記録ID: 28991
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
道東・知床
摩周湖清里峠から知床全山縦走
1992年03月17日(火) 〜
1992年04月06日(月)


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- 距離
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アクセス | |
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コース状況/ 危険箇所等 |
摩周湖清里峠→養老牛岳→サマッケヌプリ山→海別岳→遠音別岳→羅臼岳→知円別岳→知床岳→知床岬→相泊 1992/3/17-4/6(15-5-1) L:斎藤(5) AL:梶川(4) M:いはら、銭谷(2)、日下(2) 3/16 晩に摩周の焼肉屋“ちょっちゃん”にメンバー全員とドライバーの多田さんが集合、入山コンパを行う。 焼肉屋のおばちゃんの好意で二階の布団で泊まらせてもらった。 3/17 晴れのちガス終日風強し 清里峠(10:10)→・788(12:10)→養老牛岳(15:15)→養老牛岳北東側標高680m(15:45)C1 高気圧のへりにいるため、終日風が強い。峠からケネカ川上流の沢沿いに進み・788の西に伸びる尾根に取り付く。予想したより雪が多め。尾根の感じは道北ピッシリ周辺に似る。南北に伸びる稜線上には雪屁というか雪堤のようなものが2〜3m張り出している。稜線の標高500m以上は風除けになる木が少なくなり夏天で泊まるのは無理。この日晴れてはいるが、時々バランスを崩すような突風が吹く。そのうち局地風に耐えられなくなり、養老牛手前のピークから東側の斜面をネグる。途中からアイゼンに履き替え、シートラで養老牛岳に達する。吹きっさらしの頂上。この日は初日なので無理をせず、そこから北東尾根を下った標高680m付近に泊まる。今回のため新しく購入した5人用のドームテントを広げ、風除けのブロックを積む。 3/18 晴れのち快晴 朝−10℃ C1発(6:30)→標津岳(9:00-20)→サマッケヌプリ山(11:30)→サマッケヌプリ北標高640m(12:30)C2 移動高の後ろ、終日好天。標津岳手前のコルには立派なタンネ林があったが、そこから先はカンバ。標高900mより上部では白くなる。・845の登りの急斜面はスキーを脱いでツボ足のキックステップで通過。標津岳の頂上は360度の展望台。頂上からコルへの下りは稜線西側の斜面を稲妻ターンで滑降。状態によって雪崩の心配も必要だが、尾根を忠実にたどれば大丈夫。標津岳〜サマッケヌプリ間はカンバの疎林。サマッケヌプリは名前がなければただのポコに見える。手前のトラバースでメンバーの1人(色吉)がスキーを引っ掛け40m位滑落するが大事に至らず。サマッケヌプリから先はすぐにカンバの密林となり、標高900m位からはタンネの密林に変わる。今夜はタンネの森でCamp。 3/19 快晴 朝0℃ C2発(6:50)→根北峠(11:00-30)→カスシナイ沢下二股標高270m(14:00) 気圧の谷の通過、低気圧の前面晴れ。十勝の原始ケ原〜裏十勝の麓を彷彿させるような斜里岳の南裾野。標高700m前後を延々とトラバースして進む。余裕があればこの原始林の中で泊まり、豪快な焚火を楽しんでみたいものだ。地図を読んでパンケニワナイ川の二股にぴったりとあて、根北峠へ滑り出る。根北峠にてデポ品を回収、さらに峠から東へ磁石をきって沢へ滑降。カスシナイ川の水量は思ったほど多くなく、数度の渡渉はいずれもスノーブリッジを使うことが出来た。標高270mの二股に泊まる。 3/20 小雪のち晴れ(風強し) 朝0℃ C3発(6:30)→稜線(10:00)→錐山(11:20-30)→錐山北ポコ標高640m(12:00)C4 弱い低気圧の通過。