ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 510964
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

滑落遭難死のリスクとは何かを考えさせられた、西穂高から奥穂高縦走。

2014年09月13日(土) 〜 2014年09月15日(月)
情報量の目安: S
都道府県 長野県 岐阜県
 - 拍手
ももちゃん🍄 その他1人
体力度
8
2〜3泊以上が適当
GPS
50:51
距離
28.3km
登り
3,480m
下り
3,459m
歩くペース
速い
0.80.9
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
4:27
休憩
0:19
合計
4:46
距離 10.3km 登り 1,580m 下り 399m
8:13
19
8:32
8:33
0
8:33
6
8:39
8:44
1
8:45
25
9:10
9:14
31
10:23
18
10:55
10:57
95
12:32
12:33
13
12:49
12:50
4
12:59
2日目
山行
9:22
休憩
1:09
合計
10:31
距離 5.3km 登り 1,327m 下り 711m
3:33
15
3:48
56
4:44
4:45
28
5:13
5:14
49
6:03
84
7:27
7:28
53
8:21
18
8:39
8:41
96
10:17
11:06
41
11:47
12:02
122
3日目
山行
4:57
休憩
0:36
合計
5:33
距離 12.6km 登り 566m 下り 2,366m
5:28
116
7:24
7:36
10
7:46
45
8:31
8:42
32
9:14
9:16
29
9:45
9:46
12
9:58
10:08
1
11:00
1
11:01
ゴール地点
天候 晴れ、お昼前からガス
過去天気図(気象庁) 2014年09月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
前夜23:30で無料Pは満車、路肩駐車が氾濫するほど。
コース状況/
危険箇所等
西穂高岳〜奥穂高岳の縦走ルートはそれまでのルートとは一線を画します。
クライミングに自信のある方で、かつ命の保証がないことに覚悟ができている、という場合以外は迷わず止めておきましょう。もっと行くべきところはこの日本にもまだまだたくさんあります。
まずはロープウェイに乗ってからスタートです。いきなり虫ポーズ。
2014年09月13日 09:04撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/13 9:04
まずはロープウェイに乗ってからスタートです。いきなり虫ポーズ。
初日は西穂山荘泊まりなので、時間を持て余す。槍見台まで歩荷するも、途中からガスってきて槍は見えない。
2014年09月13日 11:24撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/13 11:24
初日は西穂山荘泊まりなので、時間を持て余す。槍見台まで歩荷するも、途中からガスってきて槍は見えない。
山荘で生ビール、800円。かなりうまい。
2014年09月13日 13:28撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/13 13:28
山荘で生ビール、800円。かなりうまい。
名物のラーメン。高山ラーメン風でこちらもうまい。
2014年09月13日 13:38撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/13 13:38
名物のラーメン。高山ラーメン風でこちらもうまい。
テン場はお昼前にはいっぱいで受付終了。そのため山荘内は廊下、食堂はもちろん玄関にまで人が寝ている修羅場と化してました。ちなみに予約しても1枚の布団に3人と身動き取れず。
2014年09月13日 17:11撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/13 17:11
テン場はお昼前にはいっぱいで受付終了。そのため山荘内は廊下、食堂はもちろん玄関にまで人が寝ている修羅場と化してました。ちなみに予約しても1枚の布団に3人と身動き取れず。
CT 10時間なので3:30出発。
2014年09月14日 04:46撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 4:46
CT 10時間なので3:30出発。
ピラミッドピーク、この辺は余裕。
2014年09月14日 05:03撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 5:03
ピラミッドピーク、この辺は余裕。
山荘から登りが続きます。
2014年09月14日 05:28撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 5:28
山荘から登りが続きます。
富士山も見えて眺めは最高。
2014年09月14日 05:44撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 5:44
富士山も見えて眺めは最高。
西穂山頂。ここまでは余裕の表情の虫ポーズ。
2014年09月14日 06:04撮影 by  PENTAX WG-10, PENTAX RICOH IMAGING
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9/14 6:04
西穂山頂。ここまでは余裕の表情の虫ポーズ。
西穂山頂からはルートというよりは単なる岩場、しかも落ちたら即死。
2014年09月14日 06:07撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 6:07
西穂山頂からはルートというよりは単なる岩場、しかも落ちたら即死。
大抵のところは鎖も何もありません。岩のホールドが命。
