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http://members.jcom.home.ne.jp/tetsuom/NOTE/NtPvsH/HdPvsH.htm
そこから標高が何m上がると気圧は1hPa下がるか?という科学的(数学的)な話に突入。しかし、そのサイトの説明や数式の難解さのせいや「そもそもこのサイトに提示されている数式は正しいのか?」という疑問も芽生えて話は何となく立ち消えで終わったのだった。
そこで、その後じっくりとこのサイトを熟読し数式を検証。ある程度のことがわかったので書いておこうと思う。
数式の計算はエクセルに式を入れれば簡単に計算できる。
■まず最初に、表1の筆者の式「標高における大気圧」を検算をしてみた。
標高h[m]における大気圧P[hPa]を求めるには:
ここでは海面気圧(=P0)は1013.25。海面気温(t0)=15。
P=1013.25*(1-0.0065*h/(15+273.2))^5.258
これに標高(=h)を代入してみると、
・標高0m地点の気圧=1013.25hPa
・標高1000m地点の気圧=898.72hPa
・標高2000m地点の気圧=794.91hPa
・標高3000m地点の気圧=701.03hPa
となった。表1には小数点一位までしかないが、筆者の「計算値」に合致している。
■次に、大気圧P[hPa]の時の標高h[m]を求める式の方は・・・。
h=153.8*(15+273.2)*(1-(P/1013.25)^0.1902)
この「P」に上の気圧値を入れると、
・気圧898.72hPaの時に算出される標高値=999.78m
・気圧794.91hPaの時に算出される標高値=1999.52m
・気圧701.03hPaの時に算出される標高値=2999.27m
となった。誤差0.7m以内に収まっており、式は正しいことがわかる(^^)
■さて、表2「大気圧が変化した場合の見かけ標高[m]」のほうだが、前後をよく読むとここで「大気圧」とあるのは「地上(標高0m)」の大気圧のことだとわかる。これが誤解の元だった。そこで今後はこれを「海面気圧」と呼び、また海面(標高0m)気圧=1013.25hPa、気温t0=15°の時を以下「基準時」と称することにする。
ここでもし、海面気圧が1hPa下がった、つまり、
海面(標高0m)気圧=1012.25hPa(=P0')となったとすると、
式)P'=P0'*(1-0.0065*h/(15+273.2))^5.258 を使って、
・標高1000m地点の気圧=897.83hPa(基準時−0.89hPa)
・標高2000m地点の気圧=794.12hPa(基準時−0.79hPa)
・標高3000m地点の気圧=700.34hPa(基準時−0.69hPa)
となった。
標高が高くなるほど気圧変化量は小さいことがわかる。
■さて、議論になった「気圧変化1hPa当たりの算出標高値の変化量」だが、
これは式)h=153.8*(15+273.2)*(1-(P/1013.25)^0.1902)を微分すればいいので、
Δh=153.8*(15+273.2)*0.1902*P^(-0.8098)/(1013.25)^0.1902
となり、ここの「P」に各標高での気圧を入れて見ると、
・標高0m地点での標高値変化量=8.3[m/hPa]
・標高1000m地点での標高値変化量=9.1[m/hPa]
・標高2000m地点での標高値変化量=10.1[m/hPa]
・標高3000m地点での標高値変化量=11.2[m/hPa]
と求まった。
uedayasuji様が最初に言われた「大気圧が1hPa低くなると標高表示は8m高くなる。」は標高が低い場合に合致。一方他のサイトなどで見かけた「標高が10m高くなると大気圧が1hPa低くなる。」は標高が高い所でより正しい事がわかる。
■海面気圧が変化した時に高度計に算出される標高値がどの程度狂うかも確認。
海面気圧が1hPa低くなった時(P0'=1012.25hPa)になった時の場合だと、
・標高1000m地点で算出される標高値=1007.9m
・標高2000m地点で算出される標高値=2007.5m
・標高3000m地点で算出される標高値=3007.1m
となり、標高に関わらず7〜8mほどの誤差(高く表示)が生じる。
表3の結論として書かれている「表3で分るように、大気圧が1[hPa]低くなると標高表示は8[m]高く、 1[hPa]高くなると標高表示は8[m]低くなる。 」の「大気圧」とは「海面大気圧」のことなのだ。これ、注意必要!。
