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「厳選=25年、歴史に残るべき記録 沢登り、大滝登攀」について
あまりに雑な紙面だったので、黙っていられず感想を書く。
■この企画について
まず、この特集は『ROCK&SNOW』100号記念として以下のようなコンセプトで組まれている
>『ROCK&SNOW』100号の誌面を通じて25年間のクライミングシーンを振り返る。
>3回目の今号では、沢登り・大滝登攀とスキー、スノーボードでの山岳滑降記録をプレイバックする。
掲載記録数 15 (沢登り7、大滝登攀8)
掲載号数 8/100冊(53,54,74,85,90,91,94,97)
『ROCK&SNOW』は1998年創刊であるが、今回の特集で厳選されたものは2010年〜2022年までの13年間しか振り返られていない。
掲載冊数は100号のうち8冊しかなく、『ROCK&SNOW』に掲載されていない記録が4つもある。
このことからわかるように、そもそも『ROCK&SNOW』では沢登りを蔑ろにしてきたのにも拘らず、こういう特集を組むこと自体が無理がある。
また、掲載なしの記録を他から引っ張ってきて、それに価値を見出しているのなら、普段よりもっと沢登りを紙面で扱えばよいのではないか。
掲載されていない記録も取り扱うのであれば、本当に25年分(1998年から)『ROCK&SNOW』に掲載されていない記録も調査したのか疑問である。
■紙面の構成について
紙面の文字は過去の記録(『ROCK&SNOW』、『渓谷登攀』)のコピペである。ここからは熱意が感じられない。
これは一番の問題であるが、「歴史に残るべき記録」と言い、25年の記録(実際は13年だが)の中から15の記録を選んでいるのであれば、何よりも「選定理由」を選定者は責任を持って書くべきである。
厳選して、それが歴史に残ると言っているのに、その理由を読者に伝えないのは不誠実としか言いようがない。
編集者の森山憲一は「圧倒的な客観目線の欠如」と同号の座談会を酷評していたが、まず100号からやっている記念特集のあり方を見直すべきだ。
https://twitter.com/kenichimoriyama/status/1732410634464334133
■厳選された記録について
・梅花皮沢 滝沢 大西良治
『渓谷登攀』のコピペ。
この記録の素晴らしいところは単独で中・上部ゴルジュを初遡行した点だ。
しかし、掲載されている写真は登攀者が比較的いる梅花皮大滝の写真である。梅花皮大滝は有名な滝で、ツアーも行われていたり、沢ヤだけでなく滝好きも訪れる場所である。もしこの記録に価値を見出し選定したのであれば、掲載する写真は上部ゴルジュの写真の方であるべきでは。
・赤川地獄谷 大西良治
『渓谷登攀』のコピペ。
地獄谷は1940年代にも遡行されていて、1979年の噴火以降は2006年にも成瀬陽一らが遡行し(大西は2010年)、無雪期上部ゴルジュを確認している。「富山起点!楽しい山登り」の和田一真も2014年の噴火前に遡行している。
・飯豊川〜北股川下降 大西良治
『渓谷登攀』のコピペ。
飯豊川も飯豊連峰の難渓ではあるが、遡行者を迎え入れている。北股川も同様。
・荒川毛無沢本谷 大西良治
『山と溪谷』のコピペ。
この記録は雪渓下の未知として大西が2020年に遡行した素晴らしい記録。強烈なゴルジュを突破している。
本谷とは支流を複数抱えている、比較的大きな渓につくものであり、毛無沢は顕著な支流は一つしかない(右俣)。
本谷と書かれているのは『山と溪谷』から何も考えず、ただコピペしてきたからと思われる。
・奄美大島 フーチブルの滝 小阪けんじり、酒井一輝、須見遼介
話題になり181mとされていたが、全体を一つの滝とみなすのは無理があるという主張もある。
再登者は最下段の実測82mとしていて、SNS上でもやりとりがあったのだから何かしら補足や議論などもあってもよかったのでは。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4876015.html
・富立岳 白水の滝 小阪けんじり、酒井英人、赤堀拓弥
283mとしているが、途中にゴーロ帯もあり、単独の滝とみなすのは無理があるという主張もある。
https://twitter.com/tamoshima4/status/1725471061725286900
こういう意見がある以上は、鹿児島県十島村も含めて、落差についても議論すべきでは。
また、登攀ラインはほぼ高巻きであり、同102号のChronicle欄で酒井一輝は「大滝登攀は水を浴びるからこそ大滝登攀であり得る。」「大滝登攀にはあらためて「絶対水線」のプライドが必要なのである。」と書いている(この記録は読み応えがある)。ここについてもこれは大滝登攀なのか、大滝登攀を志す人達で議論があってもよいと思う。
■その他
・称名滝 フリーソロ 中嶋徹
この記録は『ROCK&SNOW』100号の「厳選=25年、歴史に残るべき記録 フリークライミング/国内」に選定された。
称名滝を選ぶのであれば、なぜ「沢登り、大滝登攀」の方に分類しなかったのか。また「沢登り・大滝登攀」にはなぜ称名滝の初登攀などが「厳選」されていないのか。ハンノキ滝についても同様になぜ厳選されなかったのか疑問である。
蔑ろにされてきた沢登りを100号記念特集としてなぜか組んでいて、
選定理由も書かれず、
紙面のほとんどがコピペで構成され、
疑問の残る厳選である本特集は
「雑」としか言いようがない。
ROCK&SNOWと言いながら、人工壁を登る森秋彩を表紙にする雑誌なのだから、雑なのも致し方ないのか。
「厳選=25年、沢登り・大滝登攀」とあったので、久しぶりに購入しました。が、、、、、、!
「大滝登攀」はまだしもロクスノ編集部が、クライミングの見地から「沢登り」をどう解釈しているのかの表明がない限り、とても受け入れられない選でした。2003年秋、称名滝四段目松本P.が抜けているとは、トホホ。選出はもしや、、、!
まっちゃンさん含めて沢登りや大滝登攀に取り組んでいる人たちを軽んじています。
・称名滝年表
1972 三〜一段目初登 (佐伯、松永)
1997 三〜一段目オールフリー (松本、森元)
2002/10 四段目(最下段)初登 (松本、佐藤)
2003/10 全四段完登 (澤田、山岸、木下)
2010/10 全四段単独 (大西)
2013/1 全四段冬期初登 (佐藤、宮城)
2015/9 四〜三段目左岸 (大西)
2015/10 全四段フリー化 (大西)
2019/8 フリーソロ (中嶋)
松本、佐藤PTは2002年10月ですね。
称名滝で取り上げられたのは2019年の中嶋徹のみで、過去の歴史に触れないこんな扱いは雑誌でやることではないですね。
日記では取り上げられた記録についてのみ言及しましたが、まっちゃンさんなどの識者の方が「あれがなぜ無いの?」を言い出せばキリがなさそうですね…。
選出も誰がやったか書いていないのが、ズルいですね。「山岳滑降」の方では選出者が明記されていました。(おそらく北山さんかと…)
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まっちゃンさんのいつも記録拝見しています。
山への熱や、文章など、私の周りではファンが多いです。
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