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千島、樺太、北海道のアイヌの現場に取材した膨大なといっていいデータをもとに、アイヌ出身の知里氏が書き残した貴重な資料です。
フキとフキノトウは、採集する量に限りがありません。無尽蔵に得ることができますから、アイヌの人たちの基本的な食料用の野草の一つになってきました。
利用の仕方では、やはりカロリー補給を兼ねた食べ方が考案されています。畑を作ったことがある人は体験があることですが、フキは野菜作りには手ごわい雑草になります。地下10〜20センチほどのところを水平に地下茎が張り巡らされ、まるで水道管を敷設したよう。春にはその地下茎からフキノトウが地表へ立ちあがってきます。
アイヌは、生長のための養分が濃い、その地下茎に目をつけました。
根(地下茎)を「どろどろに柔らかく煮て、そこにあらかじめ煮ておいた葉柄をきざんで入れ、さらにそれに油を入れてかきまぜる」。
このフキの根は、はしかなどの熱さましにも使われ、干して保存食にもされてきました。フキノトウは刻んで噛み砕いて傷を覆い、癒すのにも利用。
葉柄(こちらが食材のフキ)や花茎は、生食、漬けものなど、和人と同じ利用もされました。
松浦武四郎の「東蝦夷日誌」で紹介されているフキの利用法も、知里は書いています。
フキの葉を5,6枚重ねて両端を縛り、そのなかに米、水を入れ、火にかける。おき火の上にでも、ころがすんでしょう。
葉が燃えてしまうか、というところで取り出す。中には「握るごとく丸く飯になりたり」。
ここからフキの葉には、「鍋」を意味する名称が与えられてきました。
直行さんは、十勝の開拓農家も、6月ごろにフキの葉柄を煮て、四斗樽に漬けこみ、ひと冬かかって食べると書いています。牛はフキノトウをよく食べる。馬は、フキノトウを徒食する程度なのに、霜にあたって褐色になると、好んで食うからおもしろい、と書いています。
わざわざ野山にフキノトウを摘みにいく人間も、霜焼けしたフキノトウを好む馬も、生きているものの嗜好というのは、おもしろいと思います。
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