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救急隊員は電話で、「男子はあなたが保護者と言うので、電話した。これから収容する病院を探すところだが、差額ベッド代のあるところでもかまわないか?」という。
男子の様子が心配なので、いいも悪いもない。男子は都内には私以外に親戚はいない。
しかも彼は、酒がほとんど飲めなかったはずなのに。
「お世話になってすみません」と言いつつ、OKすると、「収容先の病院が決まったら、すぐに来てくれるか」という。
私は、夕べは晩酌をした。あと4、5時間しないと飲酒運転になってしまう。「朝一番の電車で引き取りに行きます」とお願いした。
どうも救急車のシステムでは、こういう場合は「搬送者」の保護者を確定して、入院について了解が得られないと、先に進めないようになっているらしい。
それから20分ほどして、救急隊の隊長から、「いま病院に収容しました」と連絡があり、病院の名前を伝えてくれた。「必ず、引き取りに来てください。約束をたがえずに。お願います」。
「もちろんです。お手間をおかけしてほんとにすみません」と私。4時半まで寝なおす。
夜も明けぬ時刻の、日曜日の始発電車で、病院へ。
カミさんが着替えを持たせてくれた。
男子は、二日酔いがまだつらそうだったが、応対はしっかりしていて、怪我もない。
スーツが汚れていていたが、駅で動けなくなったときに、大事な仕事カバンはしっかり抱えていた。
幸い、悪い人に怪我をさせられたり、財布や貴重品を取られた形跡はなかった。
健康保険証をいつも持ち歩いていると言いう。
几帳面なのか。でもこれも、速やかな病院収容には味方したかも・・・。
男子は、救急隊員に、携帯のメモリーの電話帳のアドレスを示して、私に電話してもらったらしい。
救急隊にはちゃんと受け答えできたそうだ。
しかし、飲み会が引けたのが10時すぎごろなのに、収容は午前1時。そのあたりの記憶は、駅で動けなくなったあたりで途絶えている。
とにかく怪我や大事がなくてよかった。
が、問題は、収容されたその病院だった。
話はここからが本題。
救急隊員の「差額ベッド」の言葉が気になっていたので、病室の説明書きを読むと、17500円とある。
酔っぱらいを収容するのだから個室は仕方がない。
この病院は、救急病院とうたっているので、3畳ほどの狭い個室病室が並んでいる。
部屋には、トイレ、バス、洗面、冷蔵庫、洋服ロッカーも備えられているが、病室らしい清潔感がいま一つ。
それでも、男子が搬入されたのは、午前1時を回っていたので、普通の規定なら2日分の料金はとられない、と思った(病院の基本として収容が午後12時前だと、1泊でも2日分請求される)。その程度で、悪い人に襲われたりせず、無事だったのだから、まあ、良かったと思うしかない。
9時ごろ、男子は、頭部のX線撮影撮影に入る。
そのときは、「打撲もないし、会話もふるまいも普通なのに、念を入れるんだな」というぐらいに思っていた。
10時すぎ、最後の4本目の点滴も終わり、看護士さんが退院の手続きをします、というので、男子も片づけをし始めた。
ところが、医師の了解がなかなかおりない。というより、医師が来ない。
ナース・センターでは、「もう少しで」「会計をいまやっている」というが、男子が問い合わせに行っても、なかなか請求書が来ない。
日曜日で院内は閑散としているのに、これはどうしたの?
12時前になって、ようやく当直の医師が来て、「血液検査の結果、すい臓に炎症がある数値が出ている」という。搬送されてすぐに採血した血液だった。数字を確かめると、正常レベルの5割増し。危険エリアには入っていない。
しかし、医師は、「午後にもう一回血液を採血して、明日まで様子を見たい」という。その「明日まで留め置く」という言葉が出るまでに、すい臓の一部が壊れている可能性だの、アルコールの害の可能性だの、いろいろな推定が話された。歯切れが悪い。
私は、言った。「本人は酒酔いから回復しており、ここでの救急の措置は済んでいる。すい臓の件は、職場での検診データなどと比較しながら、アルコールの害が抜けきってから、改めて採血し、もし異常値が出れば、彼が通院しやすい専門病院で診断してもらいます。今日は、私の家族で彼を見守る。しっかり体を休ませたい」。
医師は、「そうですか。じゃあ、これで退院ですね」と言った。
私は、「血液検査の結果と頭部レントゲン撮影の画像とデータを、本人に持たせてやってください」と言ったが、さらに待たされたあとで、会計時に渡されたのは、採血データのみだった。
だいたい、転んでもいない、受け答えできるが動けないという酔っ払いの頭部レントゲンって、なぜなんだろう?
