗弁天なんだとか。
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土屋の銭洗弁天の前は、大きな神奈川大学湘南キャンパスで学生たちで賑わっていた筈だが、今はもういない。MM21などに転出してしまったのだ。跡地利用はまだ決まっていない模様。
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その近くに、土屋城址がある。源頼朝の挙兵に参加し御家人となった土屋宗遠が始祖の土屋氏は、ここ土屋を本拠地にしたので地名を取って土屋と称した。ただし墓も城址も推定地で遺構はない。
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由来をみると、健速神社という名は明治以降。それまでは牛頭天王社。なるほど祇園神だ。銭洗弁天もそうだが民衆信仰ですね。いろいろあるものだ。
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感想
「関東ふれあいの道」略して「関ふれ」第1弾です。神奈川県コース番号7「大磯・高麗山のみち」の後半と、8「鷹取山・里のみち」になります。
(計画の経緯)
肋骨骨折+眼科手術で2か月の休養のあと、四国に遠征したきりでまた1か月のブランクとなってしまった。年末年始は熱海で過ごしたり、スマホの機種変更に数日格闘したりと理由ならいくつも挙げられるが、要は元来のものぐさなのである。
もっとも1月というのは山の季節として、雪山を除くと、これといったテーマが見つからないというのも事実だ。この季節は花だとスイセンぐらいなので、房総だったり去年は下田に行ったのだが、そうリピートするほどのものではない。
となると寺社巡りを兼ねて、未踏の鎌倉アルプスかな、と計画をしたが、どうやら寺の庭園ではセツブンソウなどのスプリングエフェメラルを見ることができる(もちろん植栽だろうが)と知り、せっかくならその季節にしようと行く気が失せてしまった。
しかし流石に運動不足解消のために近くの高麗山に行ってばかりなのも飽きた。この山はせいぜい2時間なので、その倍は歩いておかないと。
そんな時に思い出したのが、長距離自然歩道だった。
(長距離自然歩道)
10月初旬の「奈良の森巡り5日間」は大台ケ原がメインだったが、その前後で、春日山(��)と室生山(未報告)でたまたま通ったのが「東海自然歩道」だった。偶然にも2回も東海自然歩道のごく一部分を切り取ったわけなので、どうつながっているのかルートを調べてみたら、山の辺の道をはじめ古刹と山が組み合わされたとても魅力的なコースだった。それがずっとつながるのである。三重県-奈良県-京都府部分(特に榊原温泉→平等院)は踏破してみたいと思った。
直近の「四国の照葉樹林巡り4日間」では、「四国のみち」を活用した。この時は、つまみ食い的だったが、通しで歩いてみたくなった。特に香川県と徳島県はルートがよくつながっていて魅力的だった。
また、東北の「みちのく潮風トレイル」は北端の鮫駅から3日間南下していて、この12月には続けて種市から久慈までの第2弾を計画していたし(腰痛のため中止)、同じく東北の「新奥の細道」もかなり断片的だが存在する(何度か遭遇した覚えがある)。
長距離自然歩道の軌跡データが配布されている(非公式だが元環境相担当者によるもの)ことを発見したこともあり、ルートを見ては夢想しているのであった。
★日本の長距離自然歩道ウェブマップ
http://ranger-k.eco.coocan.jp/longtrail_webmap/top/route/index.html
しかし、よくよく考えてみると、関東にも「関東ふれあいの道」があるし、「東海自然歩道」は高尾山が起点で神奈川県を横断している。「関東ふれあいの道」は自宅の近くを通っているのだ。
