JSA SAKE DIPLOMA 二次試験 2020

- GPS
- --:--
- 距離
- 1.2km
- 登り
- 27m
- 下り
- 25m
コースタイム
14:00:開場
14:00:オリエンテーション
14:20:論述試験(20分間)
14:40:論述答案回収
14:45:テイスティング(30分)コロナのせいで吐き出し禁止
15:15:テイスティング答案回収
15:25:解散
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2020年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
目黒駅から雅叙園へは行人坂と呼ばれる急斜面を下ります。転倒や滑落に注意です。 試験会場にはトイレが余りありません。なるべく駅とその付近のショッピングモールで 済ませておきましょう。同様に試験会場には待機中に座る場所がありません。あまり早く行くとひとによっては開場までにくたびれてしまうこともありますのでご用心を。 コロナの影響で今年は飲料の吐き出しが禁止、不正行為とされました。吐器がなく、空きグラスに吐くことや、グラスの飲料の移し替えも反則とされました。それと関連して、酔ってしまうであろうテイスティングの前に論述試験が行われました。 テイスティングに際し、水は持ち込めませんが試験用の飲料とは別に飲料水のグラスが用意されています。グラスの水は注ぎ足してくれます。試験の飲料のおかわりはできません。 コロナとは関係ありませんが今年は腕時計も含めて時計の持込が禁止されました。残り時間は、10分前までは10分おき、そして5分前、3分前、1分前に告知がありました。そもそも論述試験は20分で400文字、テイスティングは30分で6アイテムなので、時計を見ながらでなくてもさっさと解答していくことが求められます。 ーーーー2020の出題−−−− (論述問題 筆者の記憶によるもの) 1ページ目 扉と注意事項、受験番号(印刷されている、自分の受験番号とあっているかを確認します) 2ページ目 空白 3ページ目 問題2題と各問題毎に200文字のマス目。 問題: 1.生産地としての奈良県について200文字以内で述べなさい。 2.球磨焼酎に合う料理を地方性を考慮して理由とともに200文字以内で述べなさい。 4ページ目 空白 テイスティング試験飲料 ソムリエ協会公式発表 1 特別純米酒 山田錦 2 純米大吟醸酒 山田錦 3 純米酒 五百万石 他 4 特別本醸造酒 五百万石 他 5 麦しょうちゅう 常圧蒸留 6 米しょうちゅう 減圧蒸留 テイスティングの課題 マーク式で、それぞれの課題に対し、同時に配布されるテイスティング用語選択用紙から選択します。2019年の選択用紙と用語に変更はありませんでした。 以下は本物の用語選択用紙(持ち帰り可)より課題のみ抜粋 外観:清澄度、濃淡、色調 香り:第一印象、特徴 味わい:第一印象、甘味、酸味、苦味、バランス、余韻 特定名称:8種類の中から選択 選択肢の個数(筆者の記憶によるもの) 香りの特徴 飲料3は10個、残りの日本酒(飲料1,2,4)は8個。色調は日本酒各2個、 その他の選択肢はすべて1個 設問 (マークシート用紙に印刷されています。以下は筆者の記憶によるもの) 1.山田錦を使った日本酒を2個選びなさい。 2.アルコール添加した日本酒を1個選びなさい。 3.セルレニン耐性酵母を使った日本酒を1個選びなさい。 4.生もと系酒母を使った日本酒を1個選びなさい。 しょうちゅうは原料と、蒸留圧力(常圧/減圧)の判別 |
その他周辺情報 | −−−酒ディプロマって?(自分の過去レコより)−−− ソムリエに比べるとSAKE DIPLOMAは圧倒的に知名度が低いと思います。日本ソムリエ協会のウェブサイトによりますと次の通りです。 −−−−−−−−−−− 当協会は1969 年発足(筆者註:JSAの前身、飲料販売促進研究会(B.M.R.G.)発足)以来、わが国におけるソムリエをはじめワインに携わる方々の資質の向上と、ワインを中心とする飲料の普及に努めてまいりました。そのような中、我々の伝統的な食文化である和食と日本酒を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。 このような現状を踏まえ、2017 年に当協会は、皆さまが日本酒に関する知識を深め、技量を向上させることが、日本の食文化のより一層の普及と向上に繋がるものと考え、日本酒に特化した認定制度である「J.S.A. SAKE DIPLOMA」を発足致しました。 −−−−−−−−−−−− 大雑把には、ソムリエに日本酒と焼酎の知識も持ってもらい、日本酒の普及にも一役買ってもらいましょうという狙いで作った呼称資格と言えるでしょう。 2017年呼称資格試験が始まった、非常に新しい呼称資格です。 |
