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さて、私が若い頃から頻繁に使っていたプルージックは、11ミリのシングルかダブル(懸垂)で使うザイル、あるいは9ミリのザイルをダブルで使っている時に多く使用していました。どの使用でも問題なく、オーバーハングでの空中懸垂からの上方への脱出練習でもプルージックは効果的でした。それゆえ私の中ではプルージックは絶対の信頼性があった訳です。
そのプルージックですが、先日のゲレンデで「滑る」という現象を体験しました。
実際にはプルージックは時として滑ることはあるのですが、私の想定範囲の滑り方とは違っていたのでアレ?という感じを受けてしまいました。何というか、飼い犬に手を噛まれるという感触に似たものでした。ひょっとかして、こういう状況で魔が刺して事故が起こるものかも知れないと思いました。
状況としては、新品の10ミリのザイルをシングルで40メートルの高さのピンに固定して垂らして、いわゆるフィックスロープを使ってのプルージックをバックアップとしたソロで登る練習です。登り出しのテストでザイルに体重を掛けたときに滑りました。シュリンゲは6ミリの細引きでした。3重プルージックでした。シュリンゲは経年劣化がかなりあり少し固くなっていました。もっとも、深刻な滑りではではありませんでしたが嫌な感触を受けました。
そんなことで、私なりにプルージックを再考してみることにしました。
なぜ滑ったのか?という答えの一つは、プルージックはロープ径の差が小さいと滑りやすいということがあるようです。逆に言えば、プルージックは、細い細引きの方が効きやすいということです。一説には、ロープの直径の差が5ミリ以上あるといいとも言われております。私の場合は10ミリのシングルのザイルで6ミリのシュリンゲだったので可能性はあるのですが…。
そのロープ径に関しては、レスキュージャパンという京都にあるレスキューの講習もされている会社で販売されている「プルージックコード」とか「バウンドループ・プルージック」というものは文字通りプルージック専用の道具なんですが、ロープ径が7ミリと8ミリです。それを使って滑る実験動画を公開されていて、強力な力を加えても「滑ることはあっても問題ない」という捉え方になっています。実験では800kgとか900kgの力を加えているようです。
[b]プルージックの実験 - YouTube[/b]
動画のコメントより:「15倍力を作成しプルージックが滑る映像を撮影しました。大きな力がかかってもメインロープを痛めることなくプルージックが滑る様子を見ることが出来ます。途中、熱が発生し煙が発生しています。」
[b]【追記】[/b]この実験はプルージックが効いている状態からの引っ張りテストなので私が意味する「滑り」とは違います。ここでは、おそらく10ミリのメインロープを7ミリのプルージックコードで引っ張っていると思われますので、その直径差について参考にしたいと思って掲載させてもらいました。-追記終わり-
さて、もうひとつの滑る原因は、ロープの表面の問題かと思います。
私が岩登りのゲレンデで使った新品のザイルは、「コンプリートシールド」というロープのシース(表皮)およびコアにテフロン加工を用いて、耐水性・強度を上げているものです。これが経年劣化のあるナイロンのシュリンゲを3重プルージックにした理由で表面どおしの摩擦が小さくなって滑った可能性があります。
気になると私はしつこい性格なので、自宅にある懸垂トレーニング用の鉄棒で何回かテストをしてみましたが、正直なところよく分かりません。というか、プルージックは問題なくイメージ通りに機能しています。
そういうことで、あのときのゲレンデでの滑りの原因はよく分からないのですが、このあたりのことをどなたかご存知なら教えていただければ幸いです。
そんなこんなで、プルージックについて色々とやっているうちに、アッセンダーを使うことを考えたり、色々な太さのシュリンゲを新しく作ったり、新しいカラビナを買ったり、あるいはフレンチノットやマッシャーとかバッチマンをテストしながら、色々と昔のようにハーネスでぶら下がる感触を楽しんでいる自分を発見しました。
仕事を真剣にしなければいけない状況なのにザイルにぶら下がって呑気に現実逃避をしているmurrenでした。
こんばんは!
