夙川の夙の語源に諸説あるのをまとめてみました。
西国街道の芦屋から西宮の間の経路と夙川については、これまでにも調べてきました。
20210320-人が少ない市街地散歩-新旧の西国街道-武庫川髭の渡し
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3011118.html
2021年03月28日 19:30 歴史
西宮の昔の地図、資料
https://www.yamareco.com/modules/diary/121565-detail-235142
2021年03月25日 23:16 歴史
中国街道-芦屋市森具-西宮神社-武庫川小松の渡し、資料
https://www.yamareco.com/modules/diary/121565-detail-234846
2021年02月27日 00:59 歴史
西国街道-西宮神社-武庫川髭の渡し、資料
https://www.yamareco.com/modules/diary/121565-detail-232379
西宮神社の東から現在の西宮市総合運動公園へ北上するのは、江戸時代以降の西国街道で、古代山陽道は、芦屋市春日町から廣田神社の前まで、北東にほぼ一直線に東進していたようです。
その芦屋市春日町で西宮からの道が山陽道に合流し、そこに夙村があったということです。
その合流箇所は、芦屋市春日町の道標があるところが東の中国街道への接続箇所、 JR 神戸線の夙川に架かる橋梁（守具川橋りょう）の南西あたり（西宮市御茶家所町）が西宮神社から夙村の御茶家所への道の合流箇所になるようです。
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1
宿 = 宿久（しゅく、久に火の字をあてる宿火の誤記がある文献あり） = 夙
その後、しゅく = しゅぐ = 守具 = もりぐ = 森具（現在に伝わる地名）
古来からの山陽道（その後の一時期は西国街道）の驛（駅家、駅、うまや）、つまり宿（宿場、しゅく）があったことが語源。
夙川西岸で JR 神戸線の南、大手前大学さくら夙川キャンパスがある西宮市御茶家所町の御茶家所も宿場、駅の施設の御茶家所が由来で、同じ宿（驛）。
2
野見宿禰（のみのすくね）
日本書紀などに記されている人物で、第 11 代、垂仁天皇の時代（西暦と機械的に対照した場合、紀元前 29 年乃至西暦 70 年に相当、古墳時代）の人。
垂仁天皇の時代までは、天皇またはその一族の崩御の際、臣下侍従を生きたまま墳墓の周りに埋める殉死の風習があったのですが、野見宿禰は埴輪を考案して垂仁天皇に奏請し、垂仁天皇の皇后の日葉酢媛命の葬儀の際に埴輪の使用が採用され、殉死は以後禁止された、このとき命が助かった人たちは、各地に逃げ延び、そのうち、現在の夙川の西あたりに来た人たちが、野見宿禰にあやかってシュクという地名をつけて住み着いたということです。
3
古代山陽道の駅家（うまや、驛、駅、宿駅）である摂津国須岐（すき）駅
「すき」が「しゅく」になったという説。
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参考
1 宿に関するもの
朝日新聞 DIGITAL 2016年05月14日
「森具」の名 「夙」との関わり？
http://www.asahi.com/area/hyogo/articles/MTW20160514290690001.html
西宮市には、かつて森具という大字があって、現在の松下町、屋敷町、弓場（ゆば）町など夙川中下流の西岸部 15 町にまたがっていたということです。
JR 神戸線が夙川を越える鉄橋が守具川橋りょうです。
夙川の名が地図に初めて登場するのは、江戸時代初頭、1605 年の慶長十年摂津国絵図で、シュク川と記されています。
1686 年に描かれた広西両宮絵図には夙川と記されているそうです。
夙川西岸部には昔、夙村があった、阿弥陀寺（郷免町）にある釣り鐘には摂州兎原郡夙村と刻まれてて、貞享 3 年（1686年）には夙村と呼ばれていたということです。
1802 年以降に描かれたとされる西宮町絵図（葛馬図）には守具村とあるそうです。
1936 年発行の大社村誌（大社村は西宮市に合併、現在は廣田神社がある西宮市大社町）には、明治 7 年（1874 年）に森具村と改称したとあるということです。
西宮つーしん 2019.11.16 2019.12.12
「夙川」と「森具」の由来
https://nishi2.jp/27157/
JR 神戸線守具川橋りょうの写真があり、2 の野見宿禰についても触れています。
西宮市郷土資料館ニュース 第 36 号 2011 年 6 月 30 日
https://www.nishi.or.jp/bunka/rekishitobunkazai/ritsukyodoshiryokan/kyodo-news.files/news36.pdf
