日本の桃源郷 薬師見平(あわや黒部川で溺死…)



- GPS
- 24:21
- 距離
- 47.7km
- 登り
- 4,456m
- 下り
- 4,449m
コースタイム
- 山行
- 17:08
- 休憩
- 0:33
- 合計
- 17:41
- 山行
- 5:59
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 6:23
天候 | 晴れのち暴風雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山道以外は全て危険、黒部川の泳ぎは命がけです。 |
その他周辺情報 | 亀谷温泉 |
写真
装備
個人装備 |
ビバーク装備
行動食
登攀装備
ロープ30
ハーケン
カム
捨て縄
ハンマー
ナイフ
|
---|---|
共同装備 |
ツエルト
ジェットボイル。
|
感想
今年の夏休みはバリって決戦。念入りな計画と準備を進めて、限られた人しか行けない日本の桃源郷薬師見平を相棒と目指した。
薬師見平は以前NHKのクルーが撮影した映像を見ていきたいと思っていた。記録は少なく日帰りはムズそう。どのルートにしようか地図を眺めて3ルートほど計画を立てた。どうせ行くなら記録のないルートを行き新たな記録にしよう。下降は薬師岳のカールを下りる事にした。
深夜0時半雨が止んだので折立からスタート、重荷なのでチャリではありません。チャリったら足が持たないぞ。
足が軽いからガシガシ登り暗闇の太郎を通過して先を行く、薬師峠のテン場は賑わっている。さすがに標高が上がると寒いからペースを上げたいけど暗闇の下降は危険なので時間調整だ。
避難小屋を超えて山頂との中間でご来光を待った。今日もきれいなご来光が拝めました。対岸には赤牛岳と薬師見平が見えていた。明るくなったのでカールを1200m下降して黒部川を目指す、ここの下降は記録がないから何が出てくるやら、装備は十分なので大丈夫だろう。壮大なカールは圧巻です、まるで巨大な火口の中にいるような感じ。いつも眺めていた所で誰も行かないから貴重です。
カールから下は急峻な谷で雪渓も現れる、へつったり、雪渓を下降したりを繰り返す。チェーンスパイクとウィペットが無ければ無理でした。薄い雪渓もあり緊張が続く、ノドの部分は一本橋状態でした。
雪渓が終わっても安心できない、雪渓がなければ滝がある。際どく巻いたり懸垂したりして時間がかかった。
約2時間かけて黒部川に合流した、ここから渡渉の連続で右岸左岸と渡りながら無名沢まで下降していく。流れが速く水量も多い、腰から胸辺りまで水に浸かりながら渡渉する。相棒はちょっと流されビビっていた。途中で黒部川を遡行しているパーティーと出会った。
無名沢の手前で泳ぎがある、水深は2メートル以上で足が着かない。15mほど岩伝に泳ぎ岸に上がろうと岩を離した瞬間沈んでいく…、荷物が重いせいか…、マジヤバい…、これ死んでしまう。必死にもがくがウィペットが邪魔をして進まないし沈んでいく、とっさに右手のウィペットを外して平泳ぎで生還できた…数秒の出来事だったけどマジヤバかった。ウィペット一本紛失です。
泳いできた相棒を引き上げて無名沢に到着、ずぶ濡れで寒くて震えが止まらない。運よく滝の高巻から始まるので一気に登り上げて体温を上昇させよう。ウィペットは一本だけどチェーンスパイクがあるので安心だった。30分ほどで滝を巻いたら体はポカポカ、太陽も当たってよかった。
無名沢を登り二股を左に行くと桃源郷がある、楽しい沢登りでした。水が無くなり平に登り上げる手前から藪漕ぎになる、GPSを見て一旦沢から外れてポコに向かう、激藪を漕いで平を見下ろすポイントで写真を撮った。素晴らしい別世界だ、これぞ桃源郷だ。さあ平に行こう。スタートから約11時間夢の桃源郷に到着、ホンマもんのハイジの世界です。頑張った人しか見れない楽園です。ガスってた薬師岳がきれいに見えて出迎えてくれた。ここでテン泊したいが先は長い。写真をたくさん撮ったらスタートしよう。
帰りの作戦会議…相棒はもう黒部川はイヤだと駄々をこねる。急流と泳ぎと寒さが辛かったらしい。そうなると赤牛岳を登るしかないが天候も不安だしビバークする所もないだろうから頑張るしかない。