2014年09月14日 06:22撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 6:22
大抵のところは鎖も何もありません。岩のホールドが命。
どう見ても異様な光景です。
2014年09月14日 07:30撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 7:30
どう見ても異様な光景です。
逆層スラブ。ここは鎖があります。
2014年09月14日 07:38撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 7:38
逆層スラブ。ここは鎖があります。
心臓バクバク、喉カラカラ。
2014年09月14日 07:40撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 7:40
心臓バクバク、喉カラカラ。
やたら垂直の壁が多いんです。もちろん落ちたら即死。
2014年09月14日 07:53撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 7:53
やたら垂直の壁が多いんです。もちろん落ちたら即死。
天狗岳に到着。もうかなりやばい。
2014年09月14日 08:02撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 8:02
天狗岳に到着。もうかなりやばい。
垂直に登れば、垂直に下りる。
2014年09月14日 08:27撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 8:27
垂直に登れば、垂直に下りる。
正しい登るルートを見つけないと、大変な目に遭います。
2014年09月14日 08:58撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 8:58
正しい登るルートを見つけないと、大変な目に遭います。
やっぱり下る方が怖い。鎖はないところの方が多い。
2014年09月14日 09:01撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 9:01
やっぱり下る方が怖い。鎖はないところの方が多い。
これもほぼ垂直。右のチムニー状のところが登りやすいです。
2014年09月14日 09:12撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 9:12
これもほぼ垂直。右のチムニー状のところが登りやすいです。
ペンキマークが見えますか?
2014年09月14日 09:53撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 9:53
ペンキマークが見えますか?
ジャンダルムが見えてきました。左手から巻いて登ります。もちろん失敗したら即死。
2014年09月14日 09:59撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 9:59
ジャンダルムが見えてきました。左手から巻いて登ります。もちろん失敗したら即死。
ジャンダルムからロバの耳へのトラバースルート、張り付いているところの一段下が正解。ここも相当怖い。
2014年09月14日 09:59撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 9:59
ジャンダルムからロバの耳へのトラバースルート、張り付いているところの一段下が正解。ここも相当怖い。
ジャンダルムを目指します。登っている途中はまったく写真撮ってる余裕なしでした。
2014年09月14日 10:13撮影 by  PENTAX WG-10, PENTAX RICOH IMAGING
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9/14 10:13
ジャンダルムを目指します。登っている途中はまったく写真撮ってる余裕なしでした。
ジャンダルムのピークから奥穂が見えてきました。手前はロバの耳、その次が馬の背。
2014年09月14日 10:14撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:14
ジャンダルムのピークから奥穂が見えてきました。手前はロバの耳、その次が馬の背。
ジャンダルムからロバの耳のコルを望みますが、この辺りは緊張感の連続でおかしくなりそうです。
2014年09月14日 10:16撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:16
ジャンダルムからロバの耳のコルを望みますが、この辺りは緊張感の連続でおかしくなりそうです。
滑落された方の捜索ヘリが頻繁に飛んでました。そりゃ滑落するでしょう、こんなルート。
2014年09月14日 10:29撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:29
滑落された方の捜索ヘリが頻繁に飛んでました。そりゃ滑落するでしょう、こんなルート。
ロバの耳へは垂直の壁を登り
2014年09月14日 10:48撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:48
ロバの耳へは垂直の壁を登り
トラバース的に狭いところをへつって
2014年09月14日 10:54撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:54
トラバース的に狭いところをへつって
こんなところを人が歩いてるんです。
2014年09月14日 10:59撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:59
こんなところを人が歩いてるんです。
ほぼ垂直の壁をそろそろと下ります。もちろん失敗したら即死。
2014年09月14日 10:59撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:59