写真
装備
備考 | 受験票、シャープペンシル2本(いずれも2Bの芯を込めたもの)プラスチック消しゴム2個、老眼鏡 会場がホテルの宴会場を使うため、シャンデリアで薄暗い場合があります(筆者はそういう部屋でした)。マークシート用紙は字が小さくて薄く、しかもそれを読み込まないと正確な個数をマークできないので、必要そうな方は眼鏡(自分は老眼鏡。普段はあまり使わない)を必ず用意してください。 マークシート対策には芯が太い鉛筆が塗りつぶしやすいかもしれませんが、本数を揃える必要があるのが短所です。逆に論述は線が太くなり過ぎないシャープペンシルが楽だと思いました。もちろん両方準備することは反則ではありません。どちらも予備は用意しましょう。シャープペンは芯を詰めすぎると目詰まりを起こすので、先から出ている一本のほかにもう一本入っていれば十分だと思います。 人によってはエアコンが効きすぎて寒すぎる場合、エアコンが効かずに暑い場合があるかもしれません。重ね着をうまく使って調子を整えます。 |
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感想
2019年の3秒間のぬか喜び(同姓同名の別人が合格)から1年がたち、どうにか登頂に成功することができた。
先生方、友人、そしてお酒の神様に感謝します。
−−−注意:以下は未来の自分のためのメモ。無駄に超長文注意−−−
2019年の頂上目前霧に巻かれて滑落、惨敗した記録はここから直接たどり着ける。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2060571.html
■今年も試験対策のシーズンがやってきた。
あれから1年、ワインも日本酒もテイスティングコメントを書き続けた。外観、香りの特徴、味わいとその根拠等々。試験対策とは関係なしにそれは面白いものであった。去年の呼称試験の直前にそれなりの自分の物差しを持ったつもりだったから自信もあったのだが、いざ試験対策講座(SAKE DIPLOMA取得のための予備校もあるのだ)を受講してテイスティングしてみると、ぜんぜん点が取れなかった。
当るのに点が取れなかったり、当らないのに点が取れていたり、自分の尺度ができていないのがはっきりわかった。しかし講師の先生方の解説のおかげで、試験1週間前でようやく自分なりの物差しを再構築することができた。試験対策ではこれが結構重要だ。本番は時間がない。迷っていると時間切れになるから、こういう酒にはこういうコメントを書くというお約束を作ってしまうことが時間節約と手堅い得点のために役立つのだ。。
最終1週間はその物差しをもとにテイスティングしながら模擬答案用紙を塗り絵(マークシート)した。昨年はあわてて塗りつぶして枠をはみ出してしまい、消しゴムで消すということで時間を無駄にし、その結果、時間が不足することで精神的にかなり追い詰められた。
もうひとつの最終調整は個数の確認練習だった。指定された個数より足りなければそれだけ減点される。もっとまずいのは指定された個数超過することで、ひとつでも越えるとその項目は0点になってしまうのだ。塗り絵をする前にマークすべき個数を確認する癖をつける努力したのだが、どうしても条件反射で慣れた個数を選んでしまう。結局本番でもこのミスをしでかして後から修正ということになった。
台風14号が日本に接近して、昨年の19号のようになることが懸念されたが、今回は幸いにも甚大な被害は自分の周りには及ばず、天候の回復も予報に比べてやや早め、前日には傘なしでも歩くことができた。
その試験前日の日曜日、「母校」で総まとめのブラインド6種をやってみた。アルコール添加酒2個を完全にはずしてしまった。いやな予感。自分の舌のアル添酒センサーはそれなりにまとまってきた自信があったのだが、自信が崩されてちょっとピンチにおちいった。
