ヨルダン Wadi Rum

- GPS
- 80:00
- 距離
- 3.2km
- 登り
- 316m
- 下り
- 291m
天候 | 4日とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
飛行機
飛行機エミレーツで行きは成田から帰りは羽田 10万くらい ペトラ遺跡で有名なWadi Musaから1日1本朝6:30発のバス |
その他周辺情報 | 海外旅行保険はカード付帯×2 しかしこれにはロープを使うような運動は含まれないので別途加入。今回は労山基金。 |
写真
感想
なんかすごい所に来てしまったな。
ここに着いた時の最初の印象だった。
何歳になっても治らない放浪癖。
今回、会社から長期休暇をもらってヨルダンはWadi Rumと言う砂漠地帯に訪れた。
昔、どこかの本屋の何かの写真集で見てからいつか行ってみたいと思っていた場所だ。
調べてみたら、どうやらクライミングで有名らしい。上手くやればもしかして出来るんじゃないか?そう考えたのがこの旅の始まりだった。
だが、日本語の情報が少なく、情報集めにかなり苦労した。
出発前に事前に集めた情報と、実際に現地で手に入れた情報を下記に雑記と感想と共にまとめました。
自分自身フレッシュな記憶の内に記録しておきたいし、帰りの飛行機の時間が有り余った中で書いたのでちょっと長めになってしまいましたが。。
本当に素晴らしい場所だったので沢山の人達に訪れて欲しいと思います。
Wadi Rumとは
ヨルダン南部に広がる広大な砂漠地帯で、壮大な絶壁を持つ岩がそこかしこに乱立し、国から保護されているためあまり人の手が入らず古代からほぼ変わらない景色が保たれている場所である。
保護区内に入るにはまず入口にあるビジターセンターで5JD(約750円)払う必要がある。
この保護区内の岩に様々なトラッドやマルチ、シングルピッチのスポートルートが存在している。
中には600m以上のビッグウォールも。
プロモーションビデオはこんな感じ。
https://vimeo.com/253962268
そこに私は4日間滞在して、1日目はヨルダン最高峰のJebel Um Addamiの登頂、その他の3日間はシングルピッチのスポートルートのフリークライミングをして過ごした。
ひとり旅だったので現地ガイドを雇ってビレイしてもらった。
参考にしたトポはこちら
https://www.thecrag.com/climbing/jordan/wadi-rum
今回はヨルダンでsimカードを購入したが、現地は砂漠なので電波なし。念の為1ページずつスクショして持っていって良かった。
マルチとかトラッドをする場合はこっちの開拓者が書いた本がおすすめらしい。
https://www.cicerone.co.uk/treks-and-climbs-in-wadi-rum-jordan-fourth
ちなみにWadi Rum保護区内で商売をして良いのは保護区内で生まれたベドウィンのザラビ族と言う部族のみらしい。
私が4日間ともに過ごしたガイドもザラビ族で、名前はSuleman、発音はスレイマン。愛車はトヨタランドクルーザー(89年製)
彼が言うにはネット上には真贋含めWadi Rumのツアー会社は100社程あるらしい。
保護区外のツアー会社は偽物らしいので要注意。
出発前、私には真贋の区別は付かなかったので、「今度Wadi Rum保護区内でショートのスポートルートのクライミングやりたいんだけど、ひとりで行っても大丈夫ですか?」的な文言のメールを英語版地球の歩き方lonely planetに掲載されているWadi Rumのツアー会社に片っ端から送った。
返信がなかったり、そう言った事は出来ませんと言った会社がほとんどだったが、1社だけ「ウチでは出来ないけど、フリーランスのガイドだったら紹介するよ。」
と言ってくれた会社に紹介されたのがスレイマン。
やりたい事と料金を事前にwhatsappでやりとりした所、you will be all ok.とか言ってきたので、本当かな?なんかこの人調子いいな。と思いつつ他に頼る所もなかったので彼に任せる事に。
料金は宿と3食、移動手段の4WDにクライミング中のビレイで1DAY/100JD(約15000円)。
気持ち良く働いてもらいたかったので相場より少し高めに提示した。心良くオッケーしてくれたが、終わってみるとかなり安かったなと思った。
それほど素晴らしい体験が出来た。
スレイマンはお調子者だがかなり良いやつ。
岩場について
35km×25kmくらいの範囲の中に様々な岩場がある。写真では伝わらないかもしれないがとにかく赤みを帯びた岩の迫力がすごい。