ほぼ垂直の壁をそろそろと下ります。もちろん失敗したら即死。
ロバの耳への登り。もうどうやって登ったか覚えてません。
2014年09月14日 10:59撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 10:59
ロバの耳への登り。もうどうやって登ったか覚えてません。
左上に人がいるのが見えますか?
2014年09月14日 11:03撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 11:03
左上に人がいるのが見えますか?
馬の背が見えてきました。
2014年09月14日 11:15撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 11:15
馬の背が見えてきました。
実際に登るとかなり狭いです。もちろん四つん這いです。
2014年09月14日 11:18撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 11:18
実際に登るとかなり狭いです。もちろん四つん這いです。
奥穂に到着して緊張感から解放。同行させてもらったRさんとダブル虫ポーズ(笑)
2014年09月14日 11:50撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 11:50
奥穂に到着して緊張感から解放。同行させてもらったRさんとダブル虫ポーズ(笑)
穂高山荘への下り大渋滞。梯子場まで2時間待ち。
2014年09月14日 12:49撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 12:49
穂高山荘への下り大渋滞。梯子場まで2時間待ち。
その後も渋滞は夕方遅くまで続いたのでした。
2014年09月14日 13:52撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 13:52
その後も渋滞は夕方遅くまで続いたのでした。
小屋の手続きにも並びます。
2014年09月14日 14:20撮影 by  PENTAX WG-10, PENTAX RICOH IMAGING
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9/14 14:20
小屋の手続きにも並びます。
溢れるテント。幸い1枚の布団に2人でしたが、横の青年が生足で寄ってくるため狭い狭い・・・(涙)
2014年09月14日 17:52撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/14 17:52
溢れるテント。幸い1枚の布団に2人でしたが、横の青年が生足で寄ってくるため狭い狭い・・・(涙)
翌朝は一瞬だけご来光が拝めたようですが、パスします。
2014年09月15日 05:06撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 5:06
翌朝は一瞬だけご来光が拝めたようですが、パスします。
赤い帽子のジャンダルム
2014年09月15日 05:15撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 5:15
赤い帽子のジャンダルム
奥穂(への岩場)も赤く染まります。
2014年09月15日 05:15撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 5:15
奥穂(への岩場)も赤く染まります。
白出沢のガレを下ります。落石を起こさないように。
2014年09月15日 05:23撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 5:23
白出沢のガレを下ります。落石を起こさないように。
あびないよ。
2014年09月15日 06:00撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 6:00
あびないよ。
今日も捜索のヘリが旋回してました。
2014年09月15日 06:38撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 6:38
今日も捜索のヘリが旋回してました。
油断してましたが、この沢は下の廊下のようなスリリングな箇所があります。またビビる。
2014年09月15日 07:34撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 7:34
油断してましたが、この沢は下の廊下のようなスリリングな箇所があります。またビビる。
沢としてはなかなかの沢です。
2014年09月15日 07:38撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 7:38
沢としてはなかなかの沢です。
下山後は飛騨牛の串焼き、肉を胃の壁を通り抜けて体内に吸収される感じ。
2014年09月15日 09:51撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 9:51
下山後は飛騨牛の串焼き、肉を胃の壁を通り抜けて体内に吸収される感じ。
ロープウェイの代わりに飛騨牛を選んだので、鍋平までの徒歩。これがかなりきつい。ロープウェイに乗りましょう。
2014年09月15日 10:04撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 10:04
ロープウェイの代わりに飛騨牛を選んだので、鍋平までの徒歩。これがかなりきつい。ロープウェイに乗りましょう。
下山時には駐車場はかなり空いてました。
2014年09月15日 10:48撮影 by  XZ-2 , OLYMPUS IMAGING CORP.
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9/15 10:48
下山時には駐車場はかなり空いてました。