通し歩きを近畿や四国で挑戦するより、近場から始めたほうがいいのではないか。
ところが「東海自然歩道」は、丹沢を横断していて、犬越路を越え畦ヶ丸に登り、菰釣山を経由して山中湖に抜けているのだ。青根から犬越路までも大変だが、菰釣山をどう越えていくのか見当もつかない。避難小屋泊まりしかなさそうか。
一方、「関東ふれあいの道」は、大磯から鷹取山や弘法山などの低山をたどりながら、大山や仏果山を経て、高尾山まで行く。その先は、陣場山や生藤山を経て御岳山など多摩の山々、そして秩父へ進む。これなら実現の可能性は高い。まずは高尾山まで行ってみよう。
なお、専ら登山道だけをつなげるロングトレイルもあまたあって、それぞれ魅力的だが、ここでは除外した。長距離自然歩道は登山道だけでなく里もつなげているのが特徴だからで、私のスタイルにあっているからだ。そもそもロングトレイルは、私にはまだハードルが高い。
(関東ふれあいの道)
そういうわけで、「関東ふれあいの道」略して「関ふれ」第1弾なのである。自宅の近くの大磯駅をスタートとし、コース番号7「大磯・高麗山のみち」の後半に接続し、8「鷹取山・里のみち」の全てと、9「弘法大師と桜のみち」の始めのごく一部となる。今回はルートを忠実にたどった。コース7とコース8はつながっていないので、最短距離の車道で結んだ。「大磯・高麗山のみち」の前半部分は、しょっちゅう行っているので省略。例えば次の記録を参照してください。
「高麗山 総集編1自然(春)」
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4171967.html
(歩いてみて)
コース7の大磯界隈はスポット的に何度か行っている。8の鷹取山のコースは10年以上前に全く同じルートを歩いたことがあるし、そのうちの土屋はスポット的に所用で何度か行っている。近いだけあって馴染みのある地域だ。そして10年ぶりに通った道も、一度歩いた道というのはよく覚えているものだ。かえって懐かしく感じられた。そういう意味ではほぼすべて再訪といってよいだろう。
今回のコースのうち少しは登山っぽいのは鷹取山だけだ。10年以上前に登った時は、まだ高校以来中断していた登山を再開する前の時期で、散歩の延長だった。当時は野鳥を追いかけていた。その時はもっと登った感じがしたものだったが、やけにあっけなかった。南側はやや傾斜があるが、林道のような広い道と木の階段であっという間だった。北側はなだらかで、車でも入れる。
登山道に変化が乏しく、展望もないので、高麗山の方が山としては格段に楽しい。
道標を見て思い出したのだが、このルートに接して「湘南平・霧降り渓流のみち」「七国峠・遠藤原のみち」というハイキングコースがあって、当時はそちらも行ったのだった。特に「湘南平・霧降り渓流のみち」方面は無名の山のルートファインディングをし、荒れた登山道でエキサイティングだったことを思い出した。今歩いてみるとどうなんだろう。
とはいえ、鷹取山の照葉樹林は素晴らしかった。高麗山と同様に社叢林で、スダジイやタブノキの巨木とヤブニッケイやカゴノキなど樹木の構成は同じだ。鷹取山の方が面積は狭いが、ややなだらかな地形のせいか密度の高い箇所はより密集していた感じだ。ただ如何せん、鷹取山の森は杉の人工林が迫りすぎているのが難か。高麗山も杉の人工林が存在するがそのエリアは狭く、あるいは照葉樹林化されている。高麗山には、里山的な雑木林があるのも違う。ある意味、高麗山の方が良い意味で森の手入れがされている。
(モクレイシのこと)
たまたま前日に、高麗山を登られたardisiaさんから、モクレイシという、この地域のほかには、主に九州南部と沖縄に隔離分布するという常緑樹が、高麗山では高木となり数も多くて驚いたという話を伺った。そういえば、と鷹取山の照葉樹林を探してみたら、モクレイシがしっかりとあったのである。高麗山周辺では八俵山から東側に多くあるが、それより西側の湘南平付近では見かけたことがない。鷹取山ではあっけなく見つかってしまったので、その密度までは見なかったが、それなりにはあるのだろう。ただ、ここの照葉樹林帯のエリアはかなり狭く、窮屈そうではある。
