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Yamareco

記録ID: 5627227
全員に公開
ハイキング
白馬・鹿島槍・五竜

白馬岳(大雪渓で滑落した話)

2023年06月18日(日) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 富山県 長野県
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
13:22
距離
13.6km
登り
1,674m
下り
1,684m
歩くペース
標準
1.11.2
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
12:01
休憩
2:04
合計
14:05
距離 13.6km 登り 1,702m 下り 1,703m
4:38
4:39
45
5:24
3
5:27
5:34
116
7:30
7:36
29
8:05
8:25
55
9:20
9:32
21
9:52
9:53
20
10:13
10:53
10
11:03
11:07
9
11:16
11:17
34
11:51
11:52
34
12:25
12:47
192
15:59
16:07
5
16:12
16:19
120
18:19
23
18:43
ゴール地点
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年06月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
猿倉荘そばの駐車場に駐車。料金無料、6月下旬の日曜日はまだ空いている。
コース状況/
危険箇所等
大雪渓は現在はまだ12爪アイゼン、ピッケル必携(後述)。ウェアは季節に準じてでよいと思います。雪渓内の吹き下ろしの風が少し冷える。
その他周辺情報 白馬尻小屋は現在休業中。
頂上山荘は人がいたがcloseの看板。テントを張っている人たちはいたので、売店が閉まっているだけなのか、時間帯なのかは不明。
6月下旬の日曜日、朝4時半ごろ。駐車場はまばら。
2023年06月18日 04:20撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:20
6月下旬の日曜日、朝4時半ごろ。駐車場はまばら。
登山口ではありませんが、帰りの林道で猿倉荘側の階段に降りずにそのまま進めばここへ出ます。
2023年06月18日 04:34撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:34
登山口ではありませんが、帰りの林道で猿倉荘側の階段に降りずにそのまま進めばここへ出ます。
猿倉荘。ホームページ写真まんまや…
2023年06月18日 04:37撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:37
猿倉荘。ホームページ写真まんまや…
猿倉荘裏の歩道。
2023年06月18日 04:39撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:39
猿倉荘裏の歩道。
林道との交差。登って左が白馬岳方面、右がさっきの駐車場。
2023年06月18日 04:45撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:45
林道との交差。登って左が白馬岳方面、右がさっきの駐車場。
白馬鑓(やり)温泉方面。「鑓」を「やり」と読むと初めて知った。
2023年06月18日 04:48撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:48
白馬鑓(やり)温泉方面。「鑓」を「やり」と読むと初めて知った。
渡渉するあたりから早速雪渓が。
2023年06月18日 04:58撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 4:58
渡渉するあたりから早速雪渓が。
水場である(ありがたい)
2023年06月18日 05:00撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:00
水場である(ありがたい)
木道である(ありがたい)。
先に見えるのは白馬っぽい。
2023年06月18日 05:11撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:11
木道である(ありがたい)。
先に見えるのは白馬っぽい。
大雪渓手前で小さな雪渓を横断する。小雪渓ってのもあるので、これは微雪渓かの。
2023年06月18日 05:23撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:23
大雪渓手前で小さな雪渓を横断する。小雪渓ってのもあるので、これは微雪渓かの。
背中に太陽を背負う形で進みます。写真は来た道。
2023年06月18日 05:25撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:25
背中に太陽を背負う形で進みます。写真は来た道。
おつかれさん!
(そしてここから更にメガ疲れる)
2023年06月18日 05:26撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:26
おつかれさん!
(そしてここから更にメガ疲れる)
白馬尻小屋は解体中?
閉業中ですが、リニューアル前?資材がちらほら。
2023年06月18日 05:26撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:26
白馬尻小屋は解体中?
閉業中ですが、リニューアル前?資材がちらほら。
大雪渓の入口です。この時点ではなだらかなんよね。まるでチェーンスパイクでもイケそうな感じ。(絶対無理、特に6月中は。)
2023年06月18日 05:28撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:28
大雪渓の入口です。この時点ではなだらかなんよね。まるでチェーンスパイクでもイケそうな感じ。(絶対無理、特に6月中は。)
某書籍に「初心者や雪渓に不慣れな方は6爪アイゼンを持つとよいでしょう〜」とかいう記載を間に受けて、自分としては十分備えてきたつもりの6爪アイゼンとスノーカップ付きのストック。
結論としては、全くの装備不足でした。
2023年06月18日 05:32撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 5:32
某書籍に「初心者や雪渓に不慣れな方は6爪アイゼンを持つとよいでしょう〜」とかいう記載を間に受けて、自分としては十分備えてきたつもりの6爪アイゼンとスノーカップ付きのストック。