しかし今更物差しの修正もできない。今日の酒は芳醇なアル添酒が出て運が悪かった程度に考えて母校を後にし、無事に試験を迎えることができるよう、お酒の神様をお参りしてきた。お酒の神様といえば京都の松尾神社であることは酒好きには結構知られているが、府中の大國玉神社境内にその分社があるのだ。初詣に続いて今年2回目の参拝となった。
参拝後、ABC(Advanced Base Camp)に到着した。アタック前日の最終確認をと思ったのだが、なんだか口の中がざらざらしてきた。土曜日は一日中テイスティングしては吐き出し、水でうがいをしを繰り返していたせいか、どうやら口の中が荒れてきたようだ。昼間に当てそこなったアル添酒の再確認をと思ったが、これで逆に味覚が鈍ったら本末転倒。特に酒はアルコール飲料だから舌が二日酔いなんてことになりかねないと思って、練習のやり足りなさを感じながらも早く眠ってしまった。よく眠れた。
■午前中の待ち時間が長い
恒例により、早朝ジョギングで行きつけの天神様まで出掛けた。今日を風邪も引かずにまずまずの体調で迎えられたことを感謝し、無事に試験が終了することを祈った。こういうときに合格を祈願しないのは天神様の機嫌を損ねないための高等戦術だ。
朝のジョギングは、走りながら鼻が草むらや地面の匂いを捉えられるかの最終チェックも兼ねている。雨上がりで薮から甘い香りが立っていた。この時期に甘い香りが立つのは土そのものか、なにか花が咲いているのか考えてABCに帰還した。ともあれ鼻は効いている。アレルギー鼻炎も出ていないようだ。
この後、試験場へ向かうまで5時間近くあった。昨年は当日も結構テイスティングをやったのだが、昨日のこともあるので飲料を口に含むことは控え、最後のチェックは焼酎の香り取りにとどめた。二階堂(麦)、白(球磨、米)、島のナポレオン(黒糖)の香りをかぎ分けた。芋と泡盛はわかると思っていた(結果的にははずしたのだが)。ウイスキー的なニュアンスが出てくる麦、お団子のような口を包む感覚の米、甘くかつ草的ニュアンスのある黒糖が識別できれば何とかなるだろう。
そして最後に仮想テイスティング練習を行った。実際の酒は口にせず、アル添酒をテイスティングしているとしたら、こういう語群を選択するという具合に練習用マークシート用紙を塗りつぶしていった。同様に、米系、吟醸系、熟成系と、飲んでいるつもりになってそれぞれの酒の性格を思い出し、自分の物差しの最終チェックをするとともに、塗り絵を練習した。マークの輪郭に沿ってゆっくり鉛筆を一周させて輪郭のすぐ内側を塗ったら、そのさらに内側は乱暴にマークしてもはみ出さずにきれいにマークできる。結果としてトータルのマーク時間は短縮できる。急がば回れ方式だ。
論述は知識を詰め込もうとしても、もはや教本の文字が上滑りして頭に入ってこないので、前日に母校で今年のソムリエ協会教本を閲覧して抜書きしたノートの確認にとどめた。焼酎の蒸留方法、カブト式とツブロ式、生産地として愛知と静岡のメモである。2020年の教本では、奈良、富山、山口その他生産地が大幅に加筆されていたが、詰め込みは諦めた。過去の傾向から、特定の地域についての問題は出ないとヤマを張っていた。生産地についての問題を出すと、どうしてもその地域を協会が持ち上げることになる。すると、他の地域から文句とは言わないまでも(当地もよろしくお願いしますという)陳情がたくさん入るということを嫌うのではないかと考えたのだ(結論は見事裏目に出た)。
塗り絵と、焼酎3種のグラスの香りを取ることでそわそわする自分を落ち着かせいるうちに、ようやく出発の時刻を迎えた。ABCから山頂へのアタックである。恒例により最寄り駅への道端に自生している野生ミントの葉を一枚口に入れて野趣あふれる香りを確かめた。
交通手段はこれまた恒例により母校を通過する東急線を利用し、大井町線と目蒲線を利用して目黒駅へ向かった。。
■会場入り
コロナのこともあるし、待ち時間が長くて疲れるのも避けたつもりだったが、結局1時間前には会場に入ってしまった。今年は予備校の先生にお目にかかることができずちょっと残念だった。とはいうもののそういった感傷は試験会場入室の直前にはきれいさっぱり引っ込んで、無意識に集中力が高まった。緊張して口が渇いてきた。口が渇くとテイスティングに差し支えるので、開場までの待ち時間の間、定期的にさかずき一杯ほどの水で口腔を湿し、口内環境を整えるとともに気持ちを静めた。開場。入室の前にもう一度口を湿して入室した。
