ネバド・デル・トリマ 5215m (Nevado del Tolima, Colombia)

- GPS
- 80:00
- 距離
- 55.7km
- 登り
- 4,170m
- 下り
- 4,162m
コースタイム
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:40
- 山行
- 8:20
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 8:30
- 山行
- 12:40
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 12:50
- 山行
- 6:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:00
天候 | 12/31 晴れ 1/1 晴れのち曇り 1/2 快晴 1/3 曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年12月の天気図 |
アクセス | サレントからココラ渓谷(トレイルヘッド)まで車で20分ほど。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
高度なテクニックは不要の山だが、中二日の歩行距離が非常に長いので、体力が非常に必要。 高度的にはそれほどでもないが、上記のように距離が長く体力的にきついのと2日連続で1300m以上の標高差もあり、高山病の症状は出やすい。今回私はダイアモックスを利用しなかったが、頭痛の症状が出たのと、血中酸素濃度が下山中に50%を切って厳しい状態だった。ダイアモックスは積極的に服用すべきと思う。 |
その他周辺情報 | サレントには安くて良い宿がたくさんある。できれば数日滞在したい。また、近隣のフィランディアも風光明媚な所だとのこと。 |
写真
感想
コロンビアが安全に旅行できるようになったのはわずか10年くらい前からのことであり、したがって登山対象の山もまだ少ない。最高峰であるカリブ海沿いのクリストバル・コロン(5775m)は登れなくはないが、登山システムは無いに等しく、すべて自力で準備が必要で期間も2週間はかかるとのこと。比較的登山システムが出来上がっているのがコロンビア中央部のロス・ネバドス国立公園であり、その中でもネバド・デル・トリマ5215mが外国人に最もよく登られている山である。
トリマはロンリープラネットでも登山対象として紹介されている山で、欧米人には比較的人気である(日本人が登った記録はネットでは発見できなかったが…)。ふもとの街サレントには手配を行ってくれるエージェンシーがいくつかあるが、今回はCrested Outdoor(http://crestedoutdoors.com/)に依頼した。1ヵ月ほど前に偶然同行したいというドイツ人ステファンが現れ、ガイドのディエゴと合わせて3人でトリマに登ることとなった。ステファンと料金が折半できたのでとても助かった。
トリマは標高5000m以上は氷河で覆われていてロープアップするので、クランポン、ハーネス、ヘルメットなどが必要である(アクスは不要)が、これらはツアー料金に含まれており日本から持参する必要はない。持参するのは登山靴、スティック、冬用防寒着一式、サングラス程度で大丈夫だが、私は夜が寒いのを警戒して念のためシュラフも持って行った(山小屋には毛布が山ほどありこれも結果不要だった…)。行程はサレント発着で3泊4日。トリマの登頂は3日目だが、2日目に高度順応のため可能ならキンディオ4750mにも登る予定である。
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12/30(日) ツアー前日
コロンビア第2の都市メデジンからローカルバスでサレントに入った。コロンビアの山岳地帯は道路事情が悪い。あちこち崩れて工事が多く、7時間もかかってようやくサレントに到着した。もう真っ暗の夜8時だったので、バス停近くに宿を予約してあったので助かった。9時前にガイドのディエゴが宿にやってきて初顔合わせ。装備などをチェックしてOKをもらった。ディエゴは34歳とのこと。なかなかのナイスガイだ。