感想

同じ山岳会の気心知れたRさんが、西穂〜奥穂を単独で縦走されるという。さすがに単独は危険なのですが、誰も行こうとしない。という訳で穂高連峰未体験の私が同行させていただくことになりました。
もともとはお盆休みだったのですが、天候が悪いため中止になり、この三連休にチャンスが巡ってきました。混雑は覚悟の上です。

さて前夜入りした夜23:30、すでに無料駐車場は満車。なんとか鍋平の方の空きスペースに泊めて、車中泊。翌朝はロープウェイが動き出すまでゆっくりできます。
ロープウェイは8:30の始発の前に臨時便が出た模様。9:00の便で行きます。
終点から西穂山荘までは1時間少々の歩き、まだ10:30で今から飲んだくれると明日の山行に影響するので、そのまま槍見台まで歩くことにします。
槍見台ではガスが出始め、槍の見えない槍見台となりました。
そのまま引き返し、山荘に戻ったのがちょうど13:00で宿泊受付が始まったところでした。並ぶ、並ぶ・・・で部屋「西穂高3」の出入り口付近には明日のジャンダルムアタック3組6人が2枚の布団で一夜を共にします。
前夜は車中泊ということもあり、昼寝、16:30からの夕食後も少しビールを飲んでそのまま寝ました。狭いながらもよく寝ました。
翌朝は3:00起き、別のアタック隊は涸沢まで行くらしく2:00起きでもういませんでした。トイレを済ませて、3:30には出発。朝ご飯は後で食べることにします。
暗闇の中ヘッデン点けてまずは西穂独標へ。最後のところで少しスリリングな岩場ですが、まだ序の口。さらにそのまま西穂山頂に向かいます。
これって一般登山者にはハードだなぁと思いながら、岩稜帯を通って西穂山頂に。ここでヘッデンも外します。

さてここからは一般ルートではなくなります。ルートも見るからに、単なる岩稜帯に時々ペンキマークがある程度で、想像以上に険しいところだという印象でした。もっともこれもまだ序の口です。
距離的には西穂山荘から西穂高岳で、奥穂までの半分に相当するのですが、実際にはここからが猛烈に時間がかかる「半分」となります。
まずは間ノ岳を目指します。岩稜帯の稜線歩きが中心ですが、垂直の岩場に鎖、あるいは単なる垂直の岩場、と徐々にレベルアップしてきます。
山と高原地図には、鎖場についての記載が何点かありますが、実際には鎖のないほぼ垂直の岩稜地帯が多く、「何カ所か鎖場をクリアすれば大丈夫」というものではなく、常に滑落のリスクを背負って、緊張と恐怖感の連続となります。精神衛生上非常によろしくないです。高所恐怖症の人は絶対に入ってはいけません。
天狗岳(天狗岩、天狗の頭)へは逆層スラブに鎖がぶらさがっているところがありますが、これは垂直ではないのでまだ楽な方です。もちろん失敗は許されませんが。
天狗からの下降もかなりのもので、一つ一つ確実に足場と手のホールドを確認しながら下りないといけません。

天狗を越えるとジャンダルムが見えてきます。ジャンダルムのピークは通過しなくてもいいのですが、せっかくなので登ることにします。西側に黄色いペンキマークがありますから、そちらから岩場を登ります。ルートが分かりにくく、間違えると大変な目に遭うので慎重にルートを選んでください。登りはまだいいのですが、下りは同じところをそのまま逆に下ります。その下はスッパリ切れ落ちているのは相変わらずで、ここの下りは一二を争うくらいの恐怖でした。
下り終えると右手に奥穂へのルートがあります。岩場をへつって横切りますが、これもまた鎖もなくバランスを崩したらもう終わり。実際この三連休で滑落された方は、ザックにかけていた服が岩に引っかかってバランスを崩したのが原因だそうです。バランストレーニングはとても重要です。
ジャンダルムの次は、ロバの耳のコルへの下降ですが、これもまた非常に難しい。ほぼ垂直の岩場をそろりそろりと下降します。もちろんロバの耳の通過も垂直に登ってはへつるようなトラバース歩きと、緊張感の連続で精神的にかなりハードになってきます。精神力、体力が必要です。
ロバの耳を越えるといよいよラスト、馬の背が見えてきます。両側がスッパリ切れ落ちた稜線の岩稜地帯を四つん這いになって進みます。足元以外の下は見てはいけません。