結論としては、全くの装備不足でした。
雪渓入口付近。ぜんぜんなだらか。見える範囲では全然危険箇所など無さそうに見えます。
2023年06月18日 05:42撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 5:42
雪渓入口付近。ぜんぜんなだらか。見える範囲では全然危険箇所など無さそうに見えます。
2023年06月18日 05:53撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 5:53
時々両側の斜面から石が転がり落ちてきます。写真右下みたいな窪地に集まってくるので、観察しながら近づかないように登ります。
2023年06月18日 06:14撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 6:14
時々両側の斜面から石が転がり落ちてきます。写真右下みたいな窪地に集まってくるので、観察しながら近づかないように登ります。
中腹くらいで振り返ったところ。人がめちゃくちゃ小さい。
2023年06月18日 06:26撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 6:26
中腹くらいで振り返ったところ。人がめちゃくちゃ小さい。
雪渓後半、斜度が段々強くなってきます。
私を追い越していったそれぞれベテランさんお二人ですが、お一方はチェーンスパイクしか履いておらず、非常によいペースで登って行ってたにもかかわらずこの先で撤退を決断され、下山するところをすれ違います。英断だったと思います。
2023年06月18日 06:42撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 6:42
雪渓後半、斜度が段々強くなってきます。
私を追い越していったそれぞれベテランさんお二人ですが、お一方はチェーンスパイクしか履いておらず、非常によいペースで登って行ってたにもかかわらずこの先で撤退を決断され、下山するところをすれ違います。英断だったと思います。
雪渓上部。強い斜度とカチカチの氷なので、前爪アイゼンは最低でもないと進めません。一度滑ると止まらないのでピッケルも必要。
6爪野郎はここで引き返すべきでした。山頂がもう見えていたとしても。蹴り入れて階段を作るとかいう創意工夫でどうして登っちゃったのか。
2023年06月18日 06:42撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 6:42
雪渓上部。強い斜度とカチカチの氷なので、前爪アイゼンは最低でもないと進めません。一度滑ると止まらないのでピッケルも必要。
6爪野郎はここで引き返すべきでした。山頂がもう見えていたとしても。蹴り入れて階段を作るとかいう創意工夫でどうして登っちゃったのか。
岩陰で一休み。雪渓後半では傾斜のため、雪渓の上でペットボトルを落とそうものなら彼方へ転げ落ちていくので回収困難です。
2023年06月18日 07:57撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 7:57
岩陰で一休み。雪渓後半では傾斜のため、雪渓の上でペットボトルを落とそうものなら彼方へ転げ落ちていくので回収困難です。
雪渓終盤の斜度はこんな感じです。雪もカチカチ。
2023年06月18日 07:57撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 7:57
雪渓終盤の斜度はこんな感じです。雪もカチカチ。
奥は白馬鑓ヶ岳でしょうか。
下山時に私が滑落したのはこの辺り。滑り出したら止まりませんわこんなん。
2023年06月18日 07:57撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 7:57
奥は白馬鑓ヶ岳でしょうか。
下山時に私が滑落したのはこの辺り。滑り出したら止まりませんわこんなん。
雪渓上端から振り返り。白馬尻小屋はもはや遙か彼方。
2023年06月18日 08:09撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 8:09
雪渓上端から振り返り。白馬尻小屋はもはや遙か彼方。
上の方は太陽が当たって雪解け。整備された登山道を頂上宿舎へ向かって歩きます。
2023年06月18日 08:45撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 8:45
上の方は太陽が当たって雪解け。整備された登山道を頂上宿舎へ向かって歩きます。
木道は崩壊。
2023年06月18日 08:50撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 8:50
木道は崩壊。
宿舎はClosedの看板が。でも人はいて、裏のテン場にも利用者はいたので時間的なものかも。バッジとかは上の白馬山荘でも購入できます。
2023年06月18日 09:20撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 9:20
宿舎はClosedの看板が。でも人はいて、裏のテン場にも利用者はいたので時間的なものかも。バッジとかは上の白馬山荘でも購入できます。
頂上山荘の上に白馬山荘。その先に頂上。頭がこんがらがる名前や。
2023年06月18日 09:36撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 9:36
頂上山荘の上に白馬山荘。その先に頂上。頭がこんがらがる名前や。
左に休憩用ベンチがたくさんあり、往路と復路のそれぞれの登山客が休んでおりました。
帰りにこちらで百名山バッジ買いました。
2023年06月18日 09:50撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 9:50
左に休憩用ベンチがたくさんあり、往路と復路のそれぞれの登山客が休んでおりました。
帰りにこちらで百名山バッジ買いました。
天日干しのオフトゥンがスタッフ同士のあいだで投げ渡され宙を舞います。
2023年06月18日 09:50撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 9:50
天日干しのオフトゥンがスタッフ同士のあいだで投げ渡され宙を舞います。
サンチョすぐそこ。
2023年06月18日 09:52撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 9:52
サンチョすぐそこ。
2年前も来ようとして、増水で林道が塞がってて撤退したんですよね。やっと取れた。