カスシナイ川をスキーで快調に遡る。上流で右股に入り標高390m付近から錐山西方の標高620mへ出る西尾根に取り付き再び稜線へ出た。錐山周辺の稜線は部分的にカンバが密生し鬱陶しいが、広い斜面も多く、スキーの登降は意外に快調だった。雪庇は東側に発達している。錐山の登りはハイマツが露出しておりスキーを脱いで通過。錐山北方640mポコから少し東に下ろした場所にテント一張り分のスペースを作る。この付近だけ風が当たらず、午後は外で日光浴を楽しめた。行く手には巨大な白い丘、海別岳がドカンと見える。両側にはまだ流氷の残る海が広がっている。ご満悦。 3/21 高曇りのち晴れ 朝0℃。 C4発(6:40)→・862東(13:20)C5 弱い冬型。太平洋から朝日が昇る。鹿の群れが隊列を組みながら目の前の稜線を駆け上っていった。我々も出発する。・759から先の稜線は起伏にあわせてスキーの脱着を頻繁に繰り返す。・862手前の稜線は岩が露出しており、アイゼンシートラで東側をトラバースする。・862のすぐ東側に泊まる。 3/22 雪風強し 朝-11℃ C5=C6 停滞 夜半に北海道南岸を低気圧が通過、冬型が決まる。ちょうど良い骨休み。 3/23 曇のちガスのち快晴 C6発(6:30)→標高1020mで時間待ち(7:30-10:00)→海別岳(12:00)→・879北コル(15:30-50)C7 移動高来る。S57清水Pの記録にもあったが、高気圧の縁にいるうちはあまりパッとしない天気。海別岳手前でツエルトを被って視界が広がるのを待つ。海別岳東の肩まで地図上細く見える箇所もあるが実際は難しい所も無く頂上までスキーで行けた。海別岳の広い頂稜部に出てからは歩けど歩けど頂上が出てこない。ようやくガスの中頂上に達する。頂上からの下降はひとつ北側のポコから北東側に伸びる尾根をシートラして下りた。尾根の傾斜は急だが細い所は無く、バックステップを2回程繰り返し末端まで。末端に着く頃、天気が急速に回復してきた。明日の内・1019を越える腹づもりで先に進める。・879北側の小コル、タンネ限界付近に泊まる。ここまで来るとだいぶ疲れがたまってきた。いはらが腰痛を訴える。 3/24 無風快晴 朝-3℃ C7発(6:40)→1019峰(10:30-11:00)→オンネベツ川標高320m(13:00)C8 高気圧は東方海上に抜けたが、まだその張り出しの中にいる。これまでで最も良い天気。大滝沢の源頭域から稜線上にタンネが出現する。おおむね稜線の南側に雪庇が出ている。1019峰の手前のポコは北側をネグる。1019峰は定天と似た岩質で、三角錐の頂上が素敵だ。頂上へダイレクトに登る尾根は急になる部分までハイマツがびっしりと生えている。今回は雪の状態が良いため、ハイマツ帯直下までスキーを上げて、そこから西側へカンバ帯の急な雪面をトラバースした。トラバースの雪面は結構硬くて緊張。途中からスキーを脱いでキックステップに切り替え、頂上すぐ北西側の鞍部に這い上がった。頂上には立派な三角点があり、国後をバックに記念撮影。頂上からの下りは頂上から北側の・896との間にある地形略奪点を越え、オンネベツ川源頭へ木立の中をスキーで快調に飛ばす。沢は標高400m位で口をあけてくるが標高320m地点まで進めてC8。明るいうちから沢の中で豪快な焚き火を楽しんだ。 3/25 曇のち雪風強し 朝0℃ C8発(6:20)→遠音別岳南西側樹林限界標高630m(9:30)C9 気圧の谷が昼間通過する為、その前面晴れの間に行動。朝は風弱し。行動中、遠音別岳頂上は終始ガスっていたが海別岳方面はずっと見えていた。C8の天場からすぐ東の尾根にスキーで取り付く。稜線に出てから500m程進んだあたりで岩が出てくる。雪面も硬かったのでアイゼンに履き替えスキーを引っ張りながら通過。岩の部分は2〜300m程続くが雪面が硬くなければ東側を大きく捲けるだろう。次のポコ群はまとめて東側をネグり、700mポコの手前に出る。