西宮市史第七巻の明治十二年調べ寺院明細帳によれば、阿弥陀寺の所在地は武庫郡森具村字屋敷とあり、森具は、明治 7 年までは守具と表記されていて、夙、宿の音シュクがシュグになり守具になったとしています。
大社村史では、野見宿禰によって殉死を免れた臣たちが隠れ住んだ殉臣村が、その後夙になった、または野見宿禰の宿に由来すると紹介しています。
日本略記では、藤原純友（ふじわらのすみとも）が藤原子高（備前介、ふじわらのさねたか、高ははしごの高）を摂津国須岐（すき）駅で討った、「すき」が「しゅく」になったという説にも触れています。
こうすけの 歴史探偵inにしのみや
https://nsanpo.exblog.jp/24646984/
鎌倉時代前後での夙川の流路の変化と夙、守具、森具について記されています。
平安時代の純友追討記にある菟原郡須岐駅という宿駅が現在の西宮市宮西町（夙川の東岸で国道 2 号線より南）あたりにあったそうです（須岐駅は現在の芦屋駅あたりにあったという説も紹介）。
スキがシュクに転じた説、野見宿禰にも言及しています。
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2 野見宿禰に関するもの
野見宿禰
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E8%A6%8B%E5%AE%BF%E7%A6%B0
相撲の神様、野見宿禰
https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/digital_museum/legend/story2/
揖保川と龍野
https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp/digital_museum/legend/story2/journey2/
野見神社
http://inoues.net/osaka/takatsuki_new2.html
古代、天皇家の総裁を司った土師（はじ）氏の祖、または土師氏が祖と奉っていたといわれています（土師氏の子孫に菅原姓を名乗るようになった一族がいて、菅原道真に連なるのだそうです）。
野見は、墳墓を作る際に野を見て場所を選んだことからこの名を与えられたともいわれているそうです。
垂仁天皇に出雲国から呼び寄せられ、当時、大和国で豪腕を鳴らしていた当麻蹴速（當麻蹶速、たいまのけはや、現在の奈良県葛城市當麻町の地名の由来）に相撲で勝ち（蹴り合って腰を踏み折って殺したということです）、当麻蹴速の土地を与えられ、大和国に住み着いたのだそうです。
野見宿禰と当麻蹴速の両者が相撲の祖（相撲の神様）とされています。
なお、埴輪の成立は野見宿禰とは関係ないのが定説ということです。
KOBECCO 2017 年 10 月号
夙川、松園町界隈の歩みについて｜夙川 Shukugawa
https://kobecco.hpg.co.jp/27030/
森具になった説にも触れています。
野見は石を削り割る鑿（のみ）に由来する説もあるということです。
上古天皇の在位年と西暦対照表の一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E5%8F%A4%E5%A4%A9%E7%9A%87%E3%81%AE%E5%9C%A8%E4%BD%8D%E5%B9%B4%E3%81%A8%E8%A5%BF%E6%9A%A6%E5%AF%BE%E7%85%A7%E8%A1%A8%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7
手塚治虫の漫画、火の鳥ヤマト編（アニメもありました）
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E3%81%AE%E9%B3%A5_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)
https://tezukaosamu.net/jp/manga/400.html
https://tezukaosamu.net/jp/anime/86.html
https://eiga-watch.com/hinotori-yamato/
https://www.youtube.com/watch?v=57S5VAGOZIM
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3 須岐（すき）駅に関するもの
藤原純友の乱と日振島の財宝伝説 blog 2014-10-01
摂津須岐駅襲撃事件
http://shimanto-river.hatenablog.com/entry/2014/10/01/231758
藤原純友が藤原子高を討った場所は、日本記略では摂津国須岐駅、純友追討記では摂津国莵原郡須岐駅、本朝世紀では摂津藁屋駅家辺としていて、山陽道の葦屋（あしや）駅と推測しています。