…という背景が判断を鈍らせるんですよね。反省点として後述します。
2023年06月18日 10:11撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 10:11
2年前も来ようとして、増水で林道が塞がってて撤退したんですよね。やっと取れた。

…という背景が判断を鈍らせるんですよね。反省点として後述します。
劔岳と立山三山の贅沢セット。最高です。
2023年06月18日 10:16撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 10:16
劔岳と立山三山の贅沢セット。最高です。
雷鳥(かわええ)
2023年06月18日 10:56撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 10:56
雷鳥(かわええ)
雪渓を戻ります。そしてこのあと滑落します。
2023年06月18日 11:19撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
6/18 11:19
雪渓を戻ります。そしてこのあと滑落します。
滑落直後。足は痛めたけど取りあえず大事にならなくて良かったぁ〜と、足は傷んだけれど記録のため執念の一枚。
まだまだ雪渓はあり絶望。
2023年06月18日 13:00撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 13:00
滑落直後。足は痛めたけど取りあえず大事にならなくて良かったぁ〜と、足は傷んだけれど記録のため執念の一枚。
まだまだ雪渓はあり絶望。
ログで滑落した部分。100m以上滑って、大岩に激突して止まりました。よくまあ生きてたもんだ。
とにかく人にぶつからなくて本当に良かった。
2023年06月19日 06:25撮影
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6/19 6:25
ログで滑落した部分。100m以上滑って、大岩に激突して止まりました。よくまあ生きてたもんだ。
とにかく人にぶつからなくて本当に良かった。
足を引きずりながら3倍時間をかけて雪渓を降りました。白馬尻小屋では既に日が傾いていました。本当に地獄のように長かった。
2023年06月18日 16:10撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/18 16:10
足を引きずりながら3倍時間をかけて雪渓を降りました。白馬尻小屋では既に日が傾いていました。本当に地獄のように長かった。
後で病院に行ったら、脛骨内踝骨折でした。最近のCTはきれいに写りますなぁ。
とか言ってたらギプスの刑に処された。
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後で病院に行ったら、脛骨内踝骨折でした。最近のCTはきれいに写りますなぁ。
とか言ってたらギプスの刑に処された。
お目汚しですが、ちょろっとした骨折でもこれだけ腫れます。皆様は充分な装備と注意で楽しい登山を。ご安全に!
2023年06月19日 19:56撮影 by  iPhone 14 Pro Max, Apple
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6/19 19:56
お目汚しですが、ちょろっとした骨折でもこれだけ腫れます。皆様は充分な装備と注意で楽しい登山を。ご安全に!
撮影機器:

感想

恥を忍んで申し上げます。白馬岳の大雪渓、その上部で滑落しました。原因は装備不足と、撤退の判断が遅れたためで完全に自業自得なのですが、自分の恥が誰かの事故を防ぐことができれば、それはそれで恥を晒した甲斐があります。骨折り損ですが、くたびれながらも儲けたものもありました。よろしければお付き合い下さい。



#装備について
事前の情報収集では、某三百名山の書籍では「初心者や雪渓に不慣れな人は6爪アイゼンを履きましょう」とあり、直近のヤマレコでは「チェーンスパイクも不要でした」などのコメントも。その一方で、別の方の投稿されている写真を良く見ると12爪アイゼンを履いていたり。大方の人はポールを持っていました。