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12/31(月) 第1日目 晴れのち曇り
ココラ渓谷(2400m)〜ラ・アルヘンティナ(3450m)(6時間)
9時にドイツ人のステファンと合流し、手配車でココラ渓谷へと向かった。サレントから車で20分ほど。ココラ渓谷は山の急斜面に世界一背の高い種類のヤシの木が風車のように立ち並ぶ独特の景観。ここは大人気で午前中から観光客でごった返していた。共同装備と各自の装備をミュールにあずけ、軽い荷物で出発する。今日は6時間くらいの工程とのことなので気楽である。
前半は沢沿いの気持ちの良い雲霧林を行く。ときどき渡渉があるが、すべて橋が架かっており問題はない。時々ディエゴが植物の解説をしてくれる。彼は山の知識が凄く豊富で話も面白い。オーキッドの種類がいろいろあるのに驚いた。葉の下に花が咲く珍しい品種もあった。
やがて登山道は沢から離れ、標高2900mを超えると斜面のトラヴァースとなる。水の得にくい地帯に入ったのではないかと心配していたが、この山域は斜面を流れる枝沢が非常に多く、意外にも水が豊富だ。今まで登ったペルーやエクアドルでは無かったパターンで、コロンビア独特の湿潤な気候を思い知る。まるで日本のようだ。今日泊まるフィンカ(小屋)のラ・アルヘンティナも斜面に築かれた放牧地だったが、やはり付近を枝沢がいくつか走り、水の豊富な場所だった。
宿は隙間風がビュービューの凄まじい掘っ立て小屋だ。これらの放牧地やフィンカは100年以上前からあるというが、最近は登山者が増え、本業の牧畜ではなく登山者の宿で生計を立てているようだ。グロリアというおばさんが食事を賄ってくれるが、台所のまわりに座席があり、皿によそったそばから登山者はご飯を貰って食べることができる。食べた後はすぐに食器を渡して洗ってしまう。とても効率的なシステムだ。
この日はまだ標高も低く、高山病の症状もなく、快適に眠りについた。
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1/1(火) 第2日目 晴れのち曇り、強風
ラ・アルヘンティナ(3450m)〜キンディオ4750m〜ラ・プラヤ(3750m)
今日は出来れば高度順応のために4750mのキンディオに登ろう、でも疲れたら翌日に差し障るから、途中で進むか撤退するか判断しよう、と昨日3人で相談していた。が、ふたを開けてみるとディエゴは最初から登るつもりでガンガン進んでいった。ステファンと私は顔を見合わせ、まあ仕方ないか、、という感じでついてゆく。
今いる場所はコロンビアのキンディオ県(Quindio)であり、山の名前のキンディオは県名と同じである。キンディオは大きな古い火山で大きなクレータがあり、その直径は2キロとのことだ。今日はキンディオに登った後、そのクレータ底の湿地帯を抜けて下ってゆくコースだ。まずは外輪山まで標高をひたすら稼ぐが山が非常に大きく登っても登ってもまだ先があった。標高3800mを超えると高山帯になりパルムの木が林立する独特の景観になる。パルムは南米で見られるのはコロンビアとエクアドルだけでペルー以南にはないそうだ。これは南米というよりはむしろルウェンゾリやキリマンジャロで見たアフリカの景観に近い(あちらではロベリアとかセネシオとか呼んでいた)。ディエゴが言うにパルムは寒い高山帯にあるが、元来は熱帯由来の植物なので、赤道から外れると見られないとのことだ。
ヘロヘロに疲れてようやく外輪山の縁に立ったのはもう正午すぎだった。すでに5時間以上も歩いている。風が非常に強く寒いが、キンディオの山頂はもうすぐなので頑張って進む。ベージュ色の火山灰の急斜面をあえいで登ると何もない山頂だった。立っていられないほどの強風だが、とりあえず無事に登れて三人で喜びあい、やっぱり寒いからとすぐに辞して河口へと下って行った。