岩質は砂岩。フリクションバッチリだけど、脆かった。
岩場間の移動は歩いてでも行けるが、何時間とかかる事もあるので、もし仲間と行っても4WDを持っているガイドは雇った方が良いなと思った。おもしろいし。
日本から持っていった装備はハーネス、チョークバッグ、シューズにガチャ、クイックドローは8個。ロープとヘルメットはガイド提供。
クイックドロー足りない分も貸してくれた。
20m〜35mのルートが多く、自分の持ってる60mロープだと足りない所もあったので日本に置いてきて良かった。
1日目
朝、Wadi Rumに到着しスレイマンに挨拶する。到着時間をあらかじめ伝えておいたのでバス停までランクルで迎えに来てくれていた。
砂漠の中にある彼の持ってるキャンプ場に移動して荷物を置いてすぐにヨルダン最高峰のUm Addami(標高1854m)を登りに行く。
前日からスレイマンがガイドをしているドイツ人カップルと一緒だった。
登山口までの道のりの景色に圧倒される。
登頂自体は簡単。ちょっと岩っぽく3点支持で登る箇所もあるが、普段からハイキングとかしてる人なら苦もなく登れると思う。
頂上でのランチタイム含めて往復で3時間ほど。
下山後はスレイマンのトヨタランドクルーザーで砂漠内を爆走したり、テスト!と言われちょっとした岩をボルダリングしたり、高さ100m程の小岩を登ってサンセットを見たりして過ごした。
夜はキャンプサイトで様々な国からの観光客と共に焚き火を囲んで過ごす。
星がものすごい綺麗だった。今まで色々な場所でこれ以上ないだろってくらい綺麗な星空を見たが、アンドロメダ銀河を肉眼であんなにはっきり見たのは初めてだった。
空気が乾燥してるから綺麗なのかな。
2日目
Jebel M’zeygehと言う岩場。
この岩場はスレイマン曰く15ルートくらいあるらしい。
中間支点は全てケミカル(成分までは分からないが)で終了点も必ず2箇所以上から支点が取られていた。
初の海外クライミングで、緊張していたし、最初はトップロープがいいな〜なんて思っていたら、スレイマンがyou do it!と言ってリードを進めてきた。
最初の壁はグレードが5aだったし、ピン間も問題なさそうで、オブザベしたら簡単に登れそうな感じなのでやってみる事に。
リードクライミングの方法と掛け替えの方法2パターンをスレイマンに聞かれ、お互い確認しあってからスタート。
緊張して体が上手く動いてないのが自分でもわかったが、だんだん高度が上がり、初めてみる壮大な景色を眺めていると、いま、最高にワクワクする事をしているぞ、自分は!とテンションがググと上がってきた。
岩場に着く前に、絶対落ちたくないからグレードは6a以下しか登らないからね、と伝えておいたので勧められるルートは全て6a以下のルートだった。
あと、もし腕パンプしたらテンション!って言うからその時はロープ張ってね。と言ったら「テンション」と言う言葉の響きが気に入ったらしく「タンション?タァンション!」と連呼していた。
知っている日本語を並べて、「タンション、ラクダ〜、アリガァトゥ〜」と歌っていた。
この日は8本登った。全てマスターで登ったので終わった時にはけっこう消耗してる感があった。
でも全部オンサイト!よっしゃー
夜はキャンプサイトで焚き火してまったり過ごす。
3日目
Um Ghathaと言う岩場。
ここにはスレイマンのイチオシのクラックルートがあり、「今日の最後にやろうぜ。」と言われる。
この日は合計6本登った。
いつの間にか、まず私がリードで登ってトップロープを張り、スレイマンがトップロープで安全に楽しむと言う構図が出来上がっており、あれ?逆じゃね?って思ったけどリードで登りたかったからまあいいかとなる。
5本登って適度な疲労感と満足感があり、今日はもういいかなって思ってたら最後のアレ行こう。とスレイマン。
トポ良く見たらグレードが6a+。
6a以下しかやらないって言ったじゃん。それにクラックルートとかやった事ないし回収出来なかったら嫌だし、疲れてるからもう終わりでいいよ。と言ったけど、you do it!って3回くらい言われたので、じゃあスレイマンのヌンチャク貸してくれるんだったらやるよ!となりやってみる事に。
あんまり乗り気じゃなかったがやってみるとコレがなかなか。
滞在中、一番シビれるルートだった。
途中でモジモジしてたらスレイマンが下から登り方を叫んでくれて、かなりハアハア言いながら何とかFL。達成感も滞在中一番のルートだった。
終了点でセルフ取って掛け替えしてたら、ちょっと待って!写真撮るから!と沢山写真撮ってくれた。