さてさてどうしたものか。大雪渓としてよく取り上げられる写真を見ながら、このくらいの斜度なら6爪でも充分登れると判断し、6爪アイゼンと雪用ポールで行くことにしました。
これが一つ目の間違い。結果としては12爪アイゼン(最低でも前爪のあるもの)+ピッケルは必須。できればヘルメットも。少なくとも6月下旬時点では、これらが雪渓上部を突破するのに必要でした。

たぶん振り返ってみると、書籍は7月以降の完全夏山を想定した内容だったんだろうと思いました。



#撤退の判断
最初のきっかけは雪渓後半にかかり傾斜が強くなってきた辺りで、チェーンスパイクを履いたベテランさんが降りてくるのとすれ違いました。お話を聞くと、もうこれ以上は危なくて進めないから引き返してきたとのこと。自分はまだ軽アイゼンで、その場所ではグリップがしっかり効いていたこともあり、もう少し進むことにしました。
これ自体は誤りとは言えないのですが、この時に撤退基準を予め決めておけばよかったと思います。

次のきっかけは、雪渓上部でいよいよ登るのが難しくなったときでした。ひどいところでは50°くらいあるんじゃないかという傾斜で、前爪なしではとても登れないところでした。
けれど、…見えるんですよ。目と鼻の先に、なだらかな雪渓とその終わりが。山頂も近くにあり、逆に振り返ると4時間かけてひたすら登ってきた雪渓が延々と続き、もはや果ては見えない…。
さらに、名古屋から登山口まで片道4時間かけて運転してきたこと、2年前にも登り損ねたこと。

コンコルド効果――それまでに掛けた時間や費用が膨大であるがゆえに撤退が決められずさらに損失が増える――。サンクコスト…既に支払ったコストは未来には何の影響も与えず、それゆえ判断はこれまで支払ったものではなく、未来の状況だけを見て決めるべきであると。
分かってるんです。でも青空に浮かぶ山頂を見て、それでも決断できなかった。
足を複数回蹴り込んで階段を作り登るという、創意工夫を発揮してしまって、雪渓を通過できてしまいました。



#滑落の瞬間のこと
山頂を堪能して、いよいよ大雪渓へ戻ってきたところ。上端はなだらかなですが、少し進むと最大の急斜面の箇所。
6爪アイゼンでは側面を斜面に向けても3つしか掛からず制動力も弱い。仕方なく、ポールでバランスを取りつつ、踵を使って斜面を削りつつ段を作り、一歩ずつ静止してから次の足を出す作戦に。これなら跡に残るのは階段状の踏み跡なので、登ってくる人の迷惑にもならない筈。雪質が柔らかいうちはこの作戦は有効でした。
風向きが変わったのは、硬質化した氷に出くわした時。一瞬踵が弾かれて、そのあと氷が崩れて足場に変わる。嫌な予感がしました。これ弾かれたっきりになるとどうなるのか。
そんなことを思っていた瞬間、まさにその通りのことが起きて転倒。転倒した先は氷の急斜面、静止なんかできません。そのままズルズルと止まらず進み続けます。
まずいと思い、そのまま腹臥位の制動姿勢へ移行。これなら加速する前に、突き立てたピッケルとアイゼンの前爪で制動できます。そう、普段なら。
持っているのはただのポール、そしてつま先はツルンツルンの6爪アイゼン。靴の爪先とポールの凸凹を斜面に強く押し当ててなんとか減速を得、一時は静止仕掛けはするのですが…。
ああ、やっと止まったと思い、完全静止を得ようとした瞬間、わずかに斜面が強まったらしく再び加速。今度はあれよあれよというまに自動車ほどの速度まで加速。ある者で制動を得られそうなものはアイゼンの踵のみ。滑走しながら再び背臥位(仰向け)に戻り、踵を突き立てようと試みるも弾かれる。そんな間に、目の前に大岩が迫ってきて、「死んだかなコレ」と一瞬頭をよぎりました。
しかしそこで生への執念が発揮。幸い足が下向きの姿勢を保てていたので、一か八か衝突の瞬間に衝撃を足で逃がしてみる。あまりにも一瞬だったので、遅れて右足だけに負荷がきたので、右足だけがうまく引き受けてくれたのだと知る。そのまま弾かれて頭から茂みのようなところに突っ込んで静止。首をひどく圧迫されたが、むち打ち程度で済んだ。
上から、ダイジョウブー!?と片言の声が掛かる。謎の外国人に助けていただいた。
全身検索。首痛い。右足首痛い。腹は擦り傷だらけ。けど腕は折れていないし、胸郭や体幹に明らかな異常なし。
ダイジョウブー!!と声を返す。途中で落とした防止も拾ってきてくれた。本当に感謝。彼を巻き添えにしなくて本当に良かった。