一旦沢を下降して右の沢を詰めて2450mの尾根に上がる作戦、このルートも計画していたので問題はない。平からの尾根は激藪なのでここしかないだろう。標高2200mで藪になる、ここで湧水を汲んでおく。更に重荷になるが水は命です。激しい藪、残り250mが試練です。横の尾根を見ると巨大なガレ場が広がっている、これはラッキー、トラバースしてガレ場をよじ登っていく。
しかし甘くない、ルートは谷から外れていく、そしてガレ場が終わると激藪…1級です。軌道修正、トラバースして沢に戻ろう。追い打ちをかけるように雨が降ってきてずぶ濡れです。
戦い続けて沢に合流すると鞍部までガレ場が続いていた、潔く沢の藪漕ぎをしていた方がよかったな。これも記録のないルートのあるあるなのです。
鞍部に到着、ここから450m登り上げるとピーク。視界も10mほどで暴風雨となる。GPS頼りで登って行く。痩せ尾根は特に気を付ける、落ちたらおしまいだ。風にあおられてやっとピークに到着、ザックも下ろせない爆風なので休憩できない。これ停滞して体が冷えると間違いなく低体温症になるぞ。この先稜線はずっと試練だった。試練の風に耐えて温泉沢の分岐に到着、ここから一気に標高が下がるので暴風雨から逃れられる。疲労も溜まっているので急斜面の下降は慎重に。
周囲は暗くなるころ温泉に到着…、今日は頑張りました。沢の脇でツエルトを張って温泉にドボン…、一時間ほどゆっくり浸かって体を温めた。とても至福な時間でした。もう時刻は8時を過ぎている、ツエルトに戻って暖かいラーメンをすすってビビに潜り込んだ。雨音と沢の音で熟睡できないまま朝を迎えた。ひとっ風呂浸かってパッキングをして下山開始。安定の雨が降り出してきた。昨日が数少ないアタックの日だったな。
水を含んだザックと登攀具が重いっす、薬師沢小屋から太郎の登りが試練だった。天気がわるいせいか登山者は少ない、おかげで下山はいつもより快適でした。三角点上からガスを抜け出すと暑い、まだ雨が降っていた方がマシです。汗だくになって折立に下ザーン。
日本の桃源郷に新たな記録を作れて大満足、お疲れさまでした。。。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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今回も凄すぎるレコありがとうございました!
今回は天候がイマイチでアタック日は14日しかありませんでした。
桃源郷ではガスに包まれていた薬師岳が綺麗に見え感動!その前後は全く見えなかったんです。
山の神様はいますね。
前橋のBCスキーヤーhareharawaiです。薬師岳から東面の中央カールを黒部川上ノ廊下まで下降し、そこから黒部川を下り、谷を薬師見平まで登ってそこから尾根を赤牛に登り上げる...自分ではとても考えつかないルート取りです。お二人が黒部川の水流に流されなくて本当に良かったです!ウィペット1本だけで命が助かって良かったです!そこでひとつ質問ですが、川の横断する際にはロープワークだけではなかなか難しいことが多いかと思いますが、今回のような急流である黒部川上ノ廊下を渡渉(通過)する際に心がけていたことがあったら教えて頂けると助かります。
hareharawaiより
記録の無いルートは荷物が重くなるので大変でした。
今回の黒部川は単なるアプローチの一部なので、ベストやスーツなどありません。流されたらヤバいから渡渉は慎重に行いました。激藪漕ぎと同じで必ず弱点があります、言葉では説明出来ませんが山ヤの感が働きました。
ストックはとても有効ですが、泳ぐ時は手に持ったらダメだと分かりました。
ご質問の回答にはほど遠いですけど、核心部では五感をフルに発揮させて挑んでいます。
hareharawaiより
黒部上ノ廊下から無名沢を詰めて薬師見平に行ってみたいなと、以前から思っております。
2022年8月13日に無名沢出合を通過した際に、無名沢の最初の滝を登れるか見て登るのは厳しそうだなと思っていたのですが、左から巻くのですね。改めて自分の写真を見たら左上する岩場の上は結構垂直な岩場に見えたのですが、巻きはハードでしたか?
初めまして。滝の巻ですが、取り付きから立木が現れるまでが核心で、ランニングが取れないからフリーで登るしかないです。登攀経験者でしたら問題はありません。
前回の山行は全く記録のないルートでしたのでハラハラでした。
滝よりカールの下降と赤牛の登り返しのルート、暴風雨が核心でした。
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