下に降りたらスレイマンが初めてハイタッチしてくれて、you good!!と、なんかすごい嬉しそうにしてくれた。
お気に入りの言葉のタンションも「タンション〜タンション〜!」と連呼していた。
なんかここに来て初めて分かり合えた気がした。
この日は時間があったので色々な話をしてくれた。
ヨルダンと言う国の事、日に日に悪化する中東情勢の事、リビア、シリア、イラク、イエメン、スーダン、内戦が続く周辺の国からの難民をヨルダンが受け入れている事、彼らがWadi Rum内でも働いている事、お互いの家族について、仕事について。
英語が苦手な自分は上手く理解出来ずに何回も聞き直したが根気良く話をしてくれた。
彼は現在36歳でこのWadi Rumで生まれ育ち20年ガイドをしているらしい。
Wadi Rumには3000人ほどが住んでおり、公職(教師とか警察官とか)以外の大人は大体ガイドをしているみたい。
彼らは観光客から、砂漠の民ベドウィンとか呼ばれている。
スレイマンはフリーランスなので求められれば基本何でもするらしい。
ちなみにクライミングのガイドが出来るベドウィンは村には5人くらいしかいないと言っていた。
日本人にロッククライミングのガイドをしたのは私で2回目だとか。
最初の人は5年前で、アラビア語の勉強の為にエジプトに住んでいる日本人だったそうだ。
Wadi Rumにクライミングをしにくる外国人はヨーロッパ系が多く、スポートルートのボルトを打ったのも、ほとんどフランス人かギリシャ人だと言っていた。
クライミングと言うとなんとなくアメリカのイメージが強い私は、国民の半分以上が中東戦争の時のパレスチナ難民をルーツに持つ国にはアメリカ人はあんまり来ないんだろうな、と思い、アメリカ人は来るの?と聞いてみたら、
「Yeah! 以前、アレクサンドルが来たよ!知ってるでしょ?」
「誰それ」
「ロープとか使わないでビッグウォール登る人だよ」
「あーハイハイ!」
と著名なアメリカ人クライマーも訪れている模様。
Wadi Rumにクライミング目的で訪れる人達はヨルダンに1週間ほど滞在して、5日間クライミング、2日間は紅海に面した近くの港街に移動してダイビングする人達が多いらしい。
ガチクライマーは3〜4週間ほど登り込むようだが。
私の滞在中にはひとりも他のクライマーに会わなかったが、ハイシーズンは2〜4月らしい。今旅中では日中は暖かく、18℃まで上がる時があったが、夜は1℃まで気温が下がった。
ベドウィンのガイドには大きいツアー会社に雇われている人も多く、そっちの方が収入は良いそうだ。たしかに砂漠内ですれ違う他の会社の車はピカピカのトヨタのピックアップトラックとかだった。
じゃ、子供3人もいるなら雇われの方が良いんじゃない?何故フリーランスでやってるの?って聞いたら
「I like freedom」
ってなんか心に突き刺さる言葉が返って来ました。
彼はシングルピッチのスポートルート専門らしく、マルチとかトラッドやりたいなら首都のアンマンにいるヨルダン人プロクライマーを紹介するよ。ただしセカンドオンリーだけどね。とも言ってくれた。
この日も同じキャンプサイトでその日に居会わせた人々で焚き火を囲みつつ星空を眺めて過ごす。
4日目
この日はトポに乗ってない岩場へ行く。
それなりに疲労が溜まってる感じがしたので昼寝したり登ったり、ゆっくりと過ごす。
途中、スレイマンの愛車がエンストし、エンジンがかからなくなった。
私も少しならエンジンの知識があったので、あーじゃないこーじゃない言いながら2人で直す。スレイマンのトヨタランドクルーザー(89年製)に対する愛はかなりアツく、聞いてもないのにずーっと愛車について語っていた。たしかに砂漠が似合う、味のあるカッコ良い車だと思う。
いつもはお昼は弁当的なものをくれるが、今日は最終日だからと手作りのパンをその場でこねて、焚き火で焼いてくれた。
どこまでも続く砂漠と、流れて行く雲を見ながらそれを食す。最高だった。
この日は合計4本登った。
3本目の35mの長めのルートが印象的だった。1ピン目掛けてからのヒールでちょっとしたハングを越えるところがミウラー、中間部のクラックをレイバックで処理する所が帰還兵、滑らかな上部のスラブ滞がメンタル核心のソラマメ、それぞれのセクションで、あれ?もしかして今までやって来た事がココに来て生きている!?と感じるルートだった。
3日間やって、手足の指先がけっこう痛くなっていたので今日は3本で終わりでいいかな〜と思ったけど、またyou do it!って言われたので、中々来られる様な所じゃないし、最後にやるか!、と4本目をトライ。
あれ?なんかコレ難しくない?
