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イラクサは、茎と葉の裏にガラスの針のような細かいトゲが密生していて、手足に刺さるとすごく痛痒いので、この名前があります。
若芽のころはトゲも少しやわですが、手袋をして気をつけて採集しないといけません。トゲは湯をくぐらせれば、刺さらなくなります。
北海道と東北・北陸にエゾイラクサ(写真1枚目)が分布し、北海道をふくむ全国にミヤマイラクサ(写真2枚目)とムカゴイラクサが生育しています。
そのなかでも、北海道のエゾイラクサは、手ごわい。こいつだけは、大人の背丈を超すほどに生長し、密生するトゲと、潅木のような体躯とで、森に入る人の行く手をさえぎります。
とくに太い茎の表皮が、長い繊維でつながって、強靭。その繊維を見逃さなかったアイヌは、エゾイラクサとムカゴイラクサとから、繊維を取り出し、糸を生み出しました。(「分類アイヌ語辞典第一巻植物篇」、知里眞志保著)
その工程は、気が遠くなるようなものです。
1)日高では、秋に枯れたイラクサの茎を採集して、乾燥させる。
2)茎を細く裂いて、手で皮から肉(茎の内部の組織)をそぎ落とす。茎の内部の繊維だけを取り出す。
3)繊維を上下から手で揉んで、表皮を落とし、ついには繊維だけを残す。
この繊維から糸を取り出す。
イ)樺太では、イラクサの枯れた茎を採集し、茎の皮を剥いて取り出す。一日に一人で12〜16キロ分。
ロ)皮は水に漬けておいたあと、貝殻を使って削いで、繊維を取り出す。
繊維は冬まで水に漬けておく。
ニ)繊維をぬるま湯に漬けてうるかし、雪の上において足で踏みつける。そしてまた水に漬ける。
この作業を何回も重ねる。
ホ)繊維を竿に干して、10日ほどして、真っ白な繊維を得る。
ヘ)女たちは、炉端で繊維から糸を紡ぐ。
その糸で布を織った。テタラペ(白いもの)という布で、この布は、出産のお祝いごとなどに使われた。
イラクサの種類や工程の違いによって、出来上がる糸の質や白さも異なったそうです。
そういえばアンデルセンの童話でも、妹が兄たちにかけられた魔法を解くために、イラクサの繊維から服を編み上げるという話がありました。
アイコは淡泊で美味しいと言われますが
あのびっしりと生えたとげを見ると
どうも採る気がしません
(タラの芽は採るくせに?
茎から繊維を取り出したアイヌの人々の知恵、
立派ですね。
sakusakuさんへ。
>あのびっしりと生えたとげを見ると
同じ気持ちです。
東北では古くから春の恵みの一つに入れてきたけれど、昔の江戸の町では食べ物にそこまで困ることはなく、当時の「百科辞典」的なものでも「毒草」扱いしていたそうです。(「北海道山菜誌」山本正ほか、1980年)
でも、伸び始めたばかりの背丈10センチ内外だと、トゲは柔らかくて、手袋をすれば大丈夫です。
茹でれば、棘は柔らかくなり、何も感じなくなります。
このイラクサの繊維に目をつけて、取り出して服を織ろうとした知恵が、東西共通だったというのが、おもしろいですね。
自然のなかから、必要なものを見いだし、衣食を充たすことに、それだけ一生懸命だったのでしょうね。
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