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道々、メンバーの1人が属する学部の山の会(OB会)の遭難の話になりました。
先月、北海道の沢で彼の会のメンバーが遭難したのですが、1)沢を1本間違えて下降してしまったうえに、2)途中で足を骨折して、動けなくなったのだそうです。3)そこへ、大雨の増水。装備と食糧のすべてを流されました。4)単独行でしたので、待っていても連絡手段も救助の見込みもなし。
これだけ悪条件が重なるなか、彼は医師だったので、自分で添え木を足に固定。あとは沢の流れにまかせて、泳ぎ下り、林道近くまで到達したところで、救助隊に発見されました。行方不明になってから4日ぶりの日高の沢からの生還だったそうです。
その話とは別な話題なのですが、ヒグマ撃退スプレーの効果について、話題になりました。
どうも効果は絶対ではないようです。
相手が警戒・ゆっくり接近してくるような場合は効果がありそう。十分引き付けてから、スプレーを使います。
でも、事故になっている多くの場合は、ごく近距離での遭遇や、出合い頭の突進攻撃の場合が多い。スプレーを使う猶予がむずかしい場合もあります。
子熊が人間が接近しても逃げようとせずに母熊が人間を追い払おうと攻撃する場合も、「攻撃意志」が強いため、スプレーでどこまで対応できるか。
道内でもごくたまにしかありませんが、人が接近しているのに逃げずに、食べるために人を襲った事例(2001年)もあります。
そのため、ヒグマから身を守るために、スプレーとともに、いよいよの場面では鉈での反撃を呼びかけているサイトもあります。
http://www.yasei.com/
http://www.blaugrun.net/higuma/
1番めのサイトの事故例のくわしい記録は、道内に行く方はぜひ読んでほしいと思います。
以上は事態が悪くすすんでしまったケースの話。多くの場合は、ヒグマと人間は遠めに見合ったり、ヒグマだけが人間に気づいて回避してくれたりと、平和的な展開が普通です。でも道内の山へ入る場合は、登山者は確率、はかなりわずかでも、ヒグマとの遭遇の可能性はあるのです。
関連して、次の私の日記もごらんください。
熊避けスプレー、用意することにしました
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-20859
良いクマ、悪いクマと、人間との相互理解
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-23617
会津美里町のツキノワグマ事件はちょっと気になる
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-52590
本州のツキノワグマの場合も、一昨年、認識を改める話を聞いたので、ついでに書いておきます。
06年の秋に岩菅小屋で、登山道の刈り払い作業に入っていたガイド組合のみなさんと、泊まり合わせました。そのときに、06年春に志賀の山で起きた死亡事故が話題になりました。
50代の男性がメスのツキノワグマ(成獣)に攻撃されて亡くなった事故です。救助に入った人たちが驚いたのは、遺体の腹部などが、攻撃だけでは考えられない大きな損傷を受けていたことでした。
ヒグマならたまにある事例ですが、ツキノワグマでは珍しい状況。ガイドのみなさんも、驚いたと話していました。
事故は、おそらく熊除けの目的のためでしょう。ラジオが付けっ放しで大きな音量で鳴るそばで起きていました。
現場には、数頭のツキノワグマがいたことも確認されています。母熊説など、いろいろ想定がされているそうです。
そこで話に出たのは、人間の側が、小さな音色の鈴を鳴らして歩くのはまだしも、ラジオなどを大きな音で鳴らし続けて行動するのは、適切でないということです。
ガイドさんによれば、山に入っていて、熊が出す警戒音、うなり声、強い呼吸音などを耳にすることがあり、そのときは人間の側から、すみやかに相手から離れるのがベストだとのこと。
鳴り物は、度を超すと、相手が出すシグナルや行動にともなう音(ヤブを揺らすなど)が、人間の側でまったく聞こえなくなり、相手の状況次第では危険があるということでした。
鈴も音量はさまざまあり、程度問題になると思います。呼び笛や、自分が出す声も、適切な効果があるそうです。
まあ、ツキノワグマは、そうはいっても、大人の男性ならば、なにか手に道具があれば、「格闘」「撃退」に持ち込みうると私は思っています。
ストックにしろ、杖にしろ、足蹴りにしろ・・・。
ともかくそうならないように、人間の側からも、クマの意思表示を感知できる態勢でいるということだと思いました。
今週末から北海道に行って来ます。
熊よけスプレーは実際の役には立たないと思い、またかなり高いので検討はしましたが、購入予定はありません。鉈も持ってはいますが、普通は持って行かないので、万一の場合はストックで戦うしかありません。交通事故よりはかなり確率は低いと思いますし、都会では、狂った人間の方が危ない様です。
今年は関東甲信越は天候不順の8月ですが、北日本はしばらく良さそうですね。私も、明日から北アの予定だったのを切り換えて、東北北部へ行く計画です。山の雷は苦手です。
学生のころは、実験室で使う「氷酢酸」を少し融通してもらって、ポリ瓶に入れて、腰に携行したこともありました。こいつは強烈な「酢」で、「目前で対峙」した場合、鼻めがけて振りまいて、うまくいけば(それが難しい)、クマを茫然自失に追い込めるくらいの相当な効果がありうるものでした。テント周辺にも使えます。
それにくらべれば、ヒグマ・スプレーは、到達距離も長いですね。カムチャツカなどの現場での使用も、相手の状態しだいでは効果がある場面を、テレビでも見ました。
ヒグマ除けの鈴などを使うときは、鳴らすのは1人だけにして、とくに視界が利かない条件では、ヒグマが出す警戒信号がよく把握できる条件で、行動されてください。早期察知が一番です。
それに、確かに交通事故よりは、ずっと危険は少ないですね。道内の犠牲者は年に数人ですから。
北海道の好天を祈ります。
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