今回の会場は3階のオリオンだった。会場でまず気になるのは、部屋の照明だ。今回は「はずれ」だった。見事なシャンデリア。クリスタルガラスを通して部屋を包む豪華で柔らかな黄色基調の光線。色調を取るためにはかなり不利な照明だ。しかし、こういうことも想定内だったし、色調から得られる情報が多いワインと比較すると、日本酒の場合は情報量は少ない。熟成が入っているかどうかの判定には使える程度だ。
会場は3人掛けの机に二人掛け、真ん中をダンボールのついたてが仕切っており、なにやら投票所がずらっと並んでいるかのような眺めだった。後年この光景が公開されたとしたら、背景を知らなければ、不正行為対策のために試験者の間にはダンボールの仕切りが置かれたといわれても信じることだろう。
筆者の席は部屋の後ろの角だった。一番集中できる席だった。試験監督による試験に際する注意事項の説明が始まっていた。なおこれはオリエンテーションとは異なるもので、遅刻して入室したというわけではない。座席の番号と受験票の番号が一致していることを確かめ、受験票、シャープペン2本、消しゴム2個、そして老眼鏡を置いた。そういえば今年は時計は持ち込めないのだというわけで、腕時計ははずしてリュックの中に入れた。
■臨戦態勢
テーブルの上には恒例のビニール封筒に入った書類一式、そして飲料が6点、さらにコロナ対策というわけで、テイスティング時にマスクをしまうための封筒状のマスクケースが置かれていた。
グラスを凝視した。
1、2は微かに色がついている。3はかなり色がついている。4はかなり淡い。5,6は紙で蓋をしてあってこれは焼酎だろう。4の量が他の3点に比べて量が少し大目。少し価格の安い酒なのかなとか?アル添は4番かななどと当たりをつける。当然3番は山廃純米というの試験対策的の基本(註:ただし、大七、末廣はもとより菊正宗みたいなきれいな生酛系もあるので要注意)。この並び、2019年と一緒なので惑わされた。
封筒開封、グラスを吹き飛ばさないように慎重に開封した。不注意に作業すると、一昨年のワインの二次試験のような転落の危機(グラスに書類をぶつけてふっ飛ばしかけた)に陥るかもしれない。そういうことがないように、昨年同様作業はテーブルから極力体を離して行った。この後室内で「チーン」というグラスをたたく音。だれか「滑落」させた(グラスを倒した)かもしれない。
その封筒の開封の際にマークシート用紙の裏面が見えた。マークシートを見て「あっ」と声が出そうになった。今年はマークが縦長だ。昨年は横長だったので、塗り絵の練習もひたすら横長の丸を塗ってきたのだ。テイスティングとは無関係だが、塗り絵も含めて試験である。この微妙な感覚の違いが持ち時間の不足につながるかも知れない。ちょっといやな感じだ。
マークシート裏面は設問が書いてあるようだ。しめた、事前に設問がわかると思ったが、結局読めなかった。あまり長い間マークシートを見ていると不正行為に取られるのも嫌なのであったが、そもそも開封に難儀したため、盗み読みをする余裕がなかったのである。
オリエンテーション用紙を読むと「4枚目のテイスティングシートの表面は白ワイン、裏面は赤ワインのためのものです」との記載。えええ?これもしかしてワインの試験用紙?思わず無言で挙手してオリエンテーション用紙が間違えなくSAKEのものであるのかどうかを確かめてしまった。結果オリエンテーション用紙が書き間違えで中身に問題はなかった。
というちょっとしたハプニングの後で、まず論述試験が始まった。マスクははずすなとのことだった。
■完全にヤマをはずされた論述試験
問題冊子(といってもA3の1枚紙を折ってA4にしたもの)を開くと200文字のマス目でできた解答欄がふたつあり、それぞれの解答欄の上に問題が印刷されていた。
1.生産地としての奈良県について200文字以内で述べなさい。
2.球磨焼酎に合う料理を地方性を考慮して理由とともに200文字以内で述べなさい。
問題を読んだ瞬間に「やられた、お手上げだ」と、「今年は良い問題だな」という感想が同時に頭に浮かんだ。
「良い問題だな」と思ったのはいわゆる基礎知識を問う問題ではなくて産地とペアリングの問題が出たことで、お酒をサービスする立場としての知識が問われたことだ。どうせなら問題を解いて少しためになったという気分になれるほうが良い。