プルージックは片手で出来る唯一の結びと言われ、登攀不能になったときの登り返しや、ビレイ中にメインザイルを仮固定して両手を離して自由になる際などには非常に有効だと思われます。
以前谷川の冬壁で宙吊りになった高名なクライマーは、プルージックを知らなかった為に登り返しが出来ず命を落とされたという驚愕の話を聞いたことがあります。
ただし、プルージックに限らず、どんな結びや技術にも完璧なものは無いでしょうし長所と短所があるので、その場に応じた最適に近いと思われるやり方を現場で考えるしか無いのでしょう。
私の所属会では、プルージックを使用した登高に関して以下のような注意喚起をしています。
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*固定ロープの登攀時にはなるべく登高器を使用する。
(登高器にも弱点はある…石がはさまる,閉じ忘れ,ロー プ径とのミスマッチetc.)
無い場合にはカラビナバッチマンなどが使い良い。 プルージックは少し登るたびに手で押し上げなければ ならない。
岩場が難しくなればそれができなくなり、プルージッ ク結びがロープを引き上げてたるませてしまう。
墜落するとその分余計に落下することになる。
また、固く締まるとずらし難い。
プルージック結びに負荷がかかると即座に締まる。
それだけでなく、締まりながらロープに沿って滑り落 ちる。(ある実験では止まって切れるまで50センチ) その圧力と摩擦熱によってロープ、スリングは溶け切 れてしまう。(ロープのたるみが1mで切れたこと も。)
プルージックの締まり方がよくないとロープ、スリン グがもっと太く、落下距離がごく小さくとも切れるこ とがある。プルージックの締まり方をコントロールす ることはできない。
*プルージック(登高器使用、バッチマン等を含む)を 使う場合は、岩場の状況やメンバーの力量をよく見 極める必要がある。
*人間の本能として、落ちるとき反射的にロープを握っ てしまう。
(プルージックなどは結び目を握ると緩みます。)
*余ったロープ末端は巻いておくと良い。結び目を上に ずらす時、下に居る後続がロープをやや張ってやると 良い。
*ロープとの相性(表面加工の違いや毛羽立ち具合/太 さ/濡れている/柔らかさ等)により巻き回数は調整。
他にも色々とあるかと思いますが、主に「生と死の分岐点」という本に記載あったものをまとめたものです。
bunacoさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
そうですね、プルージックは非常に有効な結びですが、固まってしまうともう1本でプルージックを作って固定してなんとか固まっているのを解くかナイフで切断ということになってしまいますね。
ただ、私自身はプルージックは体に染みついた技術の一つです。しかしながら、そんな感覚的な慣れからアレ?ということを発見したので、昔は昔ということで初心に戻り色々とチェックしていこうと考えています。
「生と死の分岐点」は97年に出て、私は完全に山から遠ざかっていたので読んでいないのです。しかしながら、ことあるたびにネットで調べるとこの本の内容が出てくるのでものすごく買いたいのですがプレミア価格となって手が出ません。近所の図書館にはなくて隣の市の図書館にはあるのが分かっていますが、借りよう借りようと思いつつ日がすぎてしまいました。アンザイレンの話とかちゃんと読みたい訳です。
よーし、今年中に借りてくるぞぉー!
先日雨の中岩場でのトレーニング中にプルージックとマッシャーで登り返している時にプルージックが突然効かなくなってしまいました。
直前まではしっかりと効いていたのですが・・・。
それほど大した高さではなかったのですが、ちょっとヒヤッとしました。
師匠曰くよくあることだというのですが・・・。
やはり専用の登高器などを使うのがベストなのでしょうね。
普段プルージック等はバックアップ用として考えるようにしています。
mitukiさん、こんばんは。
あれれ山は大丈夫ですか?
プルージックが滑る場合、たとえば空中懸垂のようにザイルがビンビンに張っていて棒のようになっている時とかは滑りますよね。それかザイルが凍っているときとか。そういう想定では想定内なんですが、この前はやっぱり新品のザイルだったからかなと思ったりしています。それにシュリンゲが古くて固いでしたね。摩擦係数はかなり低かった可能性がありました。
岩を真剣に登っていた頃は、プルージックを使っての非常脱出用のシュリンゲを2本必ず別にもっていました。「これは普段は使ってはいけない」という区別です。
それを使っての脱出訓練は楽しかったですね。やり方は空中懸垂ですがハーネス用と足用で登っていくのがベストですね。ハーネス用は短めで足用は長めがいいでしょうね。ハーネスを使えば腕力や体力はほとんど必要ないですね。
ありゃりゃ技術講習になってしまった
さすがに師匠さんのコメントは余裕ですね。
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