火口の底はディエゴはウェットランドと呼んでいた。これは日本でいう尾瀬のような湿原で、ところどころコケに覆われた浮島が浮かんでいる不思議な光景だった。厄介なのは浮島でないところはベージュ色の火山灰の泥水で、底なし沼になっておりずぶずぶ沈む。間違って足を踏み入れようものならエライことになってしまう。コケの浮島を伝って進まなければならないが足を滑らせないよう十分注意する必要がある。そこをなんとかやり過ごすと再びパルムの林立する台地となった。難所を無事通過しやれやれだった。
あとはパルムの台地を次のフィンカへ向けて下ってゆくだけだ。ここは正規のルートから外れているのか道が何もない。ディエゴは適当に下っているように見えるのでときどき不安に駆られるが、ルートマネジメントは完璧で、やがて正面ドンピシャに今日の宿ラ・プラヤが見えてきた。今日は1300mの標高差を8時間半も歩いてしまい、かなりの難航軍になってしまった。
疲れたので食事までベッドで寝ていたが、起きたら頭痛がする。今日の行程はかなりきつく、そしてラ・プラヤも3750mの標高なので高山病の症状が出てしまったようだ。血中酸素濃度も72%とだいぶ下がってしまっている。ディエゴはだいぶ心配していたが、自分としては今までの経験からそれほどひどくはなっていないから安心してと諭した。イブプロフェンを飲み、早めに休むこととした。
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1/2(水) 第3日目 快晴、強風
ラ・プラヤ(3750m)〜ネバド・デル・トリマ(5215m)〜ラ・プラヤ(3750m)
0時に起床。こぼれんばかりの星空の下、出発だ。頭痛は治り体調も悪くないが、いざSpO2を測るとまさかの60%台だ。ディエゴは「本当に具合は悪くないのか」と聞いてくるが本当に悪くない。自分は5000m峰で60%台だった経験は何回かあるので、何とか行けるだろうと思っている。だが十分注意はして進むことにする。ステファンはこの時点で70%台はあり、高山病には強いようだ。歩きだしてもディエゴは心配だったようで、「ジョヘイは呼吸がとても荒い、大丈夫か?」と聞いてくる。これはマラソンと同じ呼吸法だ、意識してやっている、大丈夫だと返す。
途中、そこそこ大きな沢を2回ほどわたってようやく尾根に取り付くが、ここまでで早足で歩いても2時間はかかりかなりの距離を歩かされる。トリマはアプローチが異様に長い山だ。途中、北斗七星や南十字星も見え、星談義になる。ステファンはかなり星に詳しい。ダラダラとした登りがずっと続くが標高4400mくらいから急斜面になってきて苦しくなってくる。ようやくトリマの射程距離に入ったようだ。ここから先はもう泣き言は無しだ。西方向には夜景も見えてきたのでアルメニアの街か?と聞いてみるが、ペレイラとコルドバだという。
標高4800mほどでいったんヘリポートのような広い大地に出る。6時を過ぎ、ようやく明るくなってきた。ここから氷河の末端まで、ルンゼ上の危険個所を登ることになる。一応ディエゴはショートロープシステムをするかと打診してきたが、ステファンも私も断り、ディエゴもそれ以上勧めなかった。我々のことをそこそこ信頼してくれているのだろうと思う。標高5000mで氷河の末端に到着。ここからクランポンを装着し、ロープも使って万全の態勢で臨む。
氷河は1か所をのぞいて傾斜は緩く、クレヴァスだけ注意していれば問題はなかった。アクスは不要と聞いていたが、スティックだけで全く問題なく登れた。1か所だけある急斜面もステップが切られており、不安も恐怖感もなく登れた。山頂は野球場ほどあろうかというほど広い台地だった。時間は8時すぎ。いろいろあったが無事に山頂まで登れてとにかくうれしかった。3人で写真を撮ったり雄たけびを上げたりして十分山頂を満喫した。
下山は順調だったが、途中4800mくらいでSpO2を測ったら50%を切っていて唖然…命の危険がある数値だ。体調は快調そのもので全く問題ないが、体の方はかなりダメージを受けているのかもしれない。でもあとは下りなのでこれ以上は悪化しないだろう。フィンカまであと1時間ということろで3人とも足がほとんど止まってしまった。もう12時間以上歩いている。ステファンと私はともかくディエゴも相当疲れているようでスピードが上がらない。ここで野宿かなぁ、とか言いながらタラタラ歩いた。