「やられた」のは完全にノーマークの範囲から問題が出たためだ。自分は一次試験は2019年に合格しているから、知識の詰め込みは2019年の教本に基づいている。2020年の教本では生産地(都道府県)の記述が増加していたことは知っていたが、過去の出題傾向から地方性について問う問題は出ないだろうということで捨てていた。それでも一応静岡と愛知については最近良いお酒が次々出ていることを知っていたから、主に歴史的な部分を軽く頭に入れていた。しかし奈良は自分にとっての生産地としての印象が薄いこともあり、ノーマーク、読んでもいなかった。
また教本のペアリングがかなり漠然としていて、CBT試験の内容以上のペアリングの問題は出ないであろうと考えて、これも出たとこ勝負のつもりでいた。
焼酎も蒸留方法でカブト式とツブロ式が図解されていたのでこれは軽く頭に入れていた。しかし焼酎のペアリングについては、全く事前準備していなかった。後日2020年の教本を再読したら焼酎のペアリングもしっかり出ていた。
そんなわけでしばし「くまり果てて」しまったわけなのであるが。論述試験はまず文字数を稼ぐこと。かする程度でもいいから関連することを制限数ぎりぎりまで書くことに尽きる。ヤマレコで自分以外の読者にとっては無意味な長い感想文を書いてばかりている自分は文字数の水増しには自信がある。自信がなくてもとにかく書いた。2題とも200文字完全に埋めた。以下、「これよその話だよな」とわかっていながら書きいているところもあるので、覚えないように気をつけられたし。
奈良県についての知識は、非常に幸運なことに「僧坊酒」「菩提酛」「正暦寺」というキーワードは論述対策としてインプットしてあった。これだけで攻めるしかないし、200文字ならこれだけあれば何とかなる。
奈良県では味噌(味噌の噌がつちへんだったか、くちへんだったかで迷った)などの発酵食品が古くから正暦寺などの寺院を中心に発展し、日本酒は僧坊酒とも呼ばれていた。古代には菩提酛と呼ばれる醸造法が開発されていた。菩提酛とは生米に蒸米を入れて発酵させ、発酵後に生米を蒸して発酵によって生じた水酛とともに発酵させるという醸造法である。
この方法は時代とともに廃れてしまったが、現在地元の酒蔵と正暦寺が協力して菩提酛について復活させ、地域性をアピールしている、、、、と書きなぐった。
球磨地方の料理はまるで頭に思い浮かばない。そういえば、虎ノ門にある「日本の酒情報館」(ここ試飲もできて実に良い場所だが、平日しか開いていないのが惜しい)では球磨焼酎の紹介動画がよく流れていた。地元料理との相性がいいところを地元民の晩酌シーンと一緒に紹介されるというところまで記憶している。
しかし、そこで何を食べていたかが思い出されない。人の顔が浮かんでも名前がどうしても思い出せないときのようなもどかしい状態である。何かおでんのような、甘く味付けされていた練り物の料理だった気がするのだが、球磨でさつま揚げと書くと地方性が露骨に無視されている。仕方がないのでそうした料理をでっち上げるしかない。あと焼酎のべたつかず、すっきりした飲み心地は肉料理との相性がよいだろうから、肉料理を何か入れることにした。
結局、球磨焼酎が何か書いて、後は我田引水した。熊本県人吉市の米と水で作った、米香の香るきれいな焼酎で、甘口に仕上げられた煮物などと一緒に飲むと、ご飯を食べているような気分になる。また焼酎が持つドライさは脂っこさを流す働きがあって煮豚などと一緒に飲むと、口の中が爽やかになる、などと書いた。書きながら、豚肉料理といえば泡盛だろうと思ったが、ここは文字数を稼ぐことが最優先だった。白旗を揚げるわけにはいかない。
予備校の模試では(模試まであるのだ!)は論述で20分の間に400文字1題と200文字1題の600文字も書かされた(そのときは先生は鬼畜だと思った)。それに比べれば20分で400文字はまだましである。時間的には余裕があった。駆け抜け、もとい書き抜けたらもう推敲している余裕はない。時間は少々余ったけれども、見直しは諦めて、ひたすら目の前の飲料を凝視して外観を観察するうちに試験時間終了となった。
■テイスティング、そしていろいろな意味での2019年の再来
5分間のインターバルで論述の答案用紙が回収され、テイスティングの試験が始まった。5分で開場の100人以上の答案用紙を集め、枚数チェックをする試験監督はかなりあわただしいと思った。