ここをクリアすればあとは奥穂までもう少し。奥穂山頂から先は一般道、本当に安心して歩けます。もう命をかけた緊張感から解放されて、やれやれという感じに満たされます。

長時間行動にもかかわらず、トイレに適した場所はほとんどありません。よく見ると岩陰で用を足した形跡があるので、トイレに近い方はまめに確認しておきましょう。もしお腹の調子が悪いと悲惨で、前日のお腹の調子も万全を期する必要があります。私の場合は緊張で小キジすら行かずに終えましたが・・・。

翌朝は白出沢からの下山、こちらは単にガレているだけで、途中の沢沿いで崖っぷちを歩く緊張を強いられる場面がありますが、慎重に歩けば問題ありません。何よりせいぜい数分の話です。

この三連休で、穂高連峰で滑落遭難が相次ぎました。すべてお亡くなりになられています。ヘルメットは必携ですが、滑落して数10mも空中から岩場に落ちて直撃する衝撃ではヘルメットでもどうしようもありません。
クライミングではビレイするので滑落しても安全ですが、このルートはロープを出すにも時間がかかって周囲の迷惑になるのでできないですし、やったとしても途中で暗くなってビバークする羽目になりそうです。
小雨に降られただけでもリスクは一気に高まります。強風も極めて危険、ましてや大雨や雷雨などに遭えばそれはほぼ死を意味することになるでしょう。
つまり本気で命の保証のないことを理解した人たちだけが入って行ける場所なのだと思います。
もしクライミング経験あり、体力あり、という方からこのルートを案内して欲しいとお願いされても、正直なところお断りすると思います。自らの命は自ら守れる、そういう人たちにだけ許された、極めてリスクの高いルートなのだと認識させられた山行になりました。
無事に歩き通したからと言って、達成感もないですし、自慢する気もありません。運が悪くなかったから大丈夫だっただけなんです。

とは言えこういう機会でもない限りは絶対に行かなかったであろうこのルート、今回行けたことは大変貴重な経験でもあり、今後の色々な場面で役立つことになるだろうと確信しています。

オマケ1

今回は沢靴(アプローチシューズとしても使えるラバーソールのもの)、沢スパッツで臨みました。グリップ、膝や脛の保護にはとても効果的でした。唯一の欠点は、冷えると足先が冷たいこと。沢靴に防寒性はありません。

オマケ2

手袋は薄手のゴムがついた作業用のグリップタイプが最適です。ピッタリフィット、軟らかいものがいいです。素手もいいのですが、痛いです。

オマケ3

少しでも死ぬリスクを減らすためのポイント

・登りで先行者がいる場合、下りで後続が来る場合は落石が落ちてくる可能性が高いと考えます。前後に他の人が来ないようなペースで歩けると安心です。

・下りでやばい浮き石があれば、安全なところに石を移動しましょう。後続者が落として自分に当たる可能性があります。

・落石を起こしそうになったら、その足で落ちそうな石を保持して落ちないように操作してください。日頃から大声で「ラクっ」と叫ぶ練習をしましょう。いざと言うときに声が出ないものです。

・「多分大丈夫かな」と楽観的に考えず、もしこのホールドが剥がれたら、足場が崩れ落ちたら、とリスクを考えながらできるだけ安全な行動しましょう。

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コメント

さすがに最難関コースですね
momochann様

素晴らしい山レコをありがとうございます。厳しいコースであることは知っていましたが、これほど厳しさの伝わる山レコは初めてでした。ありがとうございます。自分は絶対行くことはないと思います。
                     chii1961
2014/9/17 0:00
Re: さすがに最難関コースですね
chii1961さん