ひと息ついて、足をテーピングして(この時点では折れてるとは思ってない)、ポールで支えながらえっちらおっちらと雪渓を降りていきました。
言うは易しですが、まだまた傾斜はあり、次転んだら多分受け身も取れず、命がけ。残りのコースタイム3時間を9時間かけて、からがら雪渓を抜け、駐車場までたどり着き、そのまま1時間ほど気絶するように寝ていました。


あとはまあ、帰りのドラッグストアでエアサロンパスとか買って患部に吹き付けたりしながら、なんとか生きて帰ってきました。
朝になっても足の腫れ方がおかしいので明朝近くの救急を受診すると、しっかり折れてました。
固定してもらって、そのままお仕事へ。なんとか休まずに済みました。社畜の鑑。



色々反省点の多かった山行で、特に事前調査はしていたのだけれど、甘かった。撤退の判断ができるつもりでいたけど、目の前に餌をちらつかせられると、甘かった。
未熟であることを再認識して、いろいろな方にご迷惑をお掛けしたことを猛省しながら、晴天の土曜日にベッドの上でべそをかきながら記事を書きます。
とにかくも、誰も巻き込まず、そして生きて帰ってこられたことが幸運でした。



ここまで長文にお付き合いくださりありがとうございました。私の恥が誰かの役に立てれば幸いです。

あと、多分もう少し本格的な夏になって雪渓上部が融ければ、装備ももう少し軽装でも良いかとも思います。少しでも迷ったら、しっかり装備の方を選ぶようにしてください。

それではどうかお気を付けて、よい山旅を。

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コメント

ブラーボ😎👍
ホンマに気をつけてくだされや🥰
2023/6/25 16:14
YAMATAKE⚓さん
生きてたので儲けものです👌
気をつけます!🙌💦
2023/6/26 14:47
突然のメッセージ失礼します

痛みは大丈夫ですか?
なかなか撤退できない
お気持ちよく分かります

貴重なお話
ありがとうございました
お大事になさってください





2023/6/27 17:25
yama-cさん
ありがとうございます。
痛みは大丈夫ですが、ギプスは大変不便ですね。経験しないことに越したことはありません(笑)
僕の失敗が誰かの成功の糧になれば幸いです。
2023/6/27 20:02
今年の6月18日に大雪渓で死亡滑落事故があったので検索するとこちらの記事が…。
たぶん同じ状況で滑落し亡くなったものと思います。
SNSで簡単に情報発信される今の時代はそれを鵜呑みにした初心者でもたいていの山には登れてしまう。
でもたまたま登れたとは思わずまた簡単にSNSで「初心者でもチェンスパで余裕でした」とか「どやっ!」みたいな発信をしてしまう…。

実は昨年の同じ日に私は1泊で白馬三山縦走をしています。同行者には「アイゼン、ピッケルは必携」と言って登りましたが雪渓を登ってるとチェンスパ、軽アイゼンで登ってる人が多いこと多いこと…。
流行のUL化の影響も多分にあると思いますがこの変な流れを元に戻すためにも、ふくろう伯爵さんのような体験記事がもっと多くの人目に触れることを願います。
2024/6/27 8:55
いいねいいね
1
RUMIX18さん
ありがとうございます。僕がマヌケした経験ではありますが、ただの個人の反省ではなく、それが多少でも誰かのためになれば幸いです。このようなコメントが頂けて、恥をさらした甲斐があったと思うとともに、事故が絶えないことに心痛みます。どうかRUMIX18さんも、この記事を見てくださった皆さんも、十分な準備と安全な登山をなさってください。
2024/7/1 9:11
プロフィール画像
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