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ある意味に於いて、実に不毛な映画であった。
映画化に際して原作に山本薩夫監督が随分と手を入れたようで、山崎豊子の意向が十全に反映された作品ではないのだろう（半分？）。
戦争体験に加えてシベリヤ抑留の経験もした仲代達也演じる大本営参謀だった主人公が、その人脈を生かし政財界に根回しをして航空自衛隊の次期戦闘機選定争いを、子飼いにされた商社の意向に沿ってし向けていく。
身近な戦友を亡くし、飢餓といった戦争体験を経た所帯持ちの立派な御仁が身をやつす世界には到底思えなかった。仕事とはいえ、自国の防衛のための高額な武器の購入に際して決定権を持つ政財界に切り込んで、政治経済戦争に身を投じる甲斐があるのか？ 戦争を知らない世代の人間が何を言う！とお叱りを受けることを承知の上で以下、思ったところを書きたい。
飢えや貧困を経験し、食うに困らない生活を立てる為に価値や意味や遣り甲斐は二の次にして、悪事に手を染めてまでも金や権力（や酒や女）を手に入れ得ようという考えは、苦労知らずの恵まれたゆとり世代の我々には少々受け入れ難い時代になった。時代は、それが持つ価値はすっかりと変わった。
そこへいくと戦争体験を持たない我々にとって、登山というのは時に飢えや死が降りかかってくる得難く貴重な体験の場なのだ、と思えた。あくまで、社会から一時的に離脱した世界に身を投じ、人を頼らず自分事として山に行って帰ってくる行為として。
本映画では、期待の丹波哲郎は穏やかな役どころであり、いつもは憎々しいほどの役をする田宮二郎も思いの外出番少なくヤンチャすることもない。高橋悦司は相変わらず存在感ある演技だった。極秘文書をコピーしたゼロックスが、川又（丹波）の持ち物だった、とは？
物事すべてに意味があると、常日頃思って暮らしている。ただ鑑賞後、柳ヶ瀬の町を歩いて見て、かなり多くのことが価値のない不毛な行為に思えた。
それは波乱に満ち満ちた相当読み応えある内容だったのでしょうね。映画は後半カットの内容だったようで、それでも三時間は長かったです。冗長、という意味でなく。
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