ここの岩場はルートの下の岩にチョークで誰かが登ったあとの感じたグレードが書いてあって、6aに見えたけど、あとで降りたあと確認したら、うす〜く6b+って書いてあった。
登っている途中、これは無理だと思い、滞在中で初めてテンションコール。
まー、スレイマン大喜び。
「タンション!タンション!タンション〜!」と大騒ぎして少々イラっとしたが、楽しかったからまあ良しとする。
その後はA0祭りでトップアウト。
限界グレードの挑戦はやらなかったけど、3日間で心身共に出し切った感が有り、大満足だった。
この日は早めに上がったのでラクダでの送迎で色々寄り道しつつキャンプ場へ戻った。
そして再び夜は焚き火で過ごす。
私は4夜同じキャンプ場で過ごしたが、他の観光客は大体1泊して去って行くので代わる代わる様々な国の人が来ていた。
毎夜共通していておもしろいのが、ディナーを取った後は誰も何も言ってないのに、まるで示し合わせた様に自然と焚き火を囲い始める。
そして最初は各々自由に談笑するが、その内に、ひとりも喋らず、木の爆ぜる音を聴きながら、黙って炎を見つめている静かな時間が必ず発生する。人種国籍関係なく、4夜とも必ずだった。
やっぱ火って人間の根本的な所を打つ力があるんだろうなと感じた。
5日目
朝、別の街に行く為、スレイマンにバス停まで送ってもらう。
会った時はずいぶん調子良い奴だな〜って思ってたけど、一緒に過ごす内に彼の優しさとか深い考えとか生き方だとかを尊敬出来るようになった。
毎旅思うけどイスラム圏の人々は芯が暖かい人が多い。今度は友達とおいでね!と言ってくれた。
別れ際に「レビューでスレイマンはクレイジーでした。って書いてくれよ。そうすれば自分は楽が出来るからさ。」と最後まで笑わせてくれた。
楽しかったよ。ありがとう。
私自身、旅は昔から続けていて、ひとり旅を楽しむ為のノウハウなどはあるが、今回のように情報の少ない(英語なら沢山あるが)場所で、やった事のない海外クライミングをするのは私にとってはそれなりに挑戦だった。
上手く行くか不安だった所もあったが結果的に大満足出来た。
会に入って学ばせていただいたクライミングの技術と、自分が今まで培った旅の技術が合わさって上手くいった様に思えてとても嬉しかった。
ひとりでも楽しかったが次行く時は誰かと行きたい。
それまでにトラッドやマルチを自信持って楽しめるくらいになるまではクライミング技術も上げたい。練習せねば。
有名な観光地を巡るだけの旅ではなく「登山」と言う目的がある事によって、1つの場所にに長めに滞在し、その土地の人々や文化を体験することが出来るし、それ自体がコミュニケーションツールにもなる。
しみじみと素晴らしい趣味だなぁと感じた。
これからもずっと登山を続けて行きたいと思う。
また、一生忘れられない経験がひとつ増えた。良い山行でした。
コメント
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初めまして!
うちの会にこんか方がいたなんて!?
感想読んでいて物凄いワクワクさせて頂きました!
私も海外旅行が好きでした!
いつか会った時に海外旅行の話を聞かせてください!!
はじめまして。ありがとうございます!
今年度、入会しました。
mjunさんのお噂はよく伺っております。
こちらこそ色々お話しお聞かせください!
山もお時間合えば是非ご一緒させていただきたいです。よろしくお願いいたします。
写真拝見していて、すごく行ってみたくなりました。
あんな景色の中でクライミングなんて
スレイマンさんの笑顔の写真もすてきです。
ワディラムは欧米のクライミング界ではわりとメジャーみたいですね。ネットで検索すると結構ヒットしました。最近はスターウォーズのロケも行われたとか?
でも日本から一人で行ったなんてすごいです。しかも初海外クライミング。
焚火でチャイ!いいなー。焚火好きなのはチャイ飲みたいからでしょうか?
中4日過ごされたようですが、トータルでどのくらい日数がかかったのですか?
そもそもヨルダンってどうやっていくんでしょう。。。
来年もまたどこか海外クライミングいかれるのでしょうね
海外高所登山というのもありますけど、クライミングは滞在型だから、現地の雰囲気をたっぷり味わえて、旅行好きには魅力的ですよね。
maamさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
そうですね、チャイを飲むために火を付ける感じです。
ヨルダンへは日本からの直行便は出ていないみたいなので、どこかで乗り換えをする必要があります。私の場合はドバイでした。
10日間の滞在中に4日間クライミングをして、残りはその他の町を観光しました。
とても良い所でした。ヨーロッパからは距離が近いので沢山の観光客が訪れています。
おすすめですよ〜
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