700mポコは西側を捲き、予定の天場までスキーで滑り込む。昼頃から天気が崩れだし、地吹雪となった。 3/26 雪 朝-1℃ C9=C10 停滞 気圧の谷の通過。降雪20-30センチ。 3/27 晴れのち曇のち快晴 C10発(6:30)→遠根別岳(8:30-45)→知西別岳(11:40)→愛山荘(14:30)C11 移動高来る。海別岳方面は朝からずっと晴れていたが羅臼岳方面は夕方から晴れてきた。標高1080mからアイゼンシートラで遠音別岳を乗っ越す。遠音別岳は鋭く尖った頂上と南側へ断崖絶壁となって切れ落ちた山襞が昨日の雪を纏って実に神々しく見えた。遠音別から北の稜線は北東を向いたあたりからやや細くなってくるが特に困難な箇所は無く知西別岳とのコルからスキーに履き替える。知西別頂上付近は西側の沢から吹き上げてくる局地風が強い。頂上からの下りはシュカブラが発達した斜面をシールをつけたまま強引に滑ったせいか、シールがぼろぼろになった。天頂山はカットし、無人の愛山荘へ滑り込んだ。愛山荘ではデポ品を回収し、余分な食糧を食べまくった。切れかかっていたタバコをスパスパとふかす。小屋は石炭ストーブが快調だった。前半が無事終了。 3/28 快晴 C11=C12 休養停滞 高気圧の圏内だったが、前半も終わったので予定通りの休養日とした。外は生暖かい風が吹き、陽光がふりそそぐ。時折外に出ては羅臼岳の威容を眺め、ゆっくりと休養。縫い物をしたり本を読んだりして過ごす。昼間一時ガスったものの夕方には回復し。夕陽が照りつけ、天頂山がオレンジ色に染まる。 3/29 快晴 C12=C13 停滞 この日も移動高の圏内にいるが、明日以降低気圧が通過することから先の稜線上に泊まるのを避け、小屋にとどまる。スカ天の羅臼岳を恨めしげに眺める。小屋に居るより外にいる方が暖かいので、知床峠まで散歩に行ったり、そばの小川で釣りを試みたりする。午後は定番となった日光浴。メンバーの吹くハーモニカの音色が林の中に心地よく響く。 3/30 ガスのち小雨のち曇 気温高し C13=C14 停滞 南岸低気圧の接近。低気圧は今晩から明朝にかけて通過するようだ。正面に見える羅臼岳が日一日と黒くなっていくのがわかる。連日の高温で岬周辺の雪が消えてしまうのではないかと心配になってくる。体力も回復したので皆ヒマをもてあまし始めた。明日からは行動再開である。 3/31 快晴 昼10℃ C14発(9:00)→羅臼平(13:15-40)→羅臼岳(14:25-45)→羅臼平(15:10)C15 天気周期早く、次の移動高の張り出しの中に入る。この日行動時間が短いので、ゆっくりと小屋を出る。すでに灼熱の日差しが降り注いでいた。赤イ川をスノーブリッジで渡り、重荷にあえぎながら予定のトラバースルートをたどる。標高860mにある岩塔の東に出て塊状熔岩の乱立の中を縫うように斜面を登る。陽光の照り返しが顔面をジリジリと焼く。頭に雪をかぶりながらなんとか羅臼平の入口にたどり着くが、メンバー2名が熱射病気味。テント設営後、軽装で羅臼岳へ向かう。溶岩ドームの下にスキーをデポ。そこから溶岩ドームはほぼ夏道に沿った雪面をアイゼンで登る。下から見ると岩の目立つルートであるが、実際は雪面の登りに終始する。頂上は微風、視界は良好。遙か東に海別岳が霞んで見えた。海を挟んでチャチャヌプリはかすみ、全貌は見えない。レモンかじって頂上を後にする。 4/1 快晴のちガス 2℃ 昼間13℃ C15発(5:30)→三ツ峰(5:50)→サシルイ岳(6:40)→知円別岳(9:40)→ルシャ山(13:00)→ルシャ川二股(15:40)C16 移動高の後ろ。異常高温の日。網走紋別では18℃を越え、6月下旬〜7月上旬の気温を記録した。ゲゲッ。三ツ峰〜サシルイ間の南北に伸びる断層帯をスキーで北上する。オッカバケは東側をネグり、南岳のハイマツ斜面をトラバースして知円別へ。少ない雪を伝いながらずっとスキー。