会計は、「3万円の預かり金を頂戴します」。正式の請求は、追って本人にお知らせします、とのことだった。
酔っ払いを受けいれる病院側も、ただ一晩、点滴だけで、眠らせて返しては、経営が成り立たないのはわかる。
それにこれらの民間の救急医療機関の措置で、実際に急性アル中症や、本物の急病から一命をとりとめる人もたくさんおられると想像する。
だから、差額ベッド料も、検査の連発も、「もう一晩どうですか」も、単純に悪いとは言えない。
とくに救急隊の立場から見たら、男子のやったことは、迷惑千番だ。大怪我に遭わなかっただけでも、関係者すべてに感謝しろよ。
とはいえ、街や駅で救急車のお世話になるような飲み方をすると、どういう代償がついて回るのかを知る上では、今回の体験は、当の男子にも、また自分に限っては大丈夫と思っている私にも、貴重な経験になった。
月曜朝、男子は元気で通勤して行った。
それにしても、街で泥酔するのは、ほんとに怖い。
保護されなくとも、ときには保護されても。
私は去年酔って自転車で国道のど真ん中ですっころび手と足が血だらけで帰りました。
今にして思えば、あの時、直後にクルマが来なくて良かったなあ、とつくづく思います。
病院の経営方針なんでしょうね。きっと。
分からなくもないんですが・・・
私も、山で転んで、脇腹をしたたか打ち付け、あまりに痛みが引かないので、よくわからない外科に行ったら
レントゲン撮って、異常ないのに肺が心配だから別の病院へ紹介状をかくから。と言われた。
心音も聞いてないのに、なんの兆個もないのに。
俗に言う医師のカンというやつ。
丁重にお断りして帰ったが・・・そのカンは外れたようです。
bmさん、危ないところ、運が良かったですね。
酒は、気持ちよくなるところで、本人の適量があると思うのですが、さらに飲み続けるところが、独特の習慣があると思います。
ご飯だったら、満腹という制限があるのに、液体ゆえに? 際限がない場合がある。
nightsさん、丁重にお断りしたい場合もありますが、医師が言うと、意見しにくい場合もあります。お世話になっちゃってるし。
今回の場合は、男子の様子と経過を聞いて、程度がだいたいわかったので、別件のすい臓のことは、体調を回復して、改めて専門医に調べてもらうのが良いと思いました。
その検査なら、通院1、2回で済みます。
ターミナル駅周辺数キロ圏の救急病院には、週末の夜にはいろんな人が、搬送されてくるのでしょう。
ひと通りの検査メニューで、「患者」によっては、重篤な疾患が発見される場合もあると思います。 すい臓も、飲みすぎ習慣の人はチェック箇所になるのでしょう。
ただ、今回の男子の場合は、酒に無防備だったことが原因かなと思います。すい臓は、弱みであれば、平時のデータでひっかかると思います。
泥酔→搬送 という場合には、こういう流れが待っているということを認識して、「自力下山」に努めることですね。
昔救急隊員に聞いた話ですが、救急車で病院に運んだら正式に本人の病名などを書き込みますのでただ運んで終わりではなく、運んでからも時間がかかるようです、預かった病院もすぐに返す訳にはいかず正式に診察などをします、午前0時前だとどんなことでも入院させられますよ、
経営の問題ではなく救急車で来た人が帰った後で何かあると問題になるので、きちんと診察しないと賠償問題になるようですよ、
naiden46さん、お読みいただけばわかるように、1泊したのは、当然のなりゆきと思っています。
検査も基本メニューは止むを得ません。それで助かる人もいるでしょうから。
ただ、今回の男子は、搬送時に受け答えできていて、外傷もない。
だから、複数の角度から頭部のレントゲンとは、なぜ? と思います。
たまたま搬送された病院で、朝から男子が院内を歩いて退院の話をしているのに、「個室にもう1泊」というのも、なぜ? と思います。
「落ち着いたところで、専門医にすい臓を調べてもらってください」で、すむ話。
とはいえ、これらの病院側のメニューもときと、場合によっては、救命に役立つこともある。
今回は、患者側からノーサンキューしたということです。
一方、救急隊は、現実を直視させるためもあって、原則的に対処したのでしょう。
救急隊は、それが本来ですね。
「2度と泥酔をしないでね」という社会勉強の授業料みたいなもの。
一方、病院は、経営判断が加味される。
これもやむをえない。
が、遠慮できるときはする。
これも社会勉強。
要は、酔って救急車に世話になるようなことは、どこから見ても不合理、ということですね。
(1つ、書き忘れました。 病名はなんて? と、私が男子に聞いたら、そばにいた看護師さんが、「急性アルコール中毒です」と言ってました。この名前、世間の呼び名でなくて、れっきとした病名だと、私はそのとき知りました。)
tanigawaさん、はじめまして。大変でしたね。
かなり昔に、階段の下にいた酔っ払いが、救急車で運び込まれ、病院が頭の検査をせずに返したら、転倒していたらしく、その後脳出血で死亡し、病院が裁判で負けたことがありました。それ以来状況の判らない酔っ払いが運び込まれたら、頭の検査するようになりました。酔っ払っていると、麻酔がかかっていると同じで、痛みが感じない人もいるので。また、症状はすぐに現れない場合があるんで、最初は受け答えがしっかりしていても油断できません。あと頭部骨折を疑う場合、数方向撮影しないと判りません。
あとnightsさんのコメントにコメントです。
なぜ肺が心配かといわれた理由はわかりませんが、以前腰痛があり整形外科を受診した患者さんが、腰のレントゲンを撮ったら、肺の一部に肺癌の影があり呼吸器科に紹介された例があります。腰のレントゲンには肺の下が一部写ります。結局その方の腰痛は肺癌が背骨に転移していたためだったということがありました。
いずれにしても。きちんと医師が説明しないことが誤解を生むんですよね。疑問があれば遠慮せず質問すべきですよ。
ankotaさん、お話、了解です。
第三者の救急隊や医療スタッフから見れば、基本メニューは、やはり基本ですね。
それで助かる人もいますから。
すい臓も、医師が提起してくれたことは感謝したい。今後、彼も注目するでしょう。
でも、あの病院の体制や対応では、あのまま長く身を預けることはむずかしいです。
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