まず日本酒4点について外観をマークした。シャンデリアの黄色い光線で色調を見取ることは難しいのであるが、迷っていてもしょうがないので淡色系は透明感のある淡いクリスタル・シルバー、色付き系は透明感のあるやや淡いゴールド・イエローとした。お酒と一つ一つ向き合うという点ではもっと概観を語るべきなのだろうが、今日は試験なのでただただこなしていった。
まず一口水を飲んで口の中をフラットにした。緊張すると口の中が乾く。口の中が乾くと一杯目のお酒が飛び切りおいしく、甘みを強く感じてしまうからだ。ただ人によってはチェイサーは逆に一杯目の感覚を損ねる(薄める)のでよくないとも言う。
フラットになった口で飲料1,2,4、をごくわずか、ティースプーン一杯ほど飲んで、各飲料の大まかなキャラクターを探った。淡色系を一気に比較することによってそれぞれの差異がはっきりしてくるので設問や特定名称の解答が容易になる。特にアル添やセルレニン耐性酵母の見立ては、単独の味わいだけで判断するよりもやりやすい。飲料3は外観から熟成の入った芳醇系であることはほぼ間違えないので後回しにした。
第一感での見たては次のようになった。
1、ふつうの米系
2、恐らくセルレニンで米系
4、アル添
おっと試験対策的には設問を読んでおかなければならない。早くも2019の失敗を繰り返している。2019年は4種類の日本酒全部のテイスティングコメントをマークしてから設問を読んでしまい、山田錦とセルレニン耐性酵母がそれぞれ2個あることを知り、用語選択の組み立てを大幅に変えなければならず、時間が不足してしまった。今年も同じ落とし穴に落ちそうになったが、何とか回避した。
設問は次の通り:
1.山田錦を使った日本酒を2個選びなさい。
2.アルコール添加した日本酒を1個選びなさい。
3.セルレニン耐性酵母を使った日本酒を1個選びなさい。
4.生もと系酒母を使った日本酒を1個選びなさい。
設問から4種類の飲料にどのような特徴の日本酒が何個あるかがわかるから、大きなヒントになる。幸いにも今年は見立てと設問の個数は一致した。この時点で設問2、3は答えられた。更に1、2、4番の飲料は酸が優しく、生酛系でないことは明らかだから消去法で自動的に3番が生酛になるから、設問4は3番を飲まなくても答えられた(一般的には、熟成が入っていても生酛作りとは限らないので注意)。
あとは山田錦はどれとどれかである。これは少し注意が必要だ。最初の見立てでアル添の4番はアフターが軽快だから、五百万石、美山錦、出羽燦々あたりだろう(註:アフターの軽快さはアル添の特徴でもあるので要注意だが、筆者のべろメータはアル添はむしろアタックにおける「淡さ」(米感の軽さ)で感じている。我流である)。
今年の山田錦を探す自分の基準は酒への米の溶け具合と事前に決めていた。2番の飲料は米の溶け具合が著しく、芳醇、濃厚と言いたくなるほどであったから、速攻で山田錦に決定した。晩生の酒米(山田錦、雄町)は米がよく溶けるとされている。自分のべろメータでは、米感が強くてハーバルなのは山田錦、ミネラルなアフターなのは雄町ということに決めておいた。作りの影響がすごく強いのが日本酒だからこれで押し切れるとは思えない。試験で迷いを作らないための物差しである。
あとは1か3である。3は熟成が入っている時点で芳醇な味わいになるのだが、どのような味だろうと、この段階でようやくファーストアタックした、、、。予想通り芳醇で熟成感があるけれどキレがある。これは五百万石だよなあ。ここで1番の飲料に戻ると、2ほどではないが、3に比べれば明らかに米が溶けている。ということは山田錦は1番、2番か、、、えっ?
迷った。これって2019年の再現にほぼ等しい。2019年は以下の通り
1 純米吟醸酒 山田錦
2 純米大吟醸酒 山田錦 セルレニン耐性酵母
3 純米酒 五百万石、山廃
4 吟醸酒 出羽燦々 セルレニン耐性酵母、アル添
飲料の配置が2019年とほとんど同じではないか。もしかして自分は2019年のテイスティングを引きずっているだけなのではないかと思ってしまった。今年は「菊姫」(山田錦の山廃)で来るかなと思っていたので余計に困惑した。しかし自分の五感に従う限り、今見立てた以外の結論を見出すことができない。いやあな感じが拭い去れないが、最後は自らの五感と物差しを信じるしかない。そのために一年間修行してきたのだから、ぶれない。