東岳で79年知床遭難3名の追悼を行ってから本格的なハイマツ漕ぎに突入。冬山装備でハイマツ漕ぎはキツい。ルシャ山を越えてやっとハイマツから解放された。皆バテバテとなりながら飲み水を求めてルシャ川へ滑り込む。ザラメ雪の沢筋を標高170m二股まで滑る。ルシャ川の天場は陰気臭い霧がたちこめていた。あと三日、ようやく岬が近づいてきた。 4/2 小雨のち雨のちガス C16=C17 停滞 気圧の谷の通過。朝から雨で思わぬ停滞。昨日の全身運動で疲れた体には良かった。15:00頃雨あがる。 4/3 曇のち快晴 +2℃ C17発(5:30)→稜線(7:30)→知床台地上(12:00)→知床岳(13:30)→ポロモイ台地知床沼(15:15)C18 移動高の覆い始め。天場からすぐ対岸の尾根に取り付く。尾根を登るにつれ、ガスが晴れてきて東岳、硫黄岳が顔を出す。今日は爽やかな天気だ。雪面は昨日の雨で硬く締まり、スキーで快調にとばす。天場予定の知床岳手前のコルまでだいぶ早く着いたので、先に駒を進めることにする。知床岳台地への登りは予想通りハイマツの海。それを避けるように少し登ってからカモイウンベ側の源頭に広がる雪の斜面を延々とトラバース、直接台地に出る。このトラバースルートは雪の状態によって雪崩の心配が必要。台地上に出ると6月の暑寒のような光景。鞍部から空身で知床岳を往復。ここまで来れば行く手の岬の先で海がつながっているのがわかる。知床台地〜ポロモイ台地間は細いところもあるがスキーで通過出来る。不快調な斜面を下りてポロモイ台地。知床沼は部分的に水面が現れている。そのほとりのモイレウシ源頭部にCamp。本日は岬パワーで行動を一日短縮。 4/4 快晴 朝6℃ C18発(5:30)→ポロモイ岳(6:15)→ウィーヌプリ(8:45-10:00)→知床岬(14:15)C19 国後島から昇る朝日にポロモイ岳の残雪が照らされて綺麗だ。少々のハイマツ漕ぎを経てウィーヌプリへ。頂上付近は枯れたハイマツでびっしりと覆われている。風も無く昼寝などして大休止。ここまで来たら岬まで稜線伝いに行こう。今までの苦労を考えればこの先の薮ヤブ稜線もそれほど不快調には見えない。ところがアカイワ川源頭部の標高500m付近の細くなるところで稜線上が行けないため、スキーを脱いで東側を捲こうとしたところ、踏み込んだ斜面の足元から雪崩を誘発。グチョグチョの腐った雪がドドドーという轟音とともに斜面を流下し、はるか下の樹林帯で太い木をバリバリとへし折る音。ものすごい破壊力。一瞬ひやりとする出来事であった。岬へ近づくにつれ徐々に雪も消え、スキーを脱ぐ。鹿の踏み跡に導かれるように尾根を降り、下草の柔らかい針葉樹の森をシートラで抜けると岬に到達した。岬は辺り一面黄金色の枯れ草が風になびき、海には流氷のかけらが光っていた。先端で奇声をあげて祝う。摩周清里峠から19日目。残り少ないタバコをふかし、日が暮れるまで海を眺めた。 4/5 晴れのち曇 C19発(6:30)→ペキン川河口(13:30)C20 昨晩派手に燃やしたスキーの残骸が、まだくすぶっている。皆それぞれに岬を後にし、海岸を歩く。カブト岩は捲き道+フィックスロープを使って大きく捲く。念仏岩は急なルンゼをステップ切って登り、岩の段差の部分にザイル1ピッチフィックス。下りはノーザイル。それぞれのペースでちんたらと歩く。ペキンの鼻は大捲き。ペキン川河口にあった新品の番屋に潜り込む。 4/6 C20(7:20)→相泊(13:30) メガネ岩、タケノコ岩周辺と化石浜の南岩礁は満潮時を避ければ通過できる。巨岩、奇岩が続く。化石浜の南で一箇所きわどいところがあった。観音岩の下りは、フィックスロープを掘り出して強引に降りる。ここまでくればもう心配はいらない。崩浜からは円礫がつまっていて歩きやすい。それぞれのペースでゴールの相泊まで。 |
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