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12月に図書館に予約しましたが、何と借り出せたのは昨日でした。
https://www.yamareco.com/modules/diary/96778-detail-317491
以下感想文
久し振りの一気読みだった。
15人待ちで自宅最寄の図書館から3ヶ月待ってようやく昨日借り受け、先程読了した。
一日で600Pを一気に読ませるこの作品の吸引力はもの凄かった。
面白いというだけではなく、労働法や労働者派遣法のこと、経済団体(大企業)・政治家・警察権力との関係のこと、等改めて勉強になった。
ネットで検索すると、東京都羽村市にあるトヨタ紡績東京工場が出て来る。この作品における日本最大の自動車メーカー「ユシマ」の生方(うぶかた)工場の舞台のようだ。
非正規労働者問題、労働者の健康管理問題、親子三代にわたる企業都市文化の問題など、実際に現在の日本でそのゆがみが問題になっている事柄が良く整理されている。
ジョブ型労働の問題にも触れている。また新型コロナウイルスの経験を経て書かれた作品なので、非常にリアリティがあり、まるでノンフィクション、ドキュメンタリー作品のようだった。
定年制の延長やジョブ型制度の導入など人事制度の変更が喧しい昨今だが、人事制度変更に携わる方々にも読んでもらいたい本である。
本当に働く労働者のための人事制度変更なのか、国の法制度改革に仕方なく対応するための変更ではないのか、人件費コストを下げるための変更ではないのか・・・。
企業の権力者におもねることで自分の地位を守ることに汲々とするつまらぬ人間が、その企業の主要なポストを占めているのは、この小説の舞台であるユシマという自動車メーカーだけでなく、多くの日本の企業の実情だ。人件費を抑制した人間が、或いは労働組合をうまく抑制した組合委員長が出世しているのではないか。
思い出したのは、私が現役時代の一つの話。
社外でトラブルを起こした部長に関するクレームが顧客から間違って私に来た。担当部署へ連係したところ、暫く経ってこの件について人事担当役員から電話が入った。「知っているのは君だけか」「そうか。後は処理するから他言無用だ」と。
結局当該の部長は社内的に何の懲罰も受けずに、女性登用の時代の波に乗り順風満帆に出世していったことだ。
企業の隠蔽体質はまだまだ日本に深く巣くったままだ。上手に隠蔽できた奴が出世していく。企業は一度何事もなく隠蔽できると、次もまた隠蔽が第一対応方法となり常套手段となっていく。
最近漸く労働者の過剰勤務やパワハラ問題が取り上げられ、自殺者に対して労働災害が認められつつあり総論としては好ましいことだが、現場では本質的な対応はまだまだではないだろうか。自殺者が出ないような対応をするよりは、業績を上げる奴が重宝されている。
業績が達成できずに自殺した社員がいるにも拘わらず、会社全体の計画達成の祝杯を挙げる役員のいる企業は社会に存在する価値がない。私はそう思って泳いで逃げた口だ。私は泳げたから良かったが、泳げない奴もいるのが可哀想だ。
「この小説は多くの人に読んでもらいたい一冊だ」との感想を書かれている読者が多いが、私も大きく同感する。
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