次いで、4、1、2、3の順に、それぞれ、味わい、香り、特定名称の順にコメントをマークしていった。答案用紙は外観、香り、味わい、特定名称酒の順だが、簡単に埋まるものから埋めていくのが自分の流儀だ。自分はワインも含めて醸造酒はグラスの香りを取るだけでは特徴をつかめない。口に含まないと微妙な特徴を探ることができないので、まず口に含んで香りを感じながらすぐに答えを出せる味わいを先にマークしてしまうのだ。そのあとで余韻も含めて香りの特徴を選択することに決めていた。
行ったり来たりするので書き忘れがあるという大きな危険はあるので要注意。時間配分が余計重要になるやり方だ。飲料の並んだ順と異なる順番でテイスティングしていったのは軽いものから複雑なものへと進みたかったからだ。軽い白から重い赤へとという、ワインを飲む順番と一緒である。
味わいと香りの特徴はラスト一週間でまとめた「やり方」にそって、全体的な香りの第一印象から大まかなグループ分けをして、感じられても感じられなくてもこのグループにはこの香りの要素、味わいの特徴を必ず入れるという試験対策限定の手法を取った。迷わないからマークはものすごく速い。特に今年は塗り絵も練習している。一段と速い。最終的に特徴から自動的に導かれる特定名称酒を書き込んだ。
4番はアル添ドライだから粉、石灰、グリーンノート、アル添の特別本醸造(米は聞いてないけど出羽燦々とか五百万石とか)
1番は普通の純米系だから、米とグリーンノートと石灰、山田錦の純米
2番は華やかなセルレニン純米大吟醸だから米と果物、山田錦の純米大吟醸
3番は熟成生酛系だから乳酸飲料系と熟成系、生酛の純米(米は聞いてないけどたぶん五百万石)
これで日本酒のテイスティングは完了したのでマークの個数をチェックした。マークすべき特徴の個数がアイテムによって異なる場合があるので要注意である。個数をチェックすると、香りの第一印象(註)の個数が1個となっている。自分はいつもの癖で香りの第一印象を2個マークしている(註)。しまった。2019年に続いてまたやってしまった。
というわけであわててひとつずつ消していった。時間にゆとりがなかったらこういうところですごくあせって余計なマークまで消してしまうのだがそれは大丈夫。落ち着いて対応した。
(註:香りの第一印象と書いたが、色調だったかもしれない。時間がたって忘れてしまった。ただ、1個しかマークしてはいけないところにすべて2個マークしていたことに気がついてあわてて直したことは確か)
試験監督:「残り10分です」のアナウンス。焼酎をアタックしよう。昨年は焼酎手付かずのままで残り3分、それも日本酒の見直しができないままでの残り3分だったことを思い出すと、ずいぶんと余裕がある。
■かなり迷った焼酎
焼酎は口に含まなくても大概はわかるつもりでいたが、今年の本番は自信がなかった。
まず5番の香りを取った。米の強い香り(タイ米の香り)が感じられたから泡盛とした。
次いで6番。香りはしない。いわゆる難しい系の焼酎だろうか。口に入れるとアルコールがすごかった。30度かそれ以上ではないか。自分は酒飲みで強い酒慣れしている。焼酎も実際の度数より5度くらい低く見積もってしまうから、もしかしてこの焼酎は40度もあるのか?一方、味わいは上品なお団子を頂いた後のような気持ちの良いお米の包容感と、わずかだが吟醸酒のようなアフターを感じた。恐らく米焼酎だろう。
しかし米焼酎で度数30から40度ってあまりない。さらに5番が泡盛で6番が米では材料は米米となる。出題としては偏りがあるから不自然さを感じた。ここで再度5番へ戻ってみてひとくち飲んだ。アフターの切れ味は麦っぽさを感じるものの、自分の鼻は泡盛だと言っている。このように自信がないときには第一印象で勝負しよう。書き直してはずしたら書き直さずにはずすよりも悔いが残る。というわけで焼酎の見たては次のようになった。設問は材料と常圧蒸留/減圧蒸留の別を問うものだった。
5番は独特の香りがあり、香りのパンチが効いてるから常圧蒸留の泡盛
6番は味わいが米で香りが吟醸香を想像させる上品なものだから減圧蒸留の米焼酎
■最終チェックでプチドラマがあった
昨年は焼酎に取り掛かった時点で残り3分だったが、今年は時間が十分に余った。名前と受験番号の確認のマーク(受験番号と氏名が間違って印刷されていないことを確認しましたよというマークがひとつある。昨年はこれをきちんとマークしたか記憶していない)を忘れていないか、日本酒のテイスティングコメントで、香りの特徴を8個書くところを9個書いていないか、7個で書き足りなくないかなどと、塗り間違えをチェック、、、えええ?