これが海面気圧が10hPaも低下(P0'=1003.25hPa)したとなると、
・標高1000m地点で算出される標高値=1081.4m
・標高2000m地点で算出される標高値=2079.3m
・標高3000m地点で算出される標高値=3077.2m
と、80mもの大きな誤差が生じるのだ。(これ表2そのままだね。)
気圧が一気に10hPaも上下することは稀だろう。
また、普通は登山開始の時などにわかっている標高位置で高度計を調整するから、現実にこれほどの誤差が出る可能性は低いかもしれないが・・・。
■最後に、海面気温変化が算出標高値にどの程度影響するのかも試算。
海面気圧は1013.25hPaのままで海面気温が基準時より3°低い、t0=12°と想定してみた。
すると、
・標高1000m地点で算出される標高値=999.8m
・標高2000m地点で算出される標高値=1999.5m
・標高3000m地点で算出される標高値=2999.3m
となり、ほとんど目立った誤差は出ないよう。
以上から、主に海面気圧が変化すると、場合によっては高度計に100mほどもの誤差が生じたとしても不思議ではないらしい。
このサイトの筆者も八ヶ岳西岳山頂(2398m)で高度計表示が2520m(誤差120m)という体験をしたそうだ。
海面気圧が下がると言うことは天候が悪化しつつあると言うこと。だから高度計が実際より高い方にぶれたら天気に注意しなさい、ということなのだった。
パチパチパチ、言葉でも拍手をします
おはようございます。
私も海面気圧が1hPa変化すると高度計の表示は8メートルだということを途中で気付きました。今回はそれを具体的に計算されたpasocomさんの内容でよく分かりました。つまり、天候変化が急変しているとき(海面気圧が急変している時)高度計の表示誤差は大きくなるということで、とくに高くなる場合は要注意という意味ですね。ただし正確な標高が分かっている場所でないとそれが誤解を生むことにもなりかねませんね。ダブル誤差というやつでしょうか。
あと、私の家にある気圧計をその後ときどき見ているのですが、大気潮汐は実は観測できませんでした。私の気圧計はアナログで最小目盛りは2hPaなんですが分かりませんでした。ついでにトーメン社の高度計(最小目盛り10メートル)も同じところに吊るして観察しておりましたがよく分かりませんでした。デジタルの腕時計型は捨てたので我が家にはありません。名古屋地方気象台の数値を見た時は大気潮汐はあるようにも思える時もありましたし余りないようなときもありました。(余談ですが各地の気象観測所の数値は海抜0に換算していると聞いたことがあります。)
是非とも、pasocomさん、このテーマは今後も継続して実験してください。多くの登山者に喜ばれる内容かとおもいます
ふぅ〜長編小説読破より疲れました
本当にご苦労様でした。
気圧変化による天候の推移ですね
今後、気をつけます、はい
でわでわ
コメントありがとうございます。
前回の日記で途中まで議論したところでmurren様が仕事都合で退場されてしまったので、一人で黙々と検算していました(^^)
やってみるとエクセルで累乗計算もできるので、式さえきちんと入れればあとはどんな条件を入れても一発で結果が出るので案外楽チンでしたが・・。
あのサイトの筆者が「大気圧」と一言で言っているのが「海面気圧」だとわかったところでおおよその問題は解決したようなものでしたが、せっかくですから式の検算もして、少なくとも数学的な間違いはないらしいと。
結果的には「標高が10m高くなると大気圧が1hPa低くなる。」ということでほぼ正しいとわかっただけでも収穫だったかなと思っています。
こんな数字ばかりの日記を追いかけていただき、恐縮です。
私自身はバリバリの理系人間ですのでこういう数式が出てくると「本当に正しいのか?」という疑問と自分で検算しないと気がすまない性分なのでした。
ueda様ならこのへんもっとスマートに書くことができるのでしょうが、そこが文章下手で生の計算をそのまま乗せてしまいました。わざわざ読んでいただきありがとうございました。
今回のキモは「標高が何m高くなると大気圧が1hPa低くなるのか?」というところで、まあ8〜10mだと判明したことで良しとさせて下さい。
ueda様がたくさんの機器のデータから最良の判断を見つけ出すように、こんな数式から判断材料を得ようとする私のような人間もいるという話しでした。
蛇足になるかも知れませんが・・・(^_^;)
冬の方が夏よりも気圧が高いですが、冬山は私たちは高度計を持参することは稀でした。勝手知ったる場所に登攀することが多いので…。