なんとかラ・プラヤのフィンカに帰着。昼食をすすめられたが、コカ茶だけがぶ飲みしてすぐにベッドに行きバタンキューだった。どうしようもなく疲れてはいたが、充実感でいっぱいだった。今まで南米の山でここまで楽しい登山は初めてだ。南米の山は6000m峰でさえ車道がかなり高いところまで通っており、日帰り短期決戦のイメージが強いのだが、トリマはアプローチも2日かかり、しかも変化があって面白かった。素朴なコロンビアのフィンカもこの地域ならではの特色で、とても印象に残った。
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1/3(木) 第4日目 曇りのち晴れ、強風
ラ・プラヤ(3750m)〜ココラ渓谷(2400m)
今日は下山するだけ。プレッシャーから解放され、高度順応も完全にできたので体調も良い。下山ルートは3800mの峠を越え、しばらく稜線を歩くが、とんでもない強風で参った。しかしその後はココラ渓谷へ降りるトラバース道になり、風はあたらなくなった。休憩しながらのんびり下り、6時間ちょうどでココラ渓谷のトレイルヘッドに到着した。ミュールが到着するのを少し待ってから、迎えの車でサレントに戻った。
ステファンから夜は一緒に食事しないか?と誘われていたので、トルーチャのおいしいレストランでビールを飲みながらいろいろ話をした。ステファンはミューニック在住の36歳。若いころ1年半くらい南米に留学しながらあちこち旅行していたので、スペイン語はペラペラ。もちろん英語とドイツ語も普通に話せるのでトリリンガル。全くうらやましい限りだ。海外もあちこち旅行しているが、「南米がどこよりも一番好き」なんだそう。人もいい、食事もおいしい、素朴な景色、こんなに楽しいところはほかにないとのこと。ボリビアとコロンビアが特に好きなんだそう。自分も今回の旅でコロンビアは南米で一番に気に入ってしまった。ボリビアにもいつか行ってみたいものだ。
彼は日本にもいつか来たいとのこと。そしてまた海外の山に登る際は都合が合えば一緒に行こうという話になった。ウェルカムだ。もう少し広場で遊んでいくというステファンと別れ、ホテルに戻った。全く楽しい旅行だったが、弾丸旅行ゆえ翌朝にはもうサレントを去らねばならない。ほんと名残惜しかった。
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その後の足取り…
翌朝、ローカルバスで1時間ほどでペレイラまで出た。乗り換えのバスを探したが、うまく見つけられず、タクシーを捕まえて空港まで。ビバ・コロンビア航空という怪しげな飛行機で首都ボゴタへ。
ボゴタでは1泊し、市内もちょこっと観光。繁華街は大道芸がいっぱい出ていてとても楽しかったが、見た感じメデジンよりも少し治安が悪そうなので、夜の出歩きは控えめに。あとは郊外のシパキラの塩坑教会を見学した。掘りまくった洞窟教会は全く異様な光景だった。
ボゴタでは薬局も数件のぞき、ダイアモックスを激安で手に入れました!!
ボゴタ→ニューヨーク→成田と飛び、寒い日本に帰国。まったく南米は遠かった!
コメント
この記録に関連する登山ルート
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ずいぶんと年末年始は遠いところへ遠征してたんですね。やはり異国は日本と違う景観が展開していて魅力的です。食事や風俗などもかなり違いますね。道中は全部英語ですか? それともスペイン語がしゃべれる? また話をしましょう。
コロンビア遠かったです。しかし観光資源のとても多い、楽しく旅行しやすいオススメな旅行先です。
スペイン語はもちろん話せませんので、山中では英語でしたが、ガイドのディエゴは英語は達者だったので最低限のことは大丈夫でした。ただラテンアメリカはどこでもそうですが、メデジンやボゴタの大都会でさえも英語はあまり通じません。当然ながら田舎は全く通じません。色々大変でした。
またそのうち飲みに行きましょう〜
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