どういうことだろうか。樹木の相互関係としか考えられない。湘南平などになくて、高麗山と鷹取山だけにあるのはスダジイやタブノキといった典型的な照葉樹林帯だ。かつて、はるか昔、モクレイシの種が海を渡って沖縄から大磯海岸に漂着した。当時の大磯丘陵はスダジイ-タブノキ照葉樹林に覆われていて、モクレイシがそこに定着した。照葉樹林帯はその後、伐採されたり人工林になったりして、わずかに高麗山と鷹取山にだけに社叢林として残された。他はアラカシなどが育つ二次林の常緑樹林となっても、スダジイ-タブノキ照葉樹林にはなっていない。照葉樹林の何かがモクレイシを生かしている。もちろんこれは空想であるが。
(海と森と山里、そして寺・史跡)
今回のコースは、海から森を経て山里に歩いて至るという変化に富むコースだ。これを5時間余りで歩いて一気に楽しめるというのが良い。ときおりいきなり顔を見せる富士山や、山里からの丹沢山塊の眺めなど景観も素晴らしい。難を言えば最後のクライマックスがないので、逆コースにして海を最後に持ってくることも考えられる。しかし、富士山や丹沢山塊を目の前にして、それに向かって歩くほうが私は好みだ。
他に、今回は鎌倉アルプスの代替だが場所柄、寺社は全く期待していなかったが、思わぬ寺に巡り合った。土屋の銭洗弁天こと和光山(わこうざん)醫王院(いおういん)妙圓寺(みょうえんじ)、天台宗のお寺である。信者でもないし、これまで寺を訪問するのが気が引けて苦手だったが、この寺は温かく迎えてくれた。本堂を見上げていたら、扉が開いて中に入れと招かれ、お茶までいただいてしまった。恐縮していたら「わざわざここまでお越しくださったのですから」と感謝の意を示されてしまう。これは誤解だが確かに、このあたりには他に行くような場所もなさそうなので、ちょと寄ってみた、というのはまずないのだろう。
なので、じっくりと多くの仏像様を拝まさせていただいた(本尊は阿弥陀如来座像)。宇賀神を祀る岩屋霊穴という洞窟は本格的で、探検気分になってしまった。
こういう親しみを感じる寺というのは、あるいは銭洗弁天=宇賀神を祀っていて、民衆に近い存在だからなのかもしれない。銭洗弁天=宇賀神といえば、たまたまだが大磯で宇賀神社もみかけた。有名な鎌倉の銭洗弁財天宇賀福神社は、同じように洞窟に祀ってあるという。土屋は天台宗なので密教で、鎌倉は神社だ。両者はどういう関係にあるのだろうか。。。
この寺のある土屋の山里は、伊豆の源頼朝の挙兵に参加し御家人となった土屋氏の本拠地で、土屋一族の墓や城址もある。土屋は平塚市では最も山奥の地区であり、市の周縁である。しかし実感的持論だが、近世以前の日本はもっと分散的で地域が輝いていたのではないか。
大磯にはかつて相模国の国府があったという説もある(他に海老名説、平塚市四之宮説、小田原説などがあり、全国で唯一確定していない)。明治においては、別荘地として明治政府の主要人物が集まり、いわば政治の夜の中心であったともいえるかもしれない。
長距離自然歩道は、山だけではなくこういう歴史も感じさせてくれるのだ。
さて、関東ふれあいの道は、この先、高尾山に向けて北上する。今回、計画では弘法山まで行くつもりだったが、銭洗弁天で長居をしたのと5時間を超えると疲れが出てきたので、途中でちょうど来たバスに乗って帰宅した。朝、目覚ましをかけずにいたら9時間も寝てしまって、スタートが遅くなったのもいけなかった。
次はどこまで行けるだろうか。
(参考文献)
石井進『鎌倉武士の実像』(平凡社 1987)〜相模国府の大磯説。神揃山にも言及している(神奈川県『神奈川県史』の再録)
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