数日前、蠍座の若尾文子特集で川島雄三監督の『女は二度生まれる』を見た。川島の『雁の寺』、吉村公三郎の『越前竹人形』、増村保造の『赤い天使』に続いて4本目。以前、池袋・文芸座のオールナイトか何かで観たはずなのに、ほとんど憶えていなかったが、若尾文子の圧倒的な魅力は別にしても、これは紛れもない傑作。
題材としては、「芸者・花柳界もの」というより「妾・二号もの」とでもなるのだろうが、そんなジャンルやストーリーにはおさまりきらない細部が豊かだ。そして、様々なテーマが予想を裏切る形で決着をつけられず、宙吊りにされたまま終幕を迎える。
そんな細部の一つに、山に関わるものがある。若尾文子演ずる主人公が可愛がる工員の少年(演じているのは『雁の寺』の高見国一)が行ってみたい憧れの地が上高地で、ラスト近く、2人は上高地へと向かうのだ。松本電鉄のロングシートの車内で雪山賛歌を合唱している登山者のグループがいるのは、今観ると何だかリアリティがない気がするが、当時としてはどうだったのだろう? 島々に着くと、バスに乗り換える。ここまで来ると、次は大正池や河童橋、岳沢などの上高地の風景が出てくるのだろうと思うと、さにあらず、ある理由で心変わりした若尾は、少年をひとりで上高地へ行かせ、映画はここで終わってしまうのだ!
さて、この乗り換えのシーン、電車を降りた人たち(みんなやたらとピッケルを持っているが、若尾は和服姿)は、足早にバスの切符売り場で「上高地」あるいは「乗鞍」と行き先を言って二手に分かれてバスに乗っていく。その光景、駅の雰囲気は、今とそんなに変わらないとも思えてしまうのだが、駅名を見ると「島々 しましま」。今の駅名は「新島々 しんしましま」。松本電鉄の終点は、以前よりも手前になっていたんですね。それにしても、長野までロケに行って、島々の駅前だけとは。
kennさん、こんばんは
思わず見てみたくなるような、説明が素晴らしいです!
島々って駅があったんですか!知りませんでした・・・
そういう地名(新島々)なのかと・・・
私も「雁の寺」『越前竹人形」は見ました。
とても感動しました。
kennさんが説明されたこの映画は見ていませんが、
機会があったら、是非見たいと思いました。
若尾文子は素晴らしい女優さんですね〜。
昔の映画にも傑作がいっぱいあるので、こういういい映画を見れた事は幸いでしたね。
araigengaさん
梓川沿いの道を上高地方面へ少し行ったところに右から合流してくるのが島々谷で、徳本峠越えの道がその流れに沿って登っています。この合流点が島々の集落ですが、1966年までの島々駅はここではなく、新島々との間の前渕という集落にあり、新島々駅は以前は赤松駅だったようです。詳細は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E3%80%85%E9%A7%85
setisetiさん
私は高校の時にテレビで『越前竹人形』を観て(その頃、やたらと大映の映画が放映されていました)、すっかり若尾文子に参ってしまいました。
彼女のやはり1961年の主演作に『妻は告白する』という登山を題材にした映画があります。滝谷で二人の男と一人の女のパーティが起こしたザイル切断・死亡事故を巡るどろどろを描いたスリリングな傑作ですが、若尾文子の激しすぎる演技に圧倒されます。
この映画の監督・増村保造は、井上靖の「氷壁」も映画化しているので、彼が撮った2本の山岳映画は、いずれもザイル切断がストーリー上のポイントになっていることになります。
こういう映画は結構DVDにもなっているのですが、やはり映画館で観ると違います。
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