その点、夏山は知らない山では高度計は本当に有効でした。その場合、海面気圧は細かいことを省略して1000mbということにしておきました。3000登れば300mb下がるよいうような10メートル計算でした。覚え方はそれでいいですね。当時はミリバールでしたね。
1013hPaというのは1気圧の定義ですし、案外と多くの人が知っていますが、夏の気圧的には少し高い感じですね。
ともあれ、今回いろいろと私も勉強になりましたが、海面気圧が1hPa下がれば高度計表示が8メートル上がるということは覚えなくてもいいかなと思いますね。標高が10メートル上がれば1hPa下がるという覚え方で実用上はいいかと私は思います。二つも覚えるというのは大変ですし。
天候に関しては、補正するときに少し注意してみることはいいことですね。ただし、私はこれを信じたことは一度もありませんでした。
あと、国際線や国内線の飛行機の中でもテストしたことがありますがたぶん1500メートルぐらいの高度と同じ気圧だったような気がします。記憶違いかも知れませんが。
最後ですが、決定的なことですが、サイトの数式は本当に正しいのか?ということがありますが、それは後日の宿題です。pasokomさんが調べられちゃうかも知れませんが…
ともあれ、計算お疲れ様でした。
再コメントありがとうございました。
あのサイトの式ですが、「標高と気圧」で検索すると似たようなサイトがいくつか見つかります。
「標高の科学」
http://home.r07.itscom.net/miyazaki/kagaku/
「気圧から標高を計算」
http://keisan.casio.jp/has10/SpecExec.cgi?id=system/2006/1257609530
どこも同じ式を使っているようです。(詳しく見ると累乗の5.258が5.257であったりするけど)
ですので、あの式はあのサイトの筆者が編み出したものではなく、一般的に流布されている「公式」みたいなものらしいです。
さらにmurren様が前回提示されたサイト「高度計が合わない」を読むと、「高度計は、ICAO(国際民間航空機関)の国際標準大気モデルを使った換算を行っている。」などという記述がありますね。
こんなサイトもありました。
「1976 Standard Atmosphere As published by NOAA, NASA, and USAF」
http://cosmic.lbl.gov/SKliewer/Cosmic_Rays/StdAtmos.htm
ここにある式も同じらしい。
最初のサイトの筆者が
「そこで、簡単なモデルを自分で立てることとした。
導かれた計算式は次の通りである。」
などと書かれている方がちょっと変ってとこでしょうか・・・。
pasocomさんって、ほんとにすごいですね
恐れ入りました。
いろいろとご苦労様でした。
おー、pasocomさん、マニアックですね。
私も、エクセルに上記数式を入れて計算しました。
私も高度計をもっております。1000mの自宅で高度をあわせて行っても、2899mの赤岳では100m近い誤差がでることが多々あります。上記式で、その謎を解明しようとトライしましたが、自宅で高度をあわせると、それにあわせ(多分)計算式の海面気圧を補正してくれるので、100mも誤差がでるにはいたらなそう。
現実の気圧は理想式どおりにはなってないのかな?それとも、私の高度計がへぼなのか? 近頃、高度計はどちらかというと、登る速度(m/H)を測定しペースを維持する用途で使っています。だいたい500m/H以上の速度で登らないように抑えています。そうするとバテない。
コメントありがとうございました。
赤岳までの標高差1900mで100mの誤差が出ることもあるのですか。やはりその程度の誤差はあり得るのですね。
「現実の気圧は理想式どおりにはなってないのか?」という言葉に思いだしたことがあります。
私のSUUNTOの説明書に「本機は、窓を開けた室内での体感できないような気流による気圧変化も感知します。それが標高表示に影響を与えます。」とあるのです。
そのような微妙な気圧変化でさえ感知してしまうなら(というか、その程度で標高計算に影響するような気圧変化になるのか)、赤岳のような山に登った場合、周囲の強風や上昇気流で起こる気圧変化は相当大きいんじゃないでしょうか。
SUUNTOは、もちろん標高表示だけでなく気圧表示ができますので、この次は気圧も確認して、山の上で局地的に気圧が変化するようなことがあるのか、調べて見たいと思います。
ところで私はとても「500m/h」では登れない。
標高差1000mを2時間じゃ登れないですから。