現在の夙川から芦屋川までのどこかに相当していると思われます。これより後の時代、宿久村（しゅくむら、夙村）となった所も含まれているでしょう。
愛媛県史 古代�供γ羸ぁ幣赦�59年３月31日発行）
二 藤原純友の乱
https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:2/62/view/7781
藤原子高が摂津国で藤原純友に襲撃されたのは摂津国菟原郡にある須岐駅（藁屋駅であったともいう）ということです。
須岐駅の別名が藁屋駅（葦屋駅のことか ?）だったのか、須岐駅と葦屋駅は別にあって両方の説が伝わったのか、いずれかなのでしょうかね。
吉本昌弘．摂津国八部・莵原両郡の古代山陽道と条里制
人文地理．第 33 巻 第 4 号 1981 年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhg1948/33/4/33_4_363/_pdf
和名抄の菟原郡葦原郷が地理志料や地名辞書の葦屋郷と考えられる。
地名辞書は、純友追討記にある菟原郡須岐駅を芦屋駅家と考え、須岐が夙に通じるところから須岐駅を夙川付近に位置比定しているようであるが、そこは武庫郡と考えられるので、この説、須岐駅 = 芦屋駅、須岐 = 夙は成立しない。
葦屋郷は、地理志料にあるように芦屋川の西よりを占めたと考えられ、芦屋川西岸の現在の芦屋市前田町に旧小字地名として傍示、前田があったので芦屋市前田町（あたり）を芦屋駅家の候補地としたいということです。
須岐駅が芦屋市前田町あたりということですと、すき = しゅくは、成り立たなくなりますね。
角川地名大辞典 JLogos
駅家郷(古代)
http://jlogos.com/ausp/word.html?id=7381642
箕面市史では、莬原郡須岐駅とある郷域は、現在の箕面市の東坊島、西坊島、如意谷、石丸、外院、芝などの付近一帯に比定されるのだそうです。
芦屋や西宮西部とはまったく違ったところになりますね。この比定説が見られるのは、この資料だけです。
神戸・兵庫の郷土史Ｗｅｂ研究館
古代の道「山陽道」の駅家（うまや）を辿る
http://kdskenkyu.saloon.jp/tale18say.htm
葦屋駅家は、深江北町遺跡の付近としています。
芦屋市教育委員会 芦屋川の歴史
https://www.city.ashiya.lg.jp/gakushuu/documents/ashiyagawa_zenhan.pdf
弥生時代後期から古墳時代、芦屋川扇状地の西岸に集落が発達していた、津知遺跡（芦屋市津知町、芦屋川の西岸）は延喜式に名前が見られる葦屋驛（あしやのうまや）の所在地と推定されるのだそうです。
葦屋駅 = 須岐駅としましたら、後世に夙村になったところよりは西になりそうです。あるいは、夙村とした範囲がけっこう広かったのかです。
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1 宿の説に傍証、御茶家所について
広田村から打出村への本街道
http://www.trans-usa.com/ashiya/honkaidou0.html
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上記諸説の大元のような文献がありました。
藤井健造．大学地考．大手前女子大学論集．
1 巻、p12-14, 1967-10-30
http://id.nii.ac.jp/1160/00000868/
現時の夙川は江戸末期か明治初年の頃に改定されたものらしく、江戸幕府が文久三年二月 一日老中格小竿原長行に命じた台場築立御用掛の摂海防備図には宿川とあり、ここが宿村であったらしいということです。
西国より京への陸路は西宮村を分岐点とし、尼崎から大阪へ抜ける中国街道と、北へ折れて越水、広田、昆陽、伊丹、茨木、山崎を通る京街道があった。これとは別に西宮村の西方宿の分れ道にあった一里塚より左方の裏道を取り広田、大市村を経て武庫川を渡り、昆陽に至る、北の街道を辿ったものもあった。慶長十年（1605 年）の摂津国絵図にはこの村は宿火村と書かれ、当時の宿荷所であったということです。
務古の入海（武庫の入り海、現在の西宮の市街地）が越水、広田の山裾まで広がっていて、西宮村がまだ地形されていなかった古墳時代、この宿村から越水、広田の山すそを通って昆陽より上方に至る街道（古書、海道、古来の山陽道）がただ一つの道であったとしています。
野見宿禰の埴輪、殉臣村についても言及されていて、「往古殉臣村と称し又宿禰の由緒より宿村と唱えたるを、後世、守具村となり、明治七年森具村と改め、夙川と通名して今日に及んでいる」としています。
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