日本酒の3番は香りの特徴を10個書くのかよ!?これもいつもの癖で8個しか書いていない。あぶないあぶない。3番は生酛で熟成が入っていて複雑だからさまざまな特徴を書き込めるので、むしろどれを選ぶのをやめるかが悩ましいところであった。しょうゆ、カラメル、発酵バターなども入れたいところだったがちょっと控えめに月桂樹の葉としいたけにした。
■つるべ落としの秋の午後の日差しを浴びて
何とか現時点でやれることは悔いなくやったかなという気持ちで、テイスティングの順番と同じ順番で飲料を飲み干していった。どれもいいお酒だ。アル添酒だってすっきりした口当たりでむしろ料理には合わせやすい。
晩酌モードに入って間もなく試験終了のアナウンス。答案用紙の回収を待って、焼酎2個にアタック。6番の焼酎はかなりパワフルだが、味は上品。アフターは柔らかで心地よい。偉大なお酒に感謝して頂いた。お水も全部頂いた。これでグラスの片付けへの貢献もしたことになる。
試験会場の目黒雅叙園を出たのは午後3時半ごろ。昨年同様に秋の午後の柔らかい日差しを背中に受け、良い気持ちになりながら目黒駅への急登を歩いた。昨年同様目蒲線に乗車して奥沢で途中下車した。ホームの午後の乾いた日差しは1年前に戻ったような感覚さえあった。
母校に試験内容の報告に向かったら、ワイン組(午前中はワインエキスパート、ソムリエ)が飲みながら感想戦の最中であった。
そして5時にソムリエ協会のウェブサイトに飲料の銘柄が公開された。
ソムリエ
1 2018年 フランス Sauvignon
2 2016年 日本 Chardonnay
3 2017年 イタリア Nebbiolo
4 ホワイト・ポート
5 ウォッカ
ワインエキスパート
1 2019年 アルゼンチン Torrontés
2 2018年 フランス Chardonnay
3 2018年 フランス Cabernet Franc
4 2018年 ニュージーランド Pinot Noir
5 ラム
SAKE DIPLOMA
1 特別純米酒 山田錦
2 純米大吟醸酒 山田錦
3 純米酒 五百万石 他
4 特別本醸造酒 五百万石 他
5 麦しょうちゅう 常圧蒸留
6 米しょうちゅう 減圧蒸留
ううむ、5番の焼酎は麦だったか。
■結果発表
日本の酒浸りの日々から、またぶどう酒に帰ってきた。ぶどう酒の鼻はすっかり鈍ってしまった。テイスティングは記憶である。記憶力は年とともに衰える。12アイテムやって品種が当たったのは1アイテムとか、そもそもどんな品種があったかということが頭から抜け落ちていた。
ワインのトレーニングに返ると、日本酒の舌と鼻がずれてしまって、まろやかなとてつもない凝縮感の山田錦の生酛作りが妙にハーブのニュアンスを強く感じたりするのは残念なことだった。ワインは木の実から、清酒は草の実である米から作るから両者を比較すると日本酒が草っぽく捉えられることは自然かもしれないが。
ワインの呼称資格試験は10月21日の水曜日には発表になった。師匠は当然のごとくソムリエ2次合格。新天地でのご活躍を祈った。
このようにわき道にそれるのは、結果に関して落ち着かない気持ちになることの裏返しだ。発表当日まではワインのテイスティング、シラーの胡椒の香りを捉えるトレーニングに逃げ込んでいたものの、発表当日になるとやはり落ち着かなくなってきた。論述の出来はともかくテイスティングはまずまずの出来だから、合格ラインではないかと思うものの、去年のことがあるからぜんぜん安心できない。
今回合格できないと何か構造的に駄目なことがあるのかもしれない。どうしようどうしようどうしよう。別に進路に直結するものでもないから気楽でいいのだが、どきどきすることには変わらない。
発表は午後5時だった。帰宅前に確かめると叫びそうだったからじっと我慢して定時後早々に帰宅し、ソムリエ協会のウェブサイトを見た。SAKE DIPLOMA合格者速報のリンクが掲示されていた。リンクをたどり、そしてタ行を選択するといきなり画面にtakahashisunの名前と間違えなく自分の受験番号が飛び込んできた。
あっけなくてほっとして、そして少したってガッツポーズYeeeeeeeeessssss!!!今夜は日本酒でお祝いだ。しかしその前に次の山登りに必要な体力維持のジョギングに出かけよう。去年は見るのが怖くてジョギングを先にして、残念な結果に文字通り苦杯(甲州には独自の苦味がある)をなめたのだったが、今夜はとぼとぼ走りながら喜びをかみ締めることができた。
祝杯は母校の先生がお勤めの酒店から購入して、結果発表後に飲むと決めていた久野九平治本店「黒田庄町田高(くろだしょうちょう たこう)」2018年ヴィンテージ。開けようとして初めてコルク栓であることに気がついた。不覚にも途中でコルクを折ってしまったが何とか無事に抜栓成功した。微発泡、米がよく溶けていて、米で造っているワインを飲んでいるような気分だった。あくまでたとえだが、仕込み水なし米が液体になって酒になったような凝縮感だ。しかしどろどろしているわけではない。無色透明といってもいいくらいに澄んで滑らかだった。
BGMは二次試験直後に目黒駅の出店で買ったケンプのベートーベン3大ピアノソナタ。若いころはピアノ曲はべたついて退屈、特にベートーベンはあの肖像画が頭に浮かんできて頭痛が出そうだったが、何故だかヘビーローテーションになっている。発表当日も、朝に夕に3度も4度もかけた。音の粒がそろっていて心地よい。
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