自分の中でいつも目安にしていたのは「登り;300m/h、下り;500m/h」。
私もSUUNTO見ながらペース調整しました。そういう意味で登山ギアとしても優れてますよね。
とても参考になりました。現在、既に日本百名山も完登し終え、三百名山に登り続けております。もともと、高校で物理を教えておりながらの、学生時代からの山登りでした。物理での専門も大気物理でしたので、今回の緻密な計算に感服しております。今度、GPS付きの高度計時計を購入しましたので、今まで使っていたアナログ式の高度計との比較が、登山の楽しみになります。明後日には、また、南アルプスの山々に登りますので、楽しみがふえました。
登山にも色んな楽しみ方がありますね。わたしは、今までは、岩質、地層などでしたが、新たに元々の専門である大気物理の研究に少しでもお役に立てれば幸いです。
素晴らしい研究に深く感謝、元気な目標も頂き、本当にありがとうございます。
いつか、どこかの山々でお会いでもできたら、それこそ天のイタズラでしょうね。
このような古い日記へのご訪問とコメント感謝いたします。
とあるサイトに載っていた計算式をパソコンで確認しただけのことですのでお褒め頂くのも恐縮です。
気圧式の高度計ではどうしても気圧変化による誤差が生じますね。その点GPSは正確。ただGPSは森林の中や谷間では受信できないことも多く、この両者の弱点が克服されるような高度計があればいいのに、と思っておりました。
新しい高度計時計、その性能を確認するのは楽しそうですね。その成果はぜひご自身の日記などでご発表下さい。楽しみにしております。
古い日記とご謙遜されてますが、そんなことはありませんよ。見る人はしっかり見ておるものです。
さて、大雨の中、4日に山岳会のメンバーと、山梨の日向山に登って来ました。
今回は、気圧と高度計の実験的な測定も大きな目標でした。
用意した機器は、アナログ式のアデノイド気圧計、圏外でも使えるGPS対応の気圧・高度計、更に、カシオから出ているPRO TEkのGPS対応の腕時計式の気圧・高度計です。
登り口(今回は、矢立石の登山口は、道路崩壊のため、尾白渓谷駐車場から 標高875m)にて、気圧・高度の補正をおこない、標高の分かるところで、小まめにチェックしました。
結果は、1660mの山頂にて、全ての機器が、1659mでした。
ほぼ、ドンピシャでした。更に、途中での1000mまで、1000m〜2000mまでの気圧・高度計の数値±1.0mほどの誤差で、とてもよい精度でした。気圧補正と高度補正をきちんとしておけば、相当に精度の高いデータがえられることがわかり、最近の機器の素晴らしさに感動です。
わたしの補正の仕方を、いつも数百mの誤差が出ると嘆いていた山友に教えて実験してもらいましたら、彼の機器もドンピシャでした。やはり、機器の性能をよく理解し、小まめの補正を怠らないことが、地形上の自分の位置を正確に知ることになり、それがまた道迷いなどの遭難を防ぐ意味でも役立つのかな、と実感しております。
山行は、こういう実験を楽しめる場所でもあるのですね。
いい経験をさせて頂きました。ありがとうございます。
遅れましたが、わたしはもう70歳前の老人登山家です。『六十歳からの日本三百名山』田中三郎さんは、わたしの田舎の大先輩ですし、高校の水泳部の先輩でもあります。生涯、山を生甲斐にして登り続けたいですね。
良きやま人生を送ってくださいね。
再度のコメントありがとうございました。
さっそく確認実行登山されたのですね。「山梨の日向山」は私にとって地元の山でもあり二重の驚きでした。
矢立石までの道が崩壊でしたか!尾白川駐車場起点だと標高差で5割増しくらい。悪天候でもあったことでしょう、お疲れさまでした。
改めて国土地理院の基準点成果閲覧サービスで確かめて見ると日向山の三等三角点は標高1659.89mとあります。書かれている山頂とはこの三角点位置でしょうか。であれば「誤差」は90cm以下ですね。非常に正確です。最近の機械の性能と補正の技能の結晶ですね。
ところで余談ですが、日向山の三角点は私には「山頂」には思えない場所に設置されています。そこよりも雁ヶ原というザレ場に出た付近の方が1m以上高いような気がするのです。地形図でもそのあたりに1660m等高線で囲まれた部分が見られます。
ですので日向山の本当の山頂標高は1661mくらいじゃないか?というのが私が密かに思っていることなのでした。
kaze-tuyoshiさんには百名山も完登とのこと。相当のベテランさんと推測しておりました。これからもお互い元気に安全に山を楽しみましょう。
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