こんばんは。コメントありがとうございます。
そうですね、ネットで調べてもその危険性が伝わるものは少なく、それはきっと写真を撮っている余裕のある場所が少なく、危険であればあるほど写真が撮れないからだと思います。
オススメは穂高山荘から奥穂高岳山頂です。ここなら梯子、鎖も一カ所あり、ジャンダルムも眺められ、槍も近い、というロケーションを安全に満喫できると思います
2014/9/17 20:54
Re[2]: さすがに最難関コースですね
momochann様

ご返信、ありがとうございます。
まだまだ初心者ですので、いつか涸沢から奥穂高に行ければいいなと思っています。
これからも山レコを楽しみにしています。
                       chii1961
2014/9/19 6:47
西穂縦走を甘くみてはいけませんね
momochannさん

緊張感が非常に伝わるレコありがとうございました。
もし機会があったら行ってみたいと思っていましたが・・・
やめときます

岩登りをやっておられる方でも「運が悪くなかったから大丈夫だっただけなんです」というコメントは非常に印象的です。むしろ岩登りをやっているから余計にわかるのでは。

これから秋の鈴鹿を中心に、無理のない登山を趣味の範囲で楽しみます
2014/9/17 0:14
Re: 西穂縦走を甘くみてはいけませんね
mugiさん

こんばんは。コメントありがとうございます。
道迷い遭難で捜索する場合、登山道から離れた斜面に入ったりするのですが、落石や滑落の危険、崖に出くわして進退窮まる・・・ということがしばしばあります。
そんな時はロープで安全を確保し、決して二次災害が発生しないようにするのですが、西穂〜奥穂のルートはその安全の確保を放棄するルートでした。

秋の鈴鹿は素敵ですよね。ゆったりと自然を満喫するのが山の魅力かと。
私もまたちょくちょくお邪魔させていただきます。
2014/9/17 21:00
もも先生!
すごいの一言!
R先生もご一緒だったんですね。
恐ろしい所ですね、油断大敵、一瞬の油断が命とりですね。
こわいわぁ
2014/9/17 20:20
Re: もも先生!
ゴリさん

こんばんは。そうなんです。行って初めてその恐怖を知ったというか・・・岩場そのものは初級アルパインクライミングルート程度なのですが、それを確保なしで行くというのがポイントです。
運が悪くなくてよかったです。ほんとに。
2014/9/17 21:03
無事で何よりです。
はじめまして〜。
興味のあるところなのですが、立ち寄らせて頂きましたが・・・。読んでいて、胃がでんぐり返ししそうになってきました。行くも地獄、帰るも地獄。未熟者は絶対に踏み入れては行けませんね。よく伝わってきて良かったです。実際16日の新聞だったかな、そのルートでその3日間で3名亡くなったという新聞記事を読みましたし。臨場感溢れる記録です。ありがとうございました。これからも頑張って下さい。
2014/9/22 17:10
Re: 無事で何よりです。
skagitcastさん、コメントありがとうございます。

そうですね。天狗の頭あたりで雨に降られたら岩が濡れてスリル満点どころの騒ぎではありません。手も濡れて冷えることで力も入らなくなり、だんだんと気力も失われ、緊張の糸が切れてしまうでしょう。本当に行くも戻るも地獄でしょう。

クライミングではロープによる確保で安全を確保するのですが、西穂〜奥穂はノービレイで初級クライミングルートを登ったり下りたりする超スリリングな縦走路です。
確保するのが当たり前のクライミングをやっていると、この縦走路のノービレイな状態がとても異常なことに感じられた山行でした。
2014/9/22 21:57
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無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [2日]
奥穂高岳/白出沢ルート/新穂高温泉起点白出沢穂高岳山荘経由
利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス、 タクシー
技術レベル
3/5
体力レベル
4/5
無雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [日帰り]
技術レベル
3